ユネスコ無形文化遺産に登録されている「和食」。多くの外国人観光客が旅行目的の一つにするほどですが、和食の中で常に人気上位に入るものに、天ぷらがあります。
天ぷらを食べながらワインを飲むというスタイルは、まだまだ馴染みがないという方もいると思いますが、ワインを常備する天ぷら店も増えてきました。ワインは選び方一つで、また違ったおいしさが生み出されるので、日本酒やビールとは異なったペアリングの楽しみが生まれます。
そこで今回は、天ぷらに合うワインを選ぶ時の3つのキーワードからスタートして、天ぷらの5つのパターン別に合うワインや通しで楽しめる万能ワインを具体的にナビゲート。最後に、BYOまでできてしまう天ぷら店を厳選してご紹介します。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
この記事の目次
【調味料・具材・格】3つのキーワードをまず押さえよう!
天ぷら×ワインのペアリングにはいくつかの視点やポイントがありますが、まずは大事な3つのキーワードを紹介します。
「調味料」からジャッジ!
塩をつけて、揚げたてをシンプルに食べる。そんな繊細な天ぷらの味わいを楽しむ時には、ミネラル感のある辛口の白ワインが何と言っても間違いのないチョイスとなります。
さらにレモンやすだちなどの柑橘を少し搾って食べるものなら、同じ柑橘の香りを持つ白ワインを。抹茶塩などのフレーバー塩の場合は、その香りを同調させることで、うま味がグッと引き立ちます。
天つゆにつけて食べるなら、つゆ(出汁)のうま味に呼応する軽めの赤ワインやロゼワイン、もしくはうま味のある白ワインがおすすめです。濃いめの天つゆや甘辛いタレをかけた天丼や天重なら、果実味豊かな赤ワインも合います。
食べる天ぷらのパターンに合わせた具体的なワインについては、後ほどご紹介します。
「具材」との相性は?
天ぷらはシンプルな調理法ゆえ、繊細な料理。だから、具材そのものも重要なポイントとなります。野菜や山菜には青い香りがあり、根菜には土の香りがあり、それぞれワインの香りとも関連させると相性が良くなります。また、エビや穴子などの風味や食べ応えがある食材の場合は、ボディ(果実味やアルコール度)があるワインをセレクトするとバランスが取れる…といった要領です。
「格」を合わせる
「天ぷら」と一口に言っても、カウンタースタイルで大将が揚げたてを一つずつ提供する天ぷらもあれば、家で気軽に楽しむスーパーのお惣菜天ぷらまで様々です。スペシャルな天ぷらにはちょっと高級なワインを。家飲みのおかずやつまみならカジュアルなワインを。「格」を合わせて楽しめれば、あなたもワイン通と言えるでしょう。
3つの基本の視点が何となく把握できたら、まずはそれでOK!今度はより具体的に、天ぷらの5つのパターン別に合うワインを探っていくことにしましょう。
【塩のみ】で一番人気のエビ天を食べるなら
見た目、食感、味わい…どの点からしても個性を堪能できるエビは、不動の人気No.1の具材でしょう。
エビの風味を生かして、揚げたてに少し塩をつけてシンプルに味わうなら、やはりキリッとした酸味と海のミネラル感のある白ワインが一推し。スペインやポルトガルのアルバリーニョのワインや、樽香ほんのりのブルゴーニュのシャルドネがおすすめです。
天ぷらは揚げ物なのでバターやトーストのような樽熟成由来の香りが合うと思いきや、あまり樽香が強いと悪目立ちしてしまうので、要注意です。
【抹茶塩・カレー塩・ハーブ塩】で野菜天や山菜天を食べるなら
インゲン、ピーマン、紫蘇(大葉)といった青い野菜類、そして春のふきのとう、わらび、たらの芽といった山菜は、それ自体に青い香りや心地よい苦味があります。それに合わせて、同じ香味を持つ甲州やソーヴィニヨン・ブランといった白ワインを合わせるのも一案です。
またシンプルな塩ではなく、フレーバーがついた塩をつけて食べる場合は、それ自体が薬味のような役割を果たしますので、さらにひと工夫するとグンと相性が良くなります。
抹茶塩なら、ぜひオーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーを!ハーブや白胡椒のニュアンスが、軽やかな野菜天ぷらのおいしさを引き立ててくれます。また、野菜や山菜に限らずですが、ミックスハーブの塩やカレー塩をつけて食べる天ぷらには、香り豊かな白ワインを。ヴィオニエやドイツの辛口リースリングあたりが最適です。
【塩&レモン】でさっぱりと白身魚の天ぷらを食べるなら
キスなどの白身魚やイカも、天ぷらファンには欠かせない具材。強い味わいではなく、デリケートなうま味や食感が味わえるこうした具材には、塩をつけてほんの少しレモンやすだちなどを搾っていただくのも、オツな食べ方です。
そんな天ぷらに合わせるワインとしておすすめなのは、フレッシュな柑橘系の香りや酸味、そして舌を少しキュッとさせるミネラル感を持った白ワイン。アルザスのリースリング、シャルドネならシャブリが定番と言えるでしょう。
【天つゆ】でサツマイモなどの根菜の天ぷらやかき揚げを食べるなら
サツマイモ、レンコン、ニンジン、ゴボウといった根菜も天ぷらには欠かせない存在。またきのこ類もそうですが、こうした具材は風味に土のニュアンスがありますので、塩もいいのですが、温かい天つゆがとてもよく合います。
土のような香り、そして天つゆの出汁の甘みとうま味にそっと寄り添ってくれるのが、ピノ・ノワールの赤ワイン。ポイントは酸もボディも強すぎないピノを選ぶことです。おすすめなのは、ヴォルネイやポマールなどのコート・ド・ボーヌのブルゴーニュ。またオレゴンのピノ・ノワールも条件に合致するものが多いです。
“具材のアベンジャーズ”のようなかき揚げも風味が豊かなので、こうしたピノ・ノワールのワインがよく合いますし、天つゆに大根おろしをたっぷり入れるなら、シュール・リーの白ワイン、ミュスカデや甲州も合うことでしょう。
【タレ】をかけた天丼や穴子天を食べるなら
3つのキーワードでもお伝えしましたように、しっかりと甘辛いつゆやタレで食べる穴子天や天丼などの場合は、果実味がある赤ワインが合います。
ピノ・ノワールなら果実味がしっかりめのものがおすすめですが、スペインのテンプラニーリョ種のワインも意外とマッチします。
“天ぷら×テンプラニーリョ”。ダジャレのようですが、ウナギを食べたり、揚げ物もよく食べたりする文化があるからなのか、濃い天つゆやタレの時は、一度お試しいただきたいペアリングです。
以上、天ぷらの5つのパターン別でご紹介してきましたが、料理とワインのマリアージュやペアリングの基本を知っている方なら、そう特別に考える必要はありません。
■基本を知りたいという方は、みんなが言う「マリアージュ」って何?ペアリングとどう違う?3原則&定番も一挙紹介! をチェック!
【万能ワイン】もある?編集部おすすめのワイン3タイプ
天ぷらの5つのパターン、それぞれに合うワインの話をしましたが、「ボトル1本で通せる、使い勝手の良いワインを選びたい」という人のために、3タイプのおすすめ万能ワインもご紹介しましょう。
やっぱりスパークリングは無敵!
軽やかな揚がり具合のものでも、やはり天ぷらは揚げ物。口の中をさっぱりとリセットしてくれるスパークリングワインは、万能ワインの筆頭と言えるでしょう。家ごはんやカジュアルな天ぷらなら、スペインのカバやイタリアのプロセッコを。ちょっと高級な天ぷら店で合わせるなら、やはり「格」を合わせて、シャンパンを。シャルドネ100%で造られるブラン・ド・ブランはキリッとした酸とミネラル感があるので、カウンターで揚げたてをいただくような時は特におすすめです。
酸味とほんのり樽香があるブルゴーニュの白
ブラン・ド・ブランのシャンパンと同様、シャルドネ100%で造られるフランス・ブルゴーニュの白ワインは、上品な酸味とミネラル感があるものが多く、天ぷらにぴったり。リーズナブルなものから高級品まであるので、これも「格」を合わせて無理をせず!一つ注意してほしいのは、トーストしたような香ばしい樽由来の香り。エビ天&塩のペアリングでもお伝えしましたが、あまり樽香が強いと繊細な天ぷらの風味を台無しにしてしまい、飲み疲れしてしまいます。
果実味が軽やかで酸が効いたロゼワイン
赤ワインと白ワインの“いいとこどり”であるロゼは、天ぷらのペアリングでも万能。ただし、果実味や甘味がしっかりしたものではなく、酸味がキリッと感じられるものを選ぶこと。おすすめは近年、質がグッと上がってきた南仏プロヴァンスのロゼ。ちょっとリッチにいきたい場合は、ロゼの辛口シャンパンという選択肢もあります。
それでは、最後に“天ぷら×ワイン”のペアリングを実際に体験できる天ぷら店をご紹介しましょう。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
BYOもできる!おすすめの天ぷら店3軒
「コツが分かってきたから、自分で選んだワインを持ち込んで試してみたい!」という人にも、「とりあえず“天ぷら×ワイン”のペアリングを実際に体験してみたい!」という人にも楽しんでもらえる店を…。編集部ではそんな条件をもとに、3軒の天ぷら店を厳選しました。ぜひご活用ください。
■BYOの基本を知りたいという方は、以下の記事をチェック!
【飲食店へのワインの持ち込み】基本のキ
【飲食店へのワインの持ち込み】10の質問、徹底的に答えます!
手軽で便利!【WINE@】を活用してBYOを楽しむ方法
吞ん処 二◯九(渋谷)
ナチュラルワインにこだわりあり!という渋谷の大衆居酒屋。ワインと日本酒は店内の冷蔵庫からお好きなものを選ぶというセルフスタイルも楽しい一軒です。おつまみはもちろん、天ぷらや寿司、すき焼きまであり、メインの天ぷらは、王道のエビや穴子の他、少し変わり種でおもしろいものも。BYOも1本1,500円で持ち込みができるとのことです。
EBISU FRY BAR(恵比寿)
「フルーツトマトとバジルの天麩羅」や「天使の海老とチリソースナッツ」など、創意工夫を凝らした創作天ぷらが自慢という恵比寿の一軒。ワインや地酒が多数ありますが、WINE@のオンラインショップからの購入&直送OKで、持ち込み料も1本2,200円とリーズナブル。店側でのワインの抜栓やワインクーラーの貸出も可能とのことです。
日本橋天ぷら魚新
西麻布にも店舗があり、5~9名で貸切可能な掘りごたつの座敷もあるため、接待にも好適な本格的天ぷら店。六本木で25年培ったという確かな技術で揚げる旬の素材の天ぷらが楽しめます。BYO対応では、WINE@オンラインショップからの直送に加え、シャンパングラス、赤白ワイングラスの貸出も可能。天ぷら×ワインを心ゆくまで堪能できます。
緊急事態宣言・まん延防止等重点措置等が発出中は、酒類の提供の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。