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ワインの造り方から見る、色合いと味わい~ロゼワイン・オレンジワイン編

2021.1.18

ワインって実はカラフルなお酒。カクテルには適わないけど、赤に白にピンクにオレンジ、最近はブルーのワインも存在します。

前回は、赤ワインと白ワインの違いを、醸造の観点から掘り下げてみました(ワインの造り方から見る、色合いと味わい~赤ワイン・白ワイン編)。今回は、ロゼワインとオレンジワインに迫ってみたいと思います。ピンクやオレンジの色の違いも、醸造方法と密接な関りがありそうです。

カラーバリエーション豊富な「ロゼワイン」の3つの造り方

色みも味わいも、赤ワインと白ワインの中間にあるロゼワイン。造り方も赤ワイン的な造り方と白ワイン的な造り方の両方があり、どちらの造り方を採用するかによって、できるロゼワインの特徴は変わってきます。

ロゼワインは基本、「黒ブドウ」を使って造るワインです。その造り方は、実は3つの方法があります。まずは、簡単な図解でその違いをチェックしてみましょう!

ロゼワインの造り方 その①:赤ワイン的造り方(セニエ法)

赤ワインは、収穫されたブドウの実を破砕して、大きなタンクで発酵・醸しを行いました(詳しくはワインの造り方から見る、色合いと味わい~赤ワイン・白ワイン編を参照)。赤ワインよりもこの「醸し」の時間を短くして、発酵・醸しの途中でタンク下から一部の未熟なワインを抜き取り、別のタンクで再度発酵させる造り方が「セニエ法」です。

セニエは「血抜き」という意味。意味を知るとちょっと怖いですね…

赤ワイン的造り方の「セニエ法」では、比較的色味も濃く、味わいもベリー系の香りが濃厚で、赤ワイン寄りの特徴が表れています。

ロゼワインの造り方 その②:白ワイン的造り方(直接圧搾法)

白ワインは収穫されたブドウの実をプレスして果汁を得て、その果汁を発酵させました(詳しくはワインの造り方から見る、色合いと味わい~赤ワイン・白ワイン編を参照)。白ブドウではなく黒ブドウをプレスして、その果汁を発酵させる造り方が「直接圧搾法」です。プレスの強弱により、ワインの色合いの濃淡が変わります。

白ワイン的造り方の「直接圧搾法」では、淡いパステルピンクやサーモンピンクといった色みで、香りも繊細、すっきりとした爽やかな味わいのものが多く、より白ワインに近いロゼワインになります。

ロゼワインの造り方 その③:黒白混合の赤ワイン的造り方(混醸法)

黒ブドウと白ブドウを混ぜて発酵させる方法。この造り方のロゼワインはそんなに多くはありませんが、ドイツで造られる「ロートリング」というワインが有名です。

ロートリングは、ドイツのワイン法では「ロゼワイン」のカテゴリーには入らないのに、「混醸法ロゼワイン」の代表的なものとして扱われるフシギ…。

混醸法で造られるロゼワインは、黒ブドウのふくよかさと白ブドウの爽やかさが調和した味わいのワインになります。

ロゼワインの造り方 例外的造り方(ワインのブレンド)

上記3つの造り方には当てはまらない「ロゼワイン」が1つだけあります。それはシャンパンのロゼ。

シャンパンは、ワインの造り方から見る、色合いと味わい~赤ワイン・白ワイン編でも触れた通り、「ブラン・ド・ノワール」という、黒ブドウ100%で造る白のシャンパンがありますが、それとは別にロゼのシャンパンもあります。

現状のEUのワイン法では、「赤ワインと白ワインのブレンド」は禁止されていますが、シャンパーニュ地方は、法律が整う以前から「伝統的に」赤ワインと白ワインのブレンドでロゼ(スパークリング)ワインを造ってきているので、例外的に認められています。ですので、ロゼ・シャンパーニュだけは、第四の製法「赤ワインと白ワインのブレンド」となります。

ただし、すべてのロゼ・シャンパーニュがこのブレンド方式で造られるわけではなく、セニエ法で造られるロゼ・シャンパーニュもあります。

エシュ&バニエ / コトー・デクス・アン・プロヴァンス ロゼ 2018
産地
フランス / プロヴァンス地方 / コトー・ド・エクサンプロヴァンス
品種
グルナッシュ60%、サンソー40%
タイプ
ロゼワイン - 辛口 - ミディアムライト
トイスナー / サルサ ロゼ 2018
産地
オーストラリア / 南オーストラリア州 / バロッサ・ヴァレー
品種
グルナッシュ39%、マタロ(ムールヴェードル)36%、モンテプルチアーノ25%
タイプ
ロゼワイン - 辛口 - ミディアムフル

新しくて古い!?「オレンジワイン」の造り方

何年か前、初めて「オレンジワイン」というワードを聞いたとき、フルーツのオレンジで造る果実酒かと思った記憶があります。日本にはヨーロッパのような「ワイン法」がないので、ブドウ以外で造る果実酒も「ワイン」と気軽に呼ばれることもあり、その類かなと思っていたら「ブドウで造るオレンジ色をしたワインだった!」と驚きました。

実際にはオレンジ色というよりは琥珀色に近い、くすんだオレンジ色をしています。「オレンジワイン」と呼ぶのは日本ぐらいで、ヨーロッパでは「アンバーワイン」と呼ばれます。

そんな「オレンジワイン」は、白ブドウで赤ワインの造り方をしたワイン。つまり、通常白ワインの醸造では行わない「醸し」を行うのです。(詳しくはワインの造り方から見る、色合いと味わい~赤ワイン・白ワイン編を参照)

赤ワインは、醸しを行うことによってワインに色が付き、タンニンが抽出されました。オレンジワインは、白ブドウを使います。白ブドウの果皮には黒ブドウに含まれる赤紫の色素、アントシアニンが含まれないので、果皮を漬け込んでも赤紫色の液体にはなりません。代わりに、黄色系の色素を抽出するので、オレンジ色のワインになるのです。

果皮だけではなく当然「種」も一緒に漬け込みます。種からは渋み成分であるタンニンが抽出されるので、このオレンジワインにも、量の多少はあるにせよタンニンが含まれます。

このオレンジワイン、現在は日本でも「甲州」というブドウから造られていたりしますが、ブームになったきっかけは、イタリア・フリウリ州で造られるようになり、そのワインが評価を受けて世界中で有名になったこと。このイタリアの醸造家は、様々な醸造方法を試している中で、ジョージアで伝統的に造られるオレンジワインに出会ったそうです。

そう。2000年代以降ブームになっている「オレンジワイン」は、なんと8000年前にジョージア(グルジア)で造られていたワインなんです。

マカシヴィリ・ワイン・セラー ムツヴァネ 2018
産地
ジョージア / カヘティ地域
品種
ムツヴァネ100%
タイプ
オレンジワイン - 辛口 - ミディアムフル
2015 リボッラ・ディ・オスラヴィア/プリモシッチ
産地
イタリア・フリウリ ヴェネチア ジュリア州
品種
リボッラ・ジャッラ
タイプ
ミディアムフル辛口 オレンジ

おまけ~ブルーワインの青色は、〇〇の色

濃淡の違いはあれど、基本的にワインの色は「赤」「白」「ピンク」「オレンジ」の4種類。しかしもう1種類、「ブルーワイン」というものも世の中には存在します。

2015年、スペインのスタートアップ企業が発売した「gik(ジック)」という名のワイン。造ったのはグラフィック・デザイナーやDJ、マーケティングの専門家などの20代のメンバー。伝統産業であるワイン業界に「革新」を仕掛けるかのように「飲む人に自由な発想を」というコンセプトで青いワインを造り上げました。

発売当時、世界中で話題になり、様々なメディアにも取り上げられ、一気に人気になりました。その後、その反響を見て…かどうかはわかりませんが、スペイン国内にとどまらず、フランスでもアメリカでも、そして日本でも「ブルーワイン」は造られるようになりました。

ブルーは「幸せを呼ぶ」色とされているので、その見た目の意外性も相まって、贈答用に購入されたり、結婚式でふるまわれることが多いそうです。

そんなブルーワイン、噂には聞いていましたが飲んだことがなかったので、この機会に飲んでみました!

今回飲んだのは、フランス・プロヴァンス地方で造られた「ラグーン・ブルー」。ソーヴィニヨン・ブラン100%のスパークリングワインです。夏の地中海を思わせる、鮮やかなブルーが美しいワインですが、この色は着色料で色付けされています。

黒ブドウにも白ブドウにも、ワインを青くする色素成分はないため、「ブルーワイン」の青い色は、別の植物の色素を使って着色しています。インディゴだったりブルーベリーだったり。先述の「gik(ジック)」は、黒ブドウに含まれるアントシアニンとインディゴでブルーの色を出しています。なので、「ラグーン・ブルー」よりももっと濃いブルーで、サファイアのような色合いです。

「ラグーン・ブルー」は、ソーヴィニヨン・ブランという白ブドウから白ワインを造り、そこに「青色1号」で着色して炭酸ガスを注入して造られた「ブルースパークリングワイン」。気になるお味ですが…アプリコットのような香りがフルーティで、酸はほとんどなく、アルコールも低めなので、カクテルのような感覚で飲めるワインかなと思います。ただ、ワイングラスに入れた光景が…ブルーの液体が見慣れないせいかちょっと異様な雰囲気に感じてしまいました(汗)。

五感プラス知的好奇心を満たす「ワイン」

色から見るワイン、いかがでしたでしょうか?ブルーワインは別にして、ワインの「色」は、品種や産地、醸造方法、それらから導き出される風味など、飲む人にいろんな情報を与えてくれます。今回は、醸造方法にスポットを当ててみました。

ワインは飲み物なので、「おいしい」「まずい」「苦手」「好き」といった感情だけで楽しむことも大いに結構です。いや、むしろこれがベースです。でも「なんで赤いんだろう?」「なんでこんな色をしているんだろう」とちょこっと疑問に思うだけで、ワインの世界の面白さに触れることができます。

「おいしい」と「面白い」を併せ持つワイン。尽きることない好奇心が、このお酒の魅力の一つなのは、間違いありません。

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wine@MAGAZINE編集部
すべてのワイン好きのために、東奔西走!ワイン初心者のお悩みを解決したり、ワイン通のためのお役立ち情報を取材したり…と、ワインの世界を日々探究中。plus wine, precious life!
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