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【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】栽培面積ランキングTOP5に注目

2021.6.14

photo: Chateau Cos D’Estournel, Bordeaux Region, France

「自分好みのワインを知るための品種のハナシ」では過去5回、渋味酸味、さらにボディと言う軸で、味わいから好みのワインを選べるように品種をご紹介してきました。今回は“番外編”として、全世界での栽培面積ランキングTOP5の品種をご紹介します。

あなたのお好きな品種が、世界中でどれくらい栽培されているのか、また、よく知る国以外でどんなところで作られているのかなど、今回はちょっと違った角度から“ワイン”を眺めてみてください。もしかしたら意外な気づきや発見があるかもしれません。

栽培面積、世界第1位!【カベルネ・ソーヴィニヨン】

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはでもご紹介した、超有名品種のカベルネ・ソーヴィニヨン。堂々の世界一の栽培面積を誇ります。その面積288,770ha。その広さがどれくらいなものなのか見当つかない…ですよね。東京ドーム61,440個分です。…うーん、やっぱり見当つかない(汗)。

日本の都道府県で近しいサイズを調べてみました。神奈川県が241,600haなので、神奈川県が全部カベルネ・ソーヴィニヨンの畑だったとしても、それよりもさらに広い、ということになります。

上記の円グラフを見ていただいてもわかるように、北半球・南半球問わず、現在の主要なワイン生産国のほとんどで栽培されている品種です。この品種は、いろんな産地のワインを飲み比べてみるのも、面白いかもしれません。

杉など針葉樹のような、青っぽい清涼感を感じる香りが特徴的なカベルネ・ソーヴィニヨンですが、この香りの強さが産地によって異なるのがおもしろいところ。タンニンも比較的しっかりある品種ですが、渋みよりも果実味の印象を強く感じるのは、アメリカやチリのワインが多いかもしれません。

アメリカの「カルトワイン」やイタリアの「スーパータスカン」と呼ばれる、ちょっと特別なワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にしたワインです。言わずもがな、フランスの「五大シャトー」のワインもそうです。世界中で作られているメジャーな品種ですが、各国の高級かつ高名なワインを生み出す品種。栽培環境をそれほど選ばないけれども、こだわりぬいた気候土壌で丁寧に作れば、愛好家垂涎の高級ワインも造られるという、非常に興味深い品種がカベルネ・ソーヴィニヨンです。

栽培面積、世界第2位!【メルロー】

世界のワイン首都・ボルドー原産で、第1位のカベルネ・ソーヴィニヨンとは兄弟と言うより双子のような存在のメルロー。ボルドーの赤ワインのほとんどが、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローが主体で造られるブレンドワインです。

ブレンドされていつも一緒、だから“仲良し兄弟”とも言えますが、実は、メルローのお母さん(お父さん?)とカベルネ・ソーヴィニヨンのお母さん(お父さん?)は同じカベルネ・フラン。だから正真正銘の“兄弟”なんですね。

世界中で267,210haものメルロー種のブドウ畑が広がりますが、カベルネ・ソーヴィニヨンと違い、約半分がフランス。しかもほとんどボルドーの畑になります。

ふくよかで口当たりのよいワインになる品種。カベルネ・ソーヴィニヨンを「逆三角形の水泳選手」と例えました(【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶには)が、メルローは「女性アスリート」のような品種。やや丸みを帯びたしなやかさを感じる骨格が印象的。

ボルドーワインの多くがカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインですが、一部の地域ではメルロー主体のワインも造られます。また、アメリカなどでは、メルロー100%のワインも造られます。メルローの味わいを感じてみたいと思ったら、これらのワインを一度飲んでみるのもいいかもしれません。「女性アスリート」が頭の中に浮かんでくることでしょう(笑)

栽培面積、世界第3位!【アイレン】

ここでいきなり、あまりなじみのない品種が登場します。252,300haという広大な面積で栽培される品種にもかかわらず、それがほぼ1ヶ国で栽培されているアイレンです。1つの国どころか、ほぼ、首都マドリッドの南東側を取り囲むように位置するカスティーリャ・ラ・マンチャ州で栽培されている品種です。

カスティーリャ・ラ・マンチャ州をはじめスペインの中央部は、とにかく暑く極度に乾燥した気候。そんな気候にも適した品種で、生産性の高い品種。アルコール度数と酸が高くなりがちな白ワインが造られます。

当然、スペイン国内で一番栽培されている白ブドウ。日本にも多く輸入されていますが、そのほとんどは、リーズナブルでカジュアルな白ワインです。

広大な栽培面積を誇るのに、生産されるワインがあまりメジャーではないのは、作られたブドウがすべて“白ワイン”になるわけではなく、ブランデーの原料にもなっているからです。スペインのブランデーとしてヘレス産が有名ですが、これはシェリーを造る際に添加される蒸留酒として昔から造られていました。シェリーにも、実はアイレンが使用されているんですね。

余談ですが、フランス国内で最も栽培面積が広い品種はユニ・ブランという白ブドウになります。このユニ・ブランも、コニャックやアルマニャックと言った世界的にも有名なブランデーの主要品種。ブランデーは蒸留するので、たくさんのブドウが必要なんですね。

栽培面積、世界第4位!【テンプラニーリョ】

引き続き、スペインを代表する品種。第4位は黒ブドウテンプラニーリョです。232,530haの内訳は、やはりほとんどがスペイン。スペインの高級ワインからカジュアルなワインまで幅広いワインを造る品種です。

スペインを代表するトップワイナリーであるベガ・シシリアが造る「ウニコ」というワインをご存じでしょうか?高級ワイン産地として名高いリベラ・デル・ドゥエロで造られる、スペインの高級ワインです。このワインは、数パーセントだけカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしますが、9割以上がテンプラニーリョです。

イチゴやプラムの香りが華やかで、程よい果実味、程よい渋味、程よい酸をもつワインになります。何事もほどほど、ということは、バランスがいい反面、これと言った特徴に欠ける品種かもしれません。ただ、長期熟成させたワインになると、ドライイチジクのような芳醇な香りをまとい、得も言われぬしとやかで滑らかな味わいにうっとりすることでしょう。

ただコノヒト、スペイン国内でも産地によって品種名が変わるという、ソムリエ試験受験者泣かせな品種。ティント・フィノ、センシベル、ティンタ・デ・トロ、ウル・デ・リェブレ、アラゴネス(ポルトガルでの呼び名)…これらすべて、テンプラニーリョのことです。

栽培面積、世界第5位!【シャルドネ】

ようやく登場!白ブドウの王様、シャルドネ【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】まろやかな酸の白ワインを選ぶにはでもご紹介しているので、この品種の特徴はそちらでもご覧ください。

世界の栽培面積196,110haは、東京都の面積(219,100ha)よりもやや小さい広さ。ですが、上記の円グラフのとおり、様々な国で栽培されています。そのバラエティの豊かさは、カベルネ・ソーヴィニヨンの産地のバラエティに匹敵します。

また、カベルネ・ソーヴィニヨン同様、産地によって風味も異なります。シャンパーニュやブルゴーニュの北部などの冷涼な地域のワインは、リンゴのような香りが特徴的ですが、アメリカやオーストラリアのような、比較的温暖な地域のワインは、白桃やパッションフルーツのような、やや濃厚な香りが楽しめます。

世界のメジャー品種は大体作っているチリにおいて、シャルドネの栽培面積シェアが意外にも小さいことに驚かれる方もいらっしゃるでしょう。その理由は、チリが本格的にワイン造りを始めた当初は「ボルドー品種」と呼ばれるブドウがメインでした。赤ワイン用のカベルネ・ソーヴィニヨンと白ワイン用のソーヴィニョン・ブランです。

ブルゴーニュの品種であるシャルドネは、当初チリでは重要視されていなかったのですが、世界がシャルドネに注目をし始めてから、チリでもシャルドネの畑が徐々に増えてきているのが現状です。

栽培面積に注目すると、ワインがもっと楽しくなる!

栽培面積のTOP5はいかがでしたでしょうか?ワインは工業製品と違って、人気があるから簡単に生産量を増やせるわけではなく、むしろ逆のことの方が多い印象です。原料であるブドウも、大量に収穫しやすい品種が単純に優れているということではなく、1本の樹から収穫できるブドウの房を減らすことによって、凝縮した複雑な味わいのワインができるとされています。

ですので、ブドウの収穫量ランキングではなく、栽培面積ランキングをご紹介しました。収穫量の多いブドウからは、デイリー利用のカジュアルなワインが生み出されることが多いからです。

ワインの楽しさのひとつは、その多様性にあると思います。1杯のワインの複雑な香りや味わい。1つの品種でも産地や造り手による個性の違い。1本のワインのヴィンテージによるキャラクターの差異。

温暖な地域で、手をかけなくてもわんさかとブドウが実り、大規模なメーカーで大量生産されるような、マスに受け入れられる味わいのデイリーワインでは、この「ワインの楽しさ」は共有しきれません。ですので、“収穫量”ではなく“栽培面積” に今回はフォーカスをあてて、ご紹介しました。

カベルネ・ソーヴィニヨンが世界一の栽培面積を誇るのは、比較的どこでも栽培しやすい品種ということだけでなく、多様性を持ちながら、その味わいが世界中の人に受け入れられたからですが、それを仕掛けた人の話はまた別の機会にお伝えしたいと思います。

 

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