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何が違うの!?~シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ

シャンパンは、フランス・シャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインのこと。

これはもう周知の事実ですね。昔はシャンパン=発泡性のあるワインという認識でしたが、「シャンパーニュ地方以外で造られるスパークリングワインは“シャンパン”ではないんですよー」と様々なところで発信されたおかげで、だいぶ浸透していると思います。

ということで、シャンパン以外にもスパークリングワインはあります。シャンパン以外にフランスで造られる、そこそこ有名なスパークリングワイン「クレマン」、コスパが高くカジュアルに楽しめる「カバ」、名前は聞いたことあるけど実態がよくわからない「フランチャコルタ」

世界には様々なスパークリングワインがあって、正直何がどう違うのかわからない、違いがわからないからいつも知っているスパークリングワインを選んでしまう、という方のために、それぞれのワインの特徴をまとめて紹介します!

シーンや予算に合わせてスパークリングワインを飲み分けできるようになると、より充実したWine Lifeになりますよ。

「違い」その1:産地が違う!

「シャンパン」はシャンパーニュ地方で造られるスパークリングワイン。ということは「ほかのワインは違う産地で造られるものでは?」と思ったアナタ、正解です!

シャンパン同様に、クレマンやカバ、フランチャコルタも限定的な地域で造られるスパークリングワインです。まずはそれぞれがどこで造られるのかをご紹介しましょう。

NV ブリュット・レゼルヴ
産地
フランス・シャンパーニュ地方
品種
ピノ・ノワール
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)
NV スペシャル・キュヴェ/ボランジェ
産地
フランス・シャンパーニュ地方
品種
ピノ・ノワール
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

8種類もある「クレマン」

フランスにはシャンパンの他にも、生産地域限定のスパークリングワインがあります。それが「クレマン」。「クレマン+産地名」で呼ばれるスパークリングワインです。全部で8つの「クレマン」があります。

フランス北東部のアルザス地方で造られる「クレマン・ダルザス」は、8つのクレマンの中で最大の生産量を誇り、フランス国内でのクレマンの消費量トップを誇ります。輸出にも積極的なので、日本でも、もしかしたらよく目にするクレマンかもしれません。

フランスのみならず世界的にも名高いワインの銘醸地であるボルドー、ブルゴーニュでも「クレマン・ド・ボルドー」「クレマン・ド・ブルゴーニュ」が造られ、フランスの庭と呼ばれるロワール川流域でも「クレマン・ド・ロワール」があります。

ほかには、フランス東部の「クレマン・ド・ジュラ」「クレマン・ド・サヴォワ」、そこから南西に行ったローヌ地方では「クレマン・ド・ディー」が造られます。このワインが造られるディー村は、北部ローヌと南部ローヌの間にある地域で、ローヌ地方全体で唯一スパークリングワインをメインで生産するエリアになります。

8つ目は南フランスのラングドック地方の「クレマン・ド・リムー」。夏は暑く乾燥した地中海性気候のラングドック地方ですが、このワインを造る地域は、海洋性気候の影響も受け、標高も高いので比較的冷涼。普通の、泡のないワインも造りますが、繊細で上品なワインを生み出し、特にクレマンは高い評価を受けています。

2014 クレマン・ド・ブルゴーニュ/アンドレ・ボノーム
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
シャルドネ
タイプ
ミディアムフル辛口 スパークリング(白)
NV クレマン・ダルザス・ブリュット・キュヴェ・マネキネコ/クレマン・クリュール
産地
フランス・アルザス地方
品種
ピノ・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

特定地域だけど広範囲すぎる「カバ」

「クレマン」は、もしかしたらなじみが薄いかもしれませんが、シャンパンと同じくらい日本で有名なスパークリングワインに「カバ」があります。カバは、スペインの特定地域で造られるスパークリングワインです。

特定地域、つまりカバを造れる地域が決まっています。一応決まっていますが…めちゃめちゃ広い!スペインの北部とか南部とかどちらかに偏ることなくほぼ全土に「造れる地域」が点在しています。ただ、カバの全生産量の95%は、バルセロナのあるカタルーニャ州で造られます。

ちなみに原語で書くと「CAVA」。「カバ」じゃなくて「カヴァ」じゃないの?と思われそうですが、日本語同様スペイン語も「V」の発音は「バビブベボ」らしい。なので、動物と間違われそうですが「カバ」と表記します。

NV ジャズ・ナトゥーレ・レセルバ/カステル・サント・アントーニ
産地
スペイン
品種
チャレロ マカベオ パレリャーダ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)
NV カバ・カイルス・レセルバ・ブリュット・ナチューレ/カバ・カイルス
産地
スペイン
品種
マカベオ パレリャーダ チャレロ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

シャンパーニュにも負けないクオリティ「フランチャコルタ」

フランス、スペインときたので、ヨーロッパの伝統的なワイン生産国であるイタリアのスパークリングワインも紹介しましょう。イタリア半島の付け根部分、ミラノを要するロンバルディア州のフランチャコルタ地区で造られるスパークリングワインです。

もしかしたら「なんとなく聞いたことはある」というレベルの認知度かもしれません。それもそのはず、シャンパンの生産量の5%ほどの量しか生産されておらず、そのほとんどがイタリア国内で消費されるので、日本では比較的目にすることが少ないスパークリングワインと言えるでしょう(それでも、限られたお店でしか取り扱っていない、というレベルではないので、入手しにくいことはありません)。

イタリアは紀元前からワイン造りをおこなう伝統のあるワイン生産国ですが、「フランチャコルタ」の歴史は浅く、最初に造られたのは1961年。フランチャコルタという地域名がワイン名として謳うことが認められたのが1991年。シャンパンが生まれたのが1660年ごろと言いますので、実に300年のタイムラグがあるのです。

しかし、その300年の時間差を埋めるがごとく、高品質なワインを造りたいと望むこの地の貴族と、野心溢れる20代の青年がタッグを組んで生み出したのが「フランチャコルタ」。当時のイタリア国内の経済的背景と消費地である大都市が近くにあった幸運もあり、瞬く間に人気ワインになり、「フランチャコルタの奇跡」とも言われています。

NV フランチャコルタ・ブリュット/フェルゲッティーナ
産地
イタリア・ロンバルディア州
品種
シャルドネ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(白)

「違い」その2:品種が違う!

産地が違えば、当然、育てられるブドウ品種も異なります。

シャンパンは、シャルドネピノ・ノワールムニエの3品種で造られるワインです(※)。この3種をすべて使ったシャンパンもあれば、1種類だけで造られるものもあります。

クレマンは8つの地域すべて異なる品種が使われ、その地域で造られる通常のスティルワインとほぼ同じ品種で造られます。スパークリングワインではあまり見かけないカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを使ったものもある「クレマン・ド・ボルドー」や、スティルワインは単一品種のワインがメインなのに、スパークリングワインはブレンドしたものも見かける「クレマン・ド・ブルゴーニュ」など、地域の特徴が表れたクレマンが造られています。

カバを飲んだことがある人は多いかと思いますが、使用しているブドウ品種を知っている人は少ないのではないかと思います。伝統的にはマカベオチャレッロパレリャーダという、舌を噛みそうな名前の3品種をブレンドして造られるものがほとんどです。最近では、シャルドネやピノ・ノワールの使用も認められ、ピノ・ノワール100%のブラン・ド・ノワールのカバの生産も認められるようになりました。

フランチャコルタを造るブドウはシャルドネピノ・ネーロピノ・ビアンコ。シャルドネ以外初めて聞いた品種名かもしれませんが、「ピノ・ネーロ」はピノ・ノワールのこと。「ピノ・ビアンコ」は、アルザス地方でよく造られているピノ・ブランのこと。いずれもイタリアでの呼び方になります。

(※)厳密にはシャンパンを造るのに認められた品種は、他に4種類の白ブドウがあります。その4種のブドウの栽培面積はシャンパーニュ地方の全栽培面積の1%に満たない程度なので、あまり見かけることはないかと思います。

発泡の造り方はすべて同じ!

産地も違うし使用する品種も違うそれぞれのスパークリングワインですが、一つだけすべてに共通するものがあります。

それは「泡の造り方」。

スパークリングワインの造り方は、初めにベースとなる通常のワイン(スティルワイン)を造ってから発泡を造ります。その造り方は大きく分けて5種類ありますが、シャンパンもクレマンも、カバもフランチャコルタも、「瓶内二次発酵」という造り方をしています。

カタカナでいうとトラディッショナル方式。「伝統的な」という意味ですが、そんな意味よりも「瓶内二次発酵」の方が造り方をイメージしやすいかなと思います。漢字の通り、瓶内で二次発酵させる造り方です。一次発酵は通常のワイン(スティルワイン)を造る発酵、二次発酵で泡を造る、瓶内で、ということです。

この造り方によるスパークリングワインの特徴は、比較的きめ細かい泡ができ、空気に触れた後でも長い時間発泡性が保たれる、ということです。グラスに注がれたコカ・コーラと比較すると一目瞭然。泡の細かさや炭酸の持続性を比べてみてください。ちなみにコカ・コーラの炭酸は、液体に二酸化炭素を吹き込んでつくられています。

瓶内二次発酵は、一番面倒な、手間のかかる造り方。それでもあえてこの製法をするスパークリングワインは、スパークリングワインの醍醐味である「泡」にこだわったワイン、ということができるでしょう。

「違い」と「同じ」を理解して、飲み比べや使い分けを!

シャンパン、クレマン、カバ、フランチャコルタ。これら4つのスパークリングワインの違いは「産地」と「品種」。同じ品種でも産地が違えば味や香りの雰囲気は異なります。

造り手によっても雰囲気は変わるので一概に「シャンパンはこんな味、フランチャコルタはこんな味」と言い切れないのですが、少しでもそのキャラクターを知って興味を持てれば一歩前進です。まったく知らないものには手を伸ばせないけれど、少しでも知っていたら近づきやすいかな、と思います。

そしてもう一つの違いは「価格」。1000円代前半から購入できるカバやクレマン。安くても3000円代(それでもなかなか見かけない)、一般的には5000円前後はするシャンパン。シャンパンよりは少しだけリーズナブルだけど4000円前後はするフランチャコルタ。この価格の差は、生産量の違いや「完成品」となる期間の違い、ブランド価値の違いなど様々あります。

同じなのは「製法」。どのスパークリングワインも、1本1本丁寧に瓶内二次発酵で造られた、泡の質にこだわっているワインたちです。繊細な泡は、のど越しもスムーズ。

これらを飲み比べるのも面白いかもしれません。その際はぜひ、同じ熟成期間のもので比べてみてください。ワインは、熟成期間によっても味が変わります。

瓶内二次発酵のスパークリングワインは、瓶内の「澱」に一定期間触れています。澱は仕事を終えた酵母たち。彼らはその後自己分解してアミノ酸などの成分に変わります。アミノ酸の旨味成分が、ワインに溶け込んで複雑な味わいを生み出しています。

普段は、価格的にも味わい的にも親しみやすい「カバ」や「クレマン」を、お祝い事やちょっと背伸びしたいときは「シャンパン」や「フランチャコルタ」を、といった感じで、シーンによってスパークリングワインを選べたら、ますます楽しいWine Lifeになるはずです!

コスパ、コストパフォーマンス、カリテ・プリ…あなたはちゃんと説明できる?

ワイン通がよく使うキーワード。なかには「ワインは好きだし、興味はあるんだけど…」という初心者のみなさんのハードルを少し上げてしまう言葉もあります。

そこで、なんとなく分かっているけれど自分で説明しようと思うとイマイチ…そんなキーワードを改めて解説したいと思います。

今回のキーワードはコスパ。コスパの良いワインとは?さて、あなたはちゃんと説明できますか?

「コスパ」は和製英語!?

日常会話でもすっかり定着したコスパという言葉。省略せずに言えばコストパフォーマンスであるということは、ほとんどの方がご存じかと思います。

コスト(cost)+パフォーマンス(performance)

つまり、その価格に見合う性能や効果、価値があるということ。日本語では費用対効果と訳されることもあります。

英語にも確かにcost performanceという表現は実在しますが、あまり日常的には使われていないようです。「コスパが良い(good cost performance)」という意味の表現としては

reasonable
good value for money

という表現の方がより自然に伝わるようです。

単純に「安いこと」とは限らない。

「コスパが良い(good cost performance)」という意味の表現として、reasonable(リーズナブル)という言葉を紹介しました。リーズナブルも日本語では「安いこと」を意味する言葉として使われていますが、これも本来は違います。

もう一つの表現、good value for moneyと同様の意味があり、価格(金額)に対して正当な価値が見出せるというのが、リーズナブルの本当の意味。コスパ(コストパフォーマンス)と同じく、間違った認識が一般的になっている例です。

ワイン通の人にはフランス好きの方も多いですが、フランス語にはカリテ・プリ(qualité prix)という表現があります。

qualité=クオリティprix=プライス

プライス(価格)に見合うクオリティ(品質)があるということ。「コスパが良い=安い」と勘違いされることを避けて、このカリテ・プリという表現を使うワイン通もいます。

“コスパの良いワイン”は、必ずしも安いワインとは限らない。では、どんなポイントでコストパフォーマンスを見出したらよいのかを、次に整理していきましょう。

3つの経験則とは?コスパを見出すポイントを整理! 

価格に見合う性能や効果、価値があるかどうかが、コスパのポイントなので、実はそのワインを飲む人によって、コスパの良いワインというのは変わってきます。

■その1:味覚の経験則

ソムリエやワインエキスパートの資格をお持ちの方は、少なからず経験があると思いますが、テイスティングの訓練を重ねると感じられる要素がどんどんと増えていきます。好みが変わったりするのは、積み重ねられた経験によるものが大きいものです。もちろん、先天的な味覚の鋭敏さも影響しますが、いずれにせよ個人差があり、それによっておいしさを感じる内容や程度にも差が出ることは、至極当然のことと言えるでしょう。

■その2:ストーリーの経験則

過去にそのワインを飲んだ時のシチュエーションや思い出、またそのワインが造られた背景や造り手の人生…そうした“ストーリー”も価値を持ち、おいしいと感じるかどうかに大きく影響します。これも納得いただけるのではないでしょうか。

■その3:価格の経験則

ワインを買うまたは注文する経験が積まれると「どんなワインがどれくらいの価格なのか」ということが記憶に蓄積されていくものです。それによって「あのワインがこの値段!?」といった視点から、いわゆる“お得感”を判断し、コスパを感じるということもあるでしょう。

1,000円でも1万円でも、その人にとって「コスパ最高!」というワインがある。

味覚、ストーリー、価格の3つの経験則によって決まるコスパの良いワイン。安さという視点だけに捉われていては、たどりつけません。

ワインショップなどで価格の経験則を積むのも楽しいものですし、このWebメディアの記事を読んだり、ワイナリー訪問をしたりすることでストーリーの経験則を深めるもよし。また、ご自身の今の味覚の経験則をもとに、味わいのマトリックスからワインを探すのも効果的です。

味わいのマトリックスから自分の“コスパワイン”を探す!

白・赤・ロゼ・スパークリングとワインのタイプ別のマトリックスがあり、酸味フルーティ感(果実味)、渋みや苦味などのポイントから、より具体的なワインを探せるようになっています。

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