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「ヴィンテージ」って、結局どういうこと?今さら聞けないワインの常識を学ぼう。

2021.10.7

ワインの話では「ヴィンテージ」という言葉がよく出てきます。ワイン以外でも、車や楽器、また洋服などで「ヴィンテージもの」という言葉が使われるため「高級な年代物」といったイメージがあると思いますが、あなたは「ヴィンテージ」の意味をちゃんと説明できますか?

そもそも「ヴィンテージ」とは何のことなのか。まずは言葉の意味を理解し、ワインにとって「ヴィンテージ」がどうして重要なのかということを、今回は一つひとつ学んでいきましょう。

「ヴィンテージ」という言葉の意味は?

ヴィンテージという言葉は、「ブドウを収穫する」という意味のラテン語に始まり、フランス語の「ヴァンダンジュ(vendange)」を経て、英語の「ヴィンテージ(vintage)」という言葉になったと言われています。

つまり「ヴィンテージ」とは、ブドウの収穫年のこと。もちろん、収穫したら基本的にはそのまま醸造へと進みますので、実際に意味するのは、原料となるブドウを収穫し、ワインを醸造した年を指します。

ちなみに、フランス語では「ミレジム(millesime)」、イタリア語では「ヴェンデミア(vendemmia)」、スペイン語では「コセチャ(cosecha)」と言います。

当たり前のことですが、原料となるブドウは農作物。その年の天候によって出来不出来が左右されますから、ワインにとってヴィンテージはとても重要な意味を持つのです。

ヴィンテージがワインの価値のすべて!? 

前述の通り、ブドウの出来不出来がワインそのものの品質に大きな影響を与えますので、まったく同じ銘柄のワインであっても良いブドウが獲れた年のワインを、ヴィンテージ・ワインと呼ぶことがありますし、長期熟成を経て香りや味わいが複雑で豊かになる(であろう)ワインを、オールド・ヴィンテージ・ワインと呼びます。

オールド・ヴィンテージ・ワインが年代物で価値があり、高価格となることに擬えて、車や楽器、また洋服などでも“ヴィンテージ”という言葉が定着したのだと思われます。

でも「良いヴィンテージのワイン=おいしいワイン」とは限りません。原料の質はとても重要ではありますが、そこまで単純じゃないところが、ワインの難しいところであり、面白いところ。造り手の技術によっても大きく変わります。あまり好ましくなかった収穫年のものを、いかにおいしいワインに仕立てるかということも、生産者の腕の見せ所だったりするのです。

また、良年のワインは飲み頃を迎えるまでに時間がかかる(熟成を待つ)ものもあるため、ワイン初心者にはかえって難しい場合があるかもしれません。

ラベルにヴィンテージが書いていないものもある

ワインを選ぶ時に価格とともに必ずチェックしたいのが、ラベル(エチケット)。ワイン通になると、そこに書かれている情報をもとに「これは自分好みのものか、今買うべきワインか」などを“プロファイリング”するようになりますが、ヴィンテージが書かれていないものも、中にはあります。

ワインのラベルには、流通するにあたって絶対に表示しなければならない義務表示と、生産者の判断で表示してもしなくてもよい任意表示があります。

ワインの種別、原産地呼称(AOP、DOC、IGPなど)、原産地、アルコール度数、瓶詰め業者、スパークリング・ワインの場合の残糖量などが義務表示なのですが、ブドウ品種やヴィンテージは任意表示となっているのです。

NV(ノン・ヴィンテージ)って、どういうこと? 

なぜ、ブドウ品種やヴィンテージは任意表示なのでしょうか。それは、ワインには収穫したブドウをそのまま醸造して瓶詰めするものだけでなく、ブレンドして仕上げるものもあるということが理由の一つと言えるでしょう。

「シャンパン」を例に挙げて、考えてみましょう。

産地であるフランス北部のシャンパーニュ地方は、寒い地域であるため、ブドウがしっかりと熟さない年もあります。しかし、安定した味わいと供給が、シャンパンのブランディングとしては必須。世界で愛飲されるシャンパンのメゾンは、信頼と実績がなければ成り立ちません。

そこで、安定した味わいと供給を実現させるために、その年のブドウで造ったワインに、過去の複数年のワインをブレンドした「リザーブワイン」をブレンド(アッサンブラージュ)して安定した味わいに。その後、瓶内二次発酵を行い、最低15カ月の熟成を経て、NV(ノン・ヴィンテージ)のシャンパンとして市場に送り出すのです。

シャンパンの約8割は、収穫年が表示されていないNVなのですが、良年で100%その年のブドウで造られることもあり、そのシャンパンは最低3年の熟成を経て、ヴィンテージ・シャンパン(ミレジメ)として世に送り出されることになります。

スペインのカバでも、ノン・ヴィンテージとヴィンテージの区分は規定されていますし(詳しくは「カバ」?「カヴァ」?コスパ最高&家飲みの味方、スペインのcavaを徹底解説を参照)、スティルワイン(非発泡性のワイン)でも、その年のブドウの特性以上に、安定した味わいの追求やクリエイティヴな試みを重視して、ブレンドが行われることがあります。

当たり年と熟成の関係

ワインのスタイルやブドウ品種にもよりますが、ヴィンテージ・ワインまたはオールド・ヴィンテージ・ワインは、原料ブドウの熟度(糖度)が高いことに加え、ワインに仕立てた時の酸度や、タンニン(渋みのもと)の量や質がしっかりしているといった酒質の強さがカギとなり、熟成の向き不向きにつながっていきます。

熟成のどのタイミングで飲んだらいいのかという判断は一筋縄ではいきません。そこで、参考になるのが「ヴィンテージチャート」と呼ばれる指標です。

ヴィンテージチャートとは?作成者によって変わる評価に注意

「ヴィンテージチャート」とは、生産地域ごとにヴィンテージ(収穫年)の評価と飲み頃の目安などを示した一覧表です。評価が高い年を、当たり年(グレート・ヴィンテージ)といい、あまり良くない年をはずれ年(オフ・ヴィンテージ)と表現します。

ヴィンテージチャートは、ワイン評論家やワイン専門誌、ワイン輸入会社、各地のワイン協会などが作成していますが、その作成者によって評価は異なってきます。参考までに、例を挙げると以下のようなものがあります。

ワイン専門誌『ワイン・スペクテイター』
ワイン専門誌『ワイン・アドヴォケイト』
ボルドーワイン委員会
スペイン大使館経済商務部(スペインワイン)
輸入会社「ファインズ(FWINES)」

一時期は、著名なワイン評論家であるロバート・パーカーJr.が手掛けたワイン専門誌『ワイン・アドヴォケイト』のヴィンテージチャートが、ワインごとに評価を付けた「パーカーポイント」とともに強い影響力を持ち、世界中のワイン販売における一つの指標となっていたこともありました。しかしながら、ロバート・パーカーJr.が高く評価する“果実の凝縮感や樽香のしっかりしたパワフルなワイン”の人気が下火になり、2019年に自身が引退したこともあって、今では以前ほどの大きな影響力はなくなってきました。

このように、ヴィンテージチャートは絶対的なものではありません。大きく括った地域だけでは見えてこないことも多く、当然ながら生産者の技術がワイン造りにおいて重要な要素であることを忘れてはいけません。

ただし、あくまでも一つの参考情報として捉えれば、ヴィンテージチャートは便利な指標とも言えるのです。

ヴィンテージ・ワインを堪能するために

「当たり年」とも呼ばれる良いヴィンテージのワインは、熟成管理も重要。せっかくのヴィンテージ・ワインも、ワインセラーなどの環境を整えずに、高温多湿の日本の家でそのまま放置してしまっては、台無しになりかねません。経験もまだ浅いワイン初心者は、ソムリエやワインに精通した人がいる飲食店で楽しむのがおすすめです。

それぞれのワインにはおいしく味わえる“ピーク”というものもあります。オールド・ヴィンテージ・ワインの場合、一般的に白ワインなら20年前後、赤ワインなら20〜30年ほどとも言われたりしますが、収穫年のみならず、品種の特性やテロワール、また、先ほどお伝えしたように、造り手の技術や個性も合わせて判断しないといけないのですから、知識と経験が豊かなソムリエでも“ピーク”を見極めるのは、至難の業。一筋縄ではいきません。

また、管理や味わいの視点とは異なりますが、年号が明記されているヴィンテージ・ワインは、ギフトアイテムや祝席でのワインとしても活躍してくれます。生まれ年や大切な記念ヴィンテージのワインは、お祝いのストーリーを演出してくれるはず。

まずはヴィンテージチャートをチェックして、さらに造り手の情報とともにお祝いにぴったりのワインが手配できれば、あなたも立派なワイン通の仲間入りです!

 

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