韓国料理というと、まずは焼肉やキムチなどがパッと思い浮かぶかもしれませんが、流行りもののスイーツやストリートフードなどもあり、まさに多種多様。お隣の国ということもあり、日本の日常の食の中でもたくさんの料理が浸透しています。
辛いものが多いのは確かですが、うま味を伴った辛みがポイントになっている料理がほとんどで、甘味や塩味の絶妙なバランスがある料理も多いので、適したワインを合わせると、新たなおいしさや可能性が生まれます。
そこで、今回は日本でもおなじみのメニューを大きく3つのタイプに分けて、ワインペアリングを考察。それぞれに合うおすすめワインも具体的に紹介していきます。
■基本を知りたいという方は、みんなが言う「マリアージュ」って何?ペアリングとどう違う?3原則&定番も一挙紹介!をチェック!
併せて、BYOまでできてしまう韓国料理店を3軒厳選して最後にご紹介しますが、まずは韓国料理の特徴や基本を知るところから始めましょう。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
この記事の目次
韓国料理とは?その歴史と特徴
「韓国料理(朝鮮料理)」と一口に言っても色々なものがありますが、そのルーツを辿るとおよそ2,000年前の王族の食事や宮廷料理につながっていきます。それが庶民に伝わりながら、各地域や家庭で多様化。品数豊富な「韓定食」や季節行事と紐づいた「節日料理」もそうして生まれてきました。
また「薬食同源」というのが、大事なキーワード。お隣の中国でも同様ですが、「食べるものはすべて薬になる」という考え方です。この「薬食同源」が根本にあるからこそ、肉などのメイン料理だけでなく、スープや鍋物、副菜、ご飯が並ぶ多皿展開の食卓になっているようです。
バリエーション豊かな多皿展開の食卓ゆえ、箸とスプーンの両方を必ず使うというのも大きな特徴。「ご飯ものや汁物はスプーンで、おかずは箸で」と、使い分けがされています。
またキムチなどの多種多様な副菜は、まさに常備菜。半端に残った常備菜の上手な活用法として生まれたのが、ビビンバなのだとか。最近ではサステナブルやエシカルという言葉で表現されますが、食材を“おいしく始末する”というスタイルは、韓国でも日常生活の中で育まれていました。
【辛ウマ刺激系】キムチチゲ・スンドゥブ・トッポギ
韓国には「クク(湯、タン)」と呼ばれる汁物と、「チゲ」と呼ばれる鍋物があります。
その境界線はやや曖昧で、具だくさんで、土鍋や鉄鍋で出されることが多いのが「チゲ」なのだとか。ちなみに日本で「チゲ鍋」と呼んだりしますが、これだと“鍋鍋”になってしまうので、要注意です。
チゲにも多く使われるのが唐辛子ですが、中南米原産の唐辛子が韓国に普及したのは18世紀後半。それまでは、キムチの辛みには山椒が使われていたようです。
定番のキムチをたっぷり使った「キムチチゲ」、消化がよく口当たりがなめらかな豆腐の鍋「スンドゥブ」、伝統的なストリートフードの「トッポギ」あたりは、日本でもおなじみの料理でしょう。
こうした“辛ウマ刺激系”の料理には、唐辛子ペーストのコチジャンのみならず、発酵させた韓国の味噌類や塩漬けで発酵させたエビなども調味料として使われるため、ただ辛いのではなく、うま味や塩味が加わったおいしさがあります。
それらの味わいを受け止めつつ、「あと一口、もう一口」と食を進めてくれるワインとしておすすめしたいのは、ガリオッポというイタリア・カラブリア州の土着品種から造られるロゼです。
ほどよいタンニン(渋み)とスパイシーさがあり、エッジが効いていて、味わいに奥行きあり。しかもロゼなので適度な酸味もあり、飲み疲れしません。
有名な漫画『神の雫』でも「キムチとのマリアージュ」というテーマで、ガリオッポ種の赤ワインが登場していました。カラブリア州には唐辛子を使った郷土料理があるということからストーリーが展開していましたので、興味がある方はそちらも読んでみてください。
「ロゼじゃなくてしっかり濃いめの赤ワインが好き!」という方には、ガリオッポのほかに、南イタリアの赤の代表格、アリアニコ種のワインもおすすめです。
【コッテリ満足系】チーズタッカルビ・骨付きカルビ・サムギョプサル
辛みやうま味だけでなく、脂分もしっかりある料理は「食べた!」という満足度が高いもの。そんな“コッテリ満足系”の料理で、流行りものからすっかり定番メニューになったのが「チーズタッカルビ」です。
タッカルビ(ダッカルビ)は鉄鍋料理の一つで、肉や野菜、そしてコチジャンなどを合わせて炒める料理のこと。韓国語で「タッ」は鶏を、「カルビ」はあばら骨を意味します。
タッカルビの甘辛い味わいと、チーズの濃厚な乳風味と塩味の融合。ワインが合わないはずがありません。
おすすめしたいのは、果実味とほんのりした甘味が同調しながら、脂や濃い味をさっぱりさせてくれるタンニン(渋み)と軽やかなシュワシュワ感がある1本。やや甘口の赤のスパークリングワインです。
「韓国で食事と言えば、骨付きカルビ!」という人も多いはず。“コッテリ満足系”では欠かせないメジャー級の料理でしょう。
■部位別に焼肉に合うワインを詳しく知りたいという方は、【焼肉】に合うワイン?3つのキーワードから部位別ペアリングまでをチェック!
また、大きく切った豚バラ肉を焼いて甘辛いタレをつけて、青唐辛子やニンニクなどの薬味、キムチと一緒にゴマの葉に包んで食べる「サムギョプサル」もエース級の人気。
おかずやご飯を葉物野菜で包んで食べる「サム文化」は、高麗時代から続く伝統的なスタイル。また「サムギョプサル」というのは、元々は豚肉の部位の名前で、赤身と脂が三層になったバラ肉のことを意味しています。
「骨付きカルビ」や「サムギョプサル」のような、脂のうま味がしっかりした焼肉料理に合うワインは、渋みと果実味がポイント。飽きずに食べていくには、口の中に広がる脂を切ったり包み込んだりしてくれる赤ワインのタンニン(渋み)が効果的ですし、甘辛いタレのものなら、それに同調する果実味が大事な役割を果たします。
この2つの要素を持ったワインでおすすめしたいのが、古木のジンファンデルから造られるカリフォルニアの赤ワイン。干しプラム、ブルーベリー、カシスジャムに、ナツメグやシナモンなどのスパイス香もあり、タンニンも緻密で抜群の相性です。
【滋味深あっさり系】サムゲタン(参鶏湯)・ポッサム(茹で豚)
唐辛子の辛みや濃厚な脂分ではなく、韓国にはじんわりとしたうま味が特徴的な“滋味深あっさり系”の料理もあります。
日本でも有名な「サムゲタン(参鶏湯)」はその代表格。
一羽分の鶏に、もち米やナツメ、栗、朝鮮人参などを詰めてじっくり煮込んだ、コラーゲンたっぷりの薬膳料理です。滋養強壮に良いということで、韓国では夏場の体力補充のために食べる料理として定着。土用の丑の日にうなぎを食べるという日本の習慣に少し似ています。
ペアリングには、ちょっと意外かもしれませんがジョージアのオレンジワインを。
サムゲタンの鶏肉のうま味と漢方食材特有の風味に合わせて、ハーブやスパイスの香り、さらに土っぽさがありながらも、クリアな酸味があるこのオレンジワインには、料理に寄り添いながら体にしみていくようなおいしさがあります。
“滋味深あっさり系”で、もう一つ注目したい料理が「ポッサム」です。
「ポッサム」は、言わば“茹で版のサムギョプサル”。スープで茹でた豚肉(バラ肉や赤身肉など)を、キムチやニンニクなどと一緒に野菜に巻いて食べる料理です。
茹でた豚肉はしっとり柔らかくて、余分な脂は落ちているのでヘルシー。でも、豚肉のうま味はしっかり味わえます。
刺激的な辛みやどっしりした脂分がなく、しっかりしたうま味が持ち味の豚肉料理には、赤ワインと白ワインの“いいとこどり”であるロゼがおすすめ。果実味がしっかりしたこのグルナッシュのロゼは、やさしいタンニンと酸味、八角やシナモンなどのスパイス感もあり、まさに打ってつけです。
ちなみに「ポッサムキムチ」と呼ばれるキムチがありますが、豚肉料理のポッサムとは関係ありません。ポッサムキムチは白菜に魚介類などをたっぷり包んで作った高級キムチのことで、包んで作ることから“ポッサム”という言葉が使われているのだとか。ちょっと紛らわしいですね。
以上、韓国料理を大きく3つのタイプに分けながら、おすすめのペアリングワインをご紹介しました。基本の要素を押さえれば、あとは自由!お好みで色々と楽しんでいただければと思います。
それでは最後に、“韓国料理×ワイン”のペアリングを実際に体験できる店をご紹介しましょう。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
BYOもできる!おすすめの韓国料理店3軒
「色々と分かってきたから、自分で選んだワインを持ち込んで試してみたい!」という人にも、「とりあえず“韓国料理×ワイン”のペアリングを実際に体験してみたい!」という人にも楽しんでもらえる店を…。編集部ではそんな条件をもとに、3軒の韓国料理店を厳選しました。ぜひご活用ください。
■BYOの基本を知りたいという方は、以下の記事をチェック!
【飲食店へのワインの持ち込み】基本のキ
【飲食店へのワインの持ち込み】10の質問、徹底的に答えます!
手軽で便利!【WINE@】を活用してBYOを楽しむ方法
恵比寿ファイヤーガーデン
韓国のチゲやチーズタッカルビといった料理だけでなく、タイ、中国、シンガポールなどアジア各国のスパイシーなエスニック料理と、世界各国より厳選した100種類以上のワインが楽しめるダイニングレストラン。料理はピリ辛~超激辛に調整可能ということなので、ワインと食べ手の好みに合わせて、自由に楽しめそうな一軒です。
赤坂 おんがね
30年以上の歴史を誇る赤坂の名店がリニューアル。韓国料理の大御所が手掛ける店で、本格的な韓国料理の味わいが楽しめます。定番の「チヂミ」や「チャプチェ」をはじめ、韓国料理のルーツを感じる宮廷料理のような逸品の数々も。個室も完備されているので、じっくりワインペアリングを楽しむことができます。
麻布 タッカンマリ 本店
韓国版の水炊きとも呼ばれる「タッカンマリ」が名物の一軒。土鍋で食べる和風のタッカンマリで、ベースとなるスープの種類も選択可能。ワインごとに最適なグラスを貸し出ししてくれて、持ち込み料もかなりリーズナブルなので、滋味深あっさり系の韓国料理でワインペアリングを試したい方には、特におすすめです。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。