未だ収束していない新型コロナウィルスに世界中が翻弄された2020年でしたが、2021年こそはウィルスに打ち克って、飲食の世界にとっても明るい年になることを、私たちWINE@MAGAZINE編集部一同も願ってやみません。
食べることは、生きること。栄養としてだけでなく、気持ちを明るくし、活力にあふれた暮らしの源になるのが“おいしい”という日々の体験だと思います。
2021年の干支は丑(うし)。そこでエネルギッシュな“丑=牛”にあやかって、私たちも元気に過ごせるよう、世界の牛肉料理とワインのペアリングについてご紹介したいと思います。
■ワインと料理の組み合わせの基本のキを知りたいという方は、みんなが言う「マリアージュ」って何?ペアリングとどう違う?3原則&定番も一挙紹介! も併せてお楽しみください。
また、皆さんの中には楽しみにしていた旅行を諦めたという人もたくさんいるはず。この記事を通じて、少しでも旅行気分を味わっていただけたらと思います。題して“旅するペアリング”、さぁ出発しましょう!
この記事の目次
【スペイン】バルで気軽に、闘牛の国で串焼き!?
観光地としても常に人気上位に入る、スペイン。動物愛護団体からの強い批判にもさらされて衰退の道を辿っている闘牛ですが、中世からの歴史があり、かの有名なヘミングウェイの『日はまた昇る』や、スペインを代表する詩人、フェデリコ・ガルシーア・ロルカが生涯を通じて作品のモチーフにするなど、実は文化的な側面もある国技です。
そんな闘牛の歴史を持つスペインですが、実は食材としての肉という点からすると、豚・鶏・羊が優勢。マッチョな闘牛の硬い肉はさておき、食用の肉牛もちゃんといますが、料理のバリエーションからすると、牛肉はシンプルなソテーや串焼きなどで食べられることが多いようです。
“バル・ホッピング(数軒のバルをはしごして楽しむこと)”で出会う様々なピンチョス(おつまみの小皿料理)、そしてブロチェタ(フランス語の「ブロシェット」から)と呼ばれる串焼きなどで、牛を堪能。スペインの代表的な赤、テンプラニーリョ種のリオハのワインがあれば、安定感のあるペアリングとなります。
牛肉&スペインワインを日本で楽しむなら、飯田橋駅から徒歩3分というスペインバル「アサドール エルブエイ」へ。和牛赤身肉の炭火焼き&スペインワインを堪能できます。BYO(ワインの持ち込み)の対応もしてくれます!
【イタリア】ビステッカはもちろん、コトコト系の煮込みも
郷土料理の宝庫、イタリアには牛肉を使った料理が各種ありますが、一番有名なのは、ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナでしょうか。いわゆる“Tボーンステーキ”の一種で、豪快に焼いた焦げもうま味となるイタリア・フィレンツェの名物です。これには、やはりご当地のキャンティ・クラシコがピッタリでしょう。
また、“イタリア版ローストビーフ”とも言えるタリアータも、イタリアンの主菜としては定番で、キャンティ・クラシコにも合う一品です。
タリアータは、イタリア語で「薄く切った」という意味。大きな塊で焼き、中はレアに仕上げた牛肉をスライスして、削ったパルミジャーノ・レッジャーノやルッコラをトッピングし、バルサミコ酢を使ったソースで味わう一皿です。シンプルな牛肉料理なので、あまり果実味とアルコールが強くない赤をセレクトしましょう。
タリアータは、イタリア料理店でもよくメニューオンしています。例えば、自由が丘のこの一軒。「IL CAMPANELLO」なら、流行り廃りのないベーシックなイタリア料理であるタリアータ&ワインを、気軽に楽しめます。
またイタリアの牛肉料理は、“焼き”のほかに“煮込み”の料理も見逃せません。ミラノ風の仔牛すね肉の煮込み、オッソブーコです。
イタリア語でオッソ(osso)は「骨」、ブーコ(buco)は「穴」を意味しますが、骨付きのすね肉は調理すると中心に穴の開いたような形になるので、その名がついています。
ミラノおよびロンバルディア州を代表する郷土料理の一つなので、ワインはヴァルテッリーナ(キアヴェンナスカ種=ネッビオーロ種を主体とする郷土の赤ワイン)がベストマッチと言われますが、やさしい味わいのネッビオーロ種やバルベーラ種などの赤ワインであれば、よく合います。
【フランス】ワイン好きなら絶対知っておきたいブッフ・ブルギニョン
ブルゴーニュ風牛肉の煮込み(ブッフ・ブルギニョン)は、その名の通り、フランス・ブルゴーニュ地方の郷土料理です。赤ワインをたっぷり使って牛肉を煮込んだ料理で、ビーフシチューの原型のようなもの。
ほんのりとした酸味や苦味もあり、うま味とコクが豊かなこの牛肉の煮込みには、同じような要素をもつ、熟成感ありのピノ・ノワールが最高のパートナーになります。
シンプルだけれど、ワインと一緒に心もお腹も満たされる煮込み料理は、フランスの地方料理には欠かせないもの。店の雰囲気からして、まるで現地に行ったような気分になれる「ル・プティ・トノー 虎ノ門店」なら、BYOもできて、ハチミツとクミン風味が効いた「とろける牛ほほ肉の赤ワイン煮」が味わえますので、おすすめです。
【アメリカ】“チェリーレッド”と表される赤身とサシの好バランス
「ステーキといえば、アメリカ!」というイメージを持つ日本人も多いと思いますが、アメリカン・ビーフの魅力や特徴は、まだまだ知らないことも多いようです。
その一つが、アメリカ政府(米国農務省:USDA)が世界に先駆けて導入した牛肉の格付けシステム。日本でもサシの量などに応じて「最高級A5ランク!」などの格付けシステムがありますが、それとはまた異なり、牛の種類、成熟度、サシ(霜降り)の入り具合、性別という4つの要素を主軸に、等級(グレード)が決められるのだとか。
本国アメリカでは全部で8等級に分かれていますが、現在日本に輸入されているものは、プライム、チョイス、セレクトという上から3番目までの等級になるのだそう。改めて、アメリカン・ビーフの等級を銘打ったステーキが食べてみたくなります。
ペアリングワインは、やはりカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンからまずは試してみましょう。
アメリカから上陸したステーキハウスは何軒かありますが、上質な肉を徹底管理のもと熟成させたステーキが食べられる一軒として「Wolfgang’s Steakhouse Roppongi」をご紹介。この六本木店のほかに、丸の内にも支店があります。
【アルゼンチン】ガウチョの国は、牛肉がパワーの源?
数年前に流行した「ガウチョパンツ(ワイドシルエットのパンツ)」でその名を知ったという日本人も多いであろう、ガウチョ(gaucho)。よく「牧童」と訳されますが、18〜19世紀にかけて、アルゼンチンやウルグアイに広がるラ・パンパ(大草原地帯)で野生の牛を捕獲して、その革を売っていた“カウボーイ”のことを意味します。
独立心旺盛で、農牧業には長けていながらも安定した生活が嫌いだったというガウチョには、なんとなく日本の“サムライ”に通じるニュアンスもあり、現在では本来のガウチョはもう存在しませんが、農村に住む牛飼い(パイサーノ)がガウチョと呼ばれることもあります。
そんなガウチョの影響を受けた料理と言えば、アサード。アルゼンチン風のBBQステーキといった感じの豪快に焼き上げる肉料理です。日本ではなかなかアルゼンチン料理店には出会いませんが、シンプル&ワイルドな“焼肉”ですから、もし食べる機会があったら、ワインもアルゼンチンの代表格である赤を。濃醇で果実味豊かなマルベック種のワインは、ピッタリとハマるペアリングになることでしょう。
また、アルゼンチンのソウルフードとして有名なものに、チョリパンがあります。
牛肉で作られる極太のチョリソ(ソーセージ)と野菜をパンで挟んだシンプルな料理で、庶民の愛する下町料理といった風情のもの。軽食のためコーラやビールがお供の定番ですが、これもワインで合わせるなら、果実味豊かなマルベックのワインが良いでしょう。
【オーストラリア】キャンプの定番!オージー・ビーフのグリル
アウトドアやBBQでのステーキに最適な牛肉と言えば、日本でもオージー・ビーフは欠かせないものでしょう。
それもそのはず。オーストラリアは世界最大級の牛肉輸出国で、現在100カ国以上の国に牛肉を輸出していて、なかでも日本は最大の輸出相手国とのこと。食卓での登場回数が多いのも頷けます。
オージー・ビーフの特徴の一つが、賞味期限の長さ。優れた衛生管理と温度管理の徹底によるもので、アメリカ産の牛肉よりも2週間以上も長く、77日間もあるのだとか。また、オーストラリア産とアメリカ産は、肉質的にもよく比較されることがあります。例えば同じアンガス牛でも、食べ比べてみると、多くの人がその違いを感じるそう。
トウモロコシなどの穀物飼料を主に育てられるアメリカのアンガス牛は、やわらかで香りの少ない赤身肉が特徴。一方、牧草を食べて育ち、独特の香りがあると言われるのが、オーストラリア産。硬くて香りが強いと言われ、以前は敬遠されがちでしたが、グラスフェッドという言葉の広まりとともに、状況は色々と変化しているようです。
牛肉にはなかなか奥深い世界がありますが、オージー・ビーフをシンプルにグリルして味わうなら、やはりオーストラリアの赤を合わせて。代表品種であるシラーズのワインで、気の置けない仲間や家族と楽しみましょう。
【中国】チンジャオロースーやXO醬炒めにもワインを
国土も広く、ありとあらゆるものを食材としてしまう中国ではありますが、初めに紹介したスペイン同様、中国も料理食材となると豚や鶏は多いですが、意外と牛肉は少ない印象です。
日本人に人気の青椒肉絲(チンジャオロースー)も、中国においては豚肉を使用するのが一般的で、牛肉を使う場合、本当は「青椒牛肉絲(チンジャオニウロースー)」と表記されるのだとか。また、牛肉のXO醬炒めも日本の中国料理ではすっかり定着してきたように思います。
甘うま系の広東料理なら、熟成ボルドーがおすすめ。タンニンもこなれて果実味もいい感じに落ち着いたボルドーワインが、素晴らしいハーモニーを奏でます。
青椒肉絲も含め、広東を中心とした定番の中国料理をワインと一緒に堪能するなら、やはり横浜中華街へ!BYOもできるおいしいチャイニーズを1軒ご紹介しておきます。
【韓国】タン、ハラミ、カルビ…みんな大好き焼肉ディナー
「今日は肉を食べよう!」そんな時、ほとんどの日本人が頭に思い浮かべるのは、やはり焼肉ではないでしょうか。
現在の日本の焼肉スタイルの成り立ちやルーツには諸説ありますが、朝鮮半島、韓国の牛肉の食文化に多大な影響を受けていることは間違いないでしょう。
タン、ホルモン、ハラミ、ロース、様々な希少部位のカルビ…一頭の牛を隅から隅まで味わい尽くすような焼肉には、コストパフォーマンスが良い赤ワイン1本で通して、肉の味に集中するのも一興!そんな時は、牛脂にも負けない力強さがあるチリのカベルネ・ソーヴィニヨンが、強い味方になってくれるはずです。
BYOで焼肉を楽しむなら、ワインの持ち込み料がリーズナブルなところを。おすすめは、新宿三丁目にある「waigaya」。持ち込み料は1本あたり1,100円で、ヘルシーロースター導入のため、においがつかない焼肉屋としても人気です。
持ち込み(BYO)も活用して、旅するように牛肉×ワインを味わおう!
牛肉料理とワインをテーマに、ざっと8カ国を巡り、“旅するペアリング”をお届けしました。健全なる“食欲”は、健全なる身体に宿る!? 皆さんもちょっとお腹が空いてきましたでしょうか。
BYO(ワインの持ち込み)も活用すれば、牛肉×ワインのペアリングの楽しみ方がもっと広がるということで、途中でも色々とご紹介しましたが、最後に“手ぶらでBYO”を簡単に楽しむ方法をまとめた記事もご紹介しておきます。
■手軽で便利!【WINE@】を活用してBYOを楽しむ方法
WINE@とオンラインショップを活用すれば、手ぶらでBYOも可能!
出来うる限りの感染予防対策に努めながら、コロナに打ち克って、マスクなしで気兼ねなくワイワイ楽しめる日を心待ちにしつつ、牛さんに願いを込めて。
2021年の丑年を明るく過ごしていきましょう!