ワインバーやビストロで欠かせない、ワインのお供。一人飲みのときでも、仲間と一緒のときでも、はたまたデートや接待でも、定番の一品やつまみのことをちゃんと知っておけば、恥をかく心配はありません。
そんな「ワインのお供」のことをシリーズで紹介していますが、今回のテーマは、ハム。イタリアンに欠かせないパルマハムやスペインバルでよく見る原木のハム、また、おなじみのロースハムや燻製ハムなど、ハムにもいろいろあります。
ハムの違いがわかるとワインもより一層おいしく楽しめるはず。もちろん、おいしいハム&ワインが楽しめるおすすめの5店も併せて紹介します。
緊急事態宣言等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
この記事の目次
そもそもハムって何?生ハムの「生」ってどういうこと?
「そもそも、ハムって何?」ということをまず明らかにしておきましょう。このシリーズで紹介している
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と同様、ハムもシャルキュトリ(食肉加工品)の一つであることは、ご存じの方も多いと思います。
つまり、保存食として生まれたもの。一説によると、ハムは紀元前7000年頃には食べられていたというほど、長い歴史があります。現在は、燻製にした鶏肉や魚の身をハムと呼んでいるものもありますが、そもそもハムとは豚のもも肉を加工した食品のことで、ハム(ham)という言葉は本来、英語で「豚のもも肉」そのものを意味します。
ここでちょっと疑問が湧いてくる方もいるのでは?「あれ?保存食なのに“生ハム”ってどういうこと?」と。
おなじみの「ロースハム」や「ボンレスハム(骨なし=ボーンレスのハム)」などは、ボイル(加熱)という工程を経ているのに対し、生ハムと呼ばれるものは、塩漬けにし、乾燥と熟成を経て完成。つまり「生」と呼ばれているものの、生の肉ではなく、保存や味わいづくりのための加工は施されているわけです。
ちなみに、日本のスーパーなどで「生ハム」として販売されているものの多くは、ラックスハムというもの。ラックス(Lachs)は、ドイツ語で「サーモン」の意味。サーモンのような赤みのある色をしたハムということのようで、低い温度でじっくり時間をかけて熟成させたものです。
「世界三大ハム」と呼ばれるものも!
日本人は“世界三大〇〇”というキャッチフレーズが好きですが、生ハムにもそう呼ばれるものがあり、ワインバーや飲食店でも定番のハムとなっています。
一つめは、イタリアのパルマハム。正式名称はプロシュット・ディ・パルマと言います。
赤の微発泡ワイン「ランブルスコ」やイタリアチーズの王様「パルミジャーノ・レッジャーノ」と同じ郷土、エミリア=ロマーニャ州のパルマ地区で作られるハムです。パルミジャーノ・レッジャーノの製造工程で排出されるホエー(乳清)が豚の大事な飼料となるうえ、熟成に適した霧が多く立ち込めるエリア。まさにテロワールが味わい深いプロシュットを育むというわけです。
次に、スペインバルのカウンターにドーンと原木が置かれていることも多いハモン・セラーノ。
スペイン語で「山のハム」という意味があり、しっかりとした塩味と肉の強い風味が特徴。主に改良種の白豚から作られますが、食材としても有名なイベリコ豚(イベリア半島原産の黒豚)から作られるものは「ハモン・イベリコ」と呼ばれ、区別されています。
三つめは、中国の金華ハム(金華火腿)。
浙江省金華地区が原産の高級食材「金華豚」のみが使用されたハムのことで、表面にラードを塗ったあと、長期間の熟成を行います。固い肉質が特徴的で、酒で蒸したり、スープに入れたりして食べるのが通例。「プロシュット・ディ・パルマ」や「ハモン・セラーノ」のようにそのままではあまり食べないというのも特徴です。
ワイン好きなら知っておきたい、ハムの言葉いろいろ
「ham」は本来、英語で「豚のもも肉」を意味する言葉だという話はしましたが、ビストロやワインバー、イタリアンなどのメニューで登場する“ハムの言葉”を知らないと戸惑うことも。ワイン好きのために、ここで主なものを紹介しておきましょう。
フランス語では、ジャンボン(jambon)
フランスでは、生ハムはジャンボン・クリュ。「クリュ(cru)」は「生」の意味です。スペイン国境近くに位置するバイヨンヌの街には「ジャンボン・ド・バイヨンヌ」という名産の生ハムがあります。また加熱ハムはジャンボン・ブランと呼ばれます。
イタリア語では、プロシュット(prosciutto)
「パルマハム=プロシュット・ディ・パルマ」でお分かりかと思いますが、ほかにも「プロシュット・ディ・〇〇」という名称で、各地の特産ハムがあります。また、生ハムの総称はプロシュット・クルード(生のハム)、ボイルハムはプロシュット・コット(加熱したハム)と言います。
そのほか、首から背中にかけての肉から作られるコッパや、腿肉の中心部分にある特に柔らかい最上の部位を切り出し熟成させるクラテッロ、イタリア北部で牛や馬、猪などの肉から作られるブレザオラも覚えておきたいイタリアのハムの名前です。
ドイツ語では、シンケン(Schinken)
ソーセージ同様、ハムもドイツでは欠かせない食品で、たくさんの種類がありますが、まずはシンケンという言葉と、燻製した生ハム、ラックスシンケンは覚えておきましょう。
アメリカでブレイクした、パストラミ(pastrami)
牛肉を塩漬け、乾燥、燻製させて作られるパストラミ。燻製させた後にニンニクや胡椒、パプリカなどの香辛料をまぶすのが一般的で、豚肉のものではありませんが、これもハムの一種と言えるでしょう。
ニューヨークのカフェやデリから人気となった「パストラミサンド」ですが、源流は中東にあり。その後、東欧のユダヤ系移民とともにアメリカに渡り、今やベーグルやサンドイッチの具材として定番に。メルロ主体の赤ワインとの相性が抜群です。
日本のオリジナルハム!?
おなじみのロースハムですが、実はこれ、日本で独自に開発されたもの。豚のロース肉を使い、脂肪層を外側にして巻いて作られたもので、食感がしっとりしつつも淡白な味わいという、日本人の味覚に沿ってできたハムなのだとか。
また、赤いフチがあるハムで、最近はあまり見かけなくなってきたプレスハムも、なんと日本のオリジナル。戦後の食材が少ない時代から普及し、豚肉以外の肉も混ぜて作られていた言わば「練りもの」で、ハムというよりソーセージに近い代物です。
世界のハムの基本と、代表的なものを紹介しましたが、言葉の整理が付きましたでしょうか?ここからは、おいしいハム&ワインが楽しめる5つの店をご紹介します。
緊急事態宣言等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。
【apéro wine bar aoyama】自然体のフランスワインと、しゅわしゅわ溶ける生ハム
photo:店舗写真
このワインバーでは、ワイン通やグルメな人たちの間で絶大な人気を誇る「サルメリア69(ロッキュー)」の生ハムをはじめとしたシャルキュトリ盛り合わせがメニューオンしています。
向こう側が透けるくらい薄くスライスされたプロシュット・ディ・パルマは、口に入れるとあっという間にとろけてしまうほど。ファンの間では“しゅわしゅわのハム”と呼ばれるほどです。
「apéro wine bar aoyama」は、外苑前駅から歩いて6分ほど。フランスのアペリティフスタイルをテーマに、多種多様なオーガニックワインが楽しめます。料理は、スタッフが目利きをした国内外の食材を使い、フランスの家庭料理をベースに仕上げたものばかり。随所にセンスが光る一軒です。
【代々木ビストリア】プロシュットをメインに、毎日スライスして提供するワインバル
photo:店舗写真
代々木にあるこのワインバルの冷製メニュー人気No.1を誇るのが「本日のプロシュート盛合せ」。“世界三大生ハム”の一つと言われるパルマハムなど、イタリア産のプロシュットをメインに、毎日お店でスライスして提供。口に入れた瞬間に脂身のうま味が口いっぱいに広がります。
他にも、肉をマリネするところから作るという「自家製ソーセージ」などの肉料理やシェフこだわりのイタリアンがメニューに並び、どれもワインが進みます。ワインは、ソムリエが厳選した世界各国のもので、グラスで600円から、ボトルは3,000円からとリーズナブル。
木目調の温かみのある隠れ家的な店で、ワインカーヴ(蔵)をイメージした地下フロアは、貸切での利用がおすすめとのこと。代々木駅からも徒歩3〜4分ですが、小田急小田原線の南新宿駅が至近で、徒歩1分という場所にあります。
【Trattoria M’s】“お魚イタリアン”は、肉メニューやワインにも妥協なし!
photo:店舗写真
京急蒲田駅からもJR蒲田駅からも徒歩5分ほどで着くこの一軒は「お魚マイスターアドバイザーがいるお店」を謳うイタリアン。魚介類を賢く購入し、おいしく食べ、その知識を周囲の人に普及していくお魚のプロのための資格なのだそうで、もし「平目の生ハムとモッツァレラチーズのインボルティーニ」という料理がメニューに載っていたら、ぜひ味わってみてください。
もちろん定番の肉メニューもあり。「18か月熟成パルマ産生ハム、コッパ、ミラノサラミ、モルタデッラの盛り合わせ」や「手作りサルシッチャ(30cmの生ソーセージ)」も見逃せません。
ワインは、8種類のグラスワインが楽しめるうえ、「樽詰スパークリング」なるものも。1杯ずつサーバーから注がれるため、冷たくフレッシュでフルーティーな泡が楽しめます。ボトルでも赤・白それぞれ20種以上のイタリアワインがあります。
【スペインバル Cabana】一軒家リノベの店で、最高級のハモンイベリコ・ベジョータを
photo:店舗写真
北千住駅から徒歩6分。店名でもある「Cabana(カバーナ)」は、スペイン語で「小屋・コテージ」という意味があり、宿場町商店街の古い一軒家をリノベーションした隠れ家的なスペインバルです。
スペインバルと言えば“ハモン”ですが、ここでは最高級のスペイン産生ハム「ハモンイベリコ・ベジョータ」が食べられます。大自然の中で放牧され、自然のドングリを食べて育てられた最高ランクのイベリコ豚のみが「ベジョータ」の名を冠し「イベリコ豚の頂点」と呼ばれます。スペインの熟練の職人が4年間もの時間をかけ、一つ一つ丁寧に熟成させて仕上げた最高級の生ハムは、全体のわずか10%程度と非常に希少なため、原木1本は十数万円するそうですが、それが1皿900円ほどで食べられるのですから、必食でしょう。
ワインは、40種以上のスペインのものがあり、カバをはじめ、赤・白・シェリー酒まで、取り揃っているので、ハモンやスペイン料理とワインのマリアージュが楽しめます。
【マンジェ・エ・ボワール ナガオ】仔羊の生ハム!? 食材の目利きが確かなプチフレンチで
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東京メトロ有楽町線の銀座一丁目駅から徒歩2分のフレンチ。和食出身のシェフと、実家が山梨の「ルミエールワイナリー」というマダムが夫婦で2000年にオープンしたここは、シェフ自らが魚河岸で選ぶ新鮮な魚介類やファーマーズマーケットで買い求める有機野菜、スロベニア産のピランソルトなど、食材の目利きがしっかり。ちなみに「マンジェ エ ボワール」とは、フランス語で「食べて、飲んで」という意味があります。
コース料理が主体ですが、夜10時からはワインバーとしても利用でき、小さな前菜盛り合わせやチーズなども楽しめ、カウンターで一人ワインを傾けることもできます。アラカルトには「ニュージーランド産仔羊の生ハム」や「ハモンセラーノと季節のフルーツ」なども。
ワインは、山梨ルミエールのものだけでなく、フランスやニューワールドなどの厳選ワインが80種類以上あり、1本3,800円のものから8万円の高級ワインまでと多彩。ソムリエの資格を持つシェフとマダムに相談しながら楽しみましょう。
緊急事態宣言等が発出中は、酒類の提供中止の他、営業時間やメニュー等の変更もありますので、最新情報は各店舗にてご確認ください。