過去4回、ワインの味わいの特徴から品種のハナシをしてきました。
【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶには
【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶには
【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶには
【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】まろやかな酸の白ワインを選ぶには
赤ワインは“渋み”の強弱、白ワインは“酸味”の強弱が、品種によって異なることをお話ししてきましたが、この“渋み”や“酸味”の違いが「ボディ」にも影響します。
ワインを選ぶ際「ボディ」というワードをよく耳にするかと思いますが、今回はその「ボディ」について、品種のハナシを中心に説明したいと思います。
この記事の目次
「ボディ」とは?
ボディとは、ワインの味わいの幅や厚みを表現したものです。「フルボディ」「ミディアムボディ」「ライトボディ」と3段階で表現されることが多く、一般的には赤ワインの味わいの表現で使われます。
味噌汁と吸い物の違い、と考えるとわかりやすいでしょうか。どちらも味わいの深さはありますが、口の中に入れた時の味わいの感じ方は異なります。味噌汁は、口に入れた途端から味噌の味が口の中を支配し、徐々に出汁や味噌の発酵の香りなどが広がってきます。お吸い物は、最初のインパクトは薄いかもしれませんがじわりとうま味が広がっていく感じです。
味噌汁がフルボディにあたり、吸い物がライトボディとなります。どちらがおいしいとか、どちらが上質とか、どちらが高価とかはありません。ワインも同じです。単に味わいの“質”の違いを表現しているだけにすぎません。
ワインのボディを決める要素は、主に3つあり、「タンニン」と「甘味」と「アルコール度数」。この3つがどれも強いと、味噌汁のように、口の中に入れた途端にワインの味わいでいっぱいになります。どれか一つでも突出していると、その味覚が口の中で支配的になります。
逆にこの3要素が弱いと、吸い物のような感じで、最初のインパクトは強くないワイン、ということになります。
ただ、このボディには明確な基準があるわけではないので、同じワインでも飲む人によって感じ方が変わります。また、同じ品種でも、産地や造り手、ヴィンテージによっても異なりますので、あくまでも参考程度にご覧ください。
どっしり重い赤ワインを造る品種の代表①【カベルネ・ソーヴィニヨン】
フルボディのワインを造る代表品種がカベルネ・ソーヴィニヨン。逆三角形の水泳選手のような品種、ですね。この例えがわからない方は【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはをご覧ください(笑)
この品種は「タンニン」「甘味」「アルコール度数」ともにずば抜けて強いわけではありませんが、三者とも程よくしっかりあるので、フルボディのワインになることが多いです。特に温暖な地域で作られるものは、しっかり熟して糖度も上がるので、アルコール度数も高くなりがちで、かつ残糖感もあり、日照量の少ない地域のブドウに比べると、よりフルボディ感が強くなります。
どっしり重い赤ワインを造る品種の代表②【シラー(シラーズ)】
フルボディのワインを造る代表品種の2つ目がシラー(シラーズ)。野性味あふれる肉食男子のような品種、ですね。「肉食男子!?」と不思議に思った方はぜひ【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはをご覧ください!
この品種は、産地によってそのワインの特徴が大きく変わる品種です。フランスのローヌ地方北部のシラー主体のワインの中には、ミディアムボディに属するような味わいのものもありますが、フランスのラングドック地方のシラーやオーストラリアのシラーズは、「タンニン」「甘味」「アルコール度数」が高いものが多く、どっしり重めの赤ワインになります。
どっしり重い赤ワインを造る品種の代表③【ネッビオーロ】
ワインの色は淡く、外観からはフルボディとは思えない品種がネッビオーロ。ちょい悪ダンディのような品種、ですね。またもや不思議な例えで、頭に「?」が浮かんだ方は、ぜひ【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはをご覧ください。
この品種は、「甘味」「アルコール度数」はそれほど高いわけではありませんが、「タンニン」だけが突出して高いので、フルボディのワインと言われています。
ネッビオーロのメイン産地はイタリア北部のピエモンテ州。比較的冷涼な地域のためブドウの糖度はさほど上がりません。ですので、含む糖分は全てアルコールに変わっているのではないかと思うくらい残糖感はなく、アルコール度数も一般的なワインの13~13.5度と言った感じです。
さらりと軽い赤ワインを造る品種の代表①【ピノ・ノワール】
ライトボディの赤ワインの、一番代表的な品種がピノ・ノワール。箱入り娘の色白美人のような品種、ですね。………【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶにはをお読みいただくと「色白美人」の謎が解けます。
この品種は、「タンニン」「甘味」「アルコール度数」のいずれも比較的控えめ~標準的。もちろん産地にもよりますが、特にフランスのブルゴーニュ地方のピノ・ノワールは典型的です。もしかしたら、アメリカのカリフォルニア州のピノ・ノワールのワインだとミディアムボディに分類されるようなものもあるかもしれませんが、それでもミディアムボディの中でもライト寄りのワインでしょう。
さらりと軽い赤ワインを造る品種の代表②【ガメイ】
ここまでご紹介してお気づきかと思いますが、「渋みが効いた赤ワイン」はフルボディ、「渋み少なめの赤ワイン」はライトボディであることが多いです。【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶにはではご紹介しませんでしたが、このカテゴリに入る、多くの日本人になじみ深い品種をもう一つご紹介します。
11月の第三木曜日に解禁になり、早い人では木曜日の0時から口にするワインが「ボージョレ・ヌーヴォー」ですね。このボージョレ・ヌーヴォーが造られる品種がガメイです。
飲んだことがある人が多いと思いますので、味わいの想像はつくかと思いますが、軽やかで渋みは少なく、スルスル飲めてしまうワインです。これはできたてホヤホヤの若いワインだからではなく、ガメイがそういう品種だからです。
ガメイから造られるワインがすべてボージョレ・ヌーヴォーではなく、他の品種と同じく、数か月かけて造られ、熟成させたガメイのワインもあります。そんなワインは、ヌーヴォー(新酒)に比べるとしっかりと深みのある味わいですが、“ライトボディ”に該当するワインです。
程よい重さの赤ワインを造る品種の代表は?
マイナーな品種を除くと、前述のカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー(シラーズ)、ネッビオーロ、ピノ・ノワール、ガメイ以外から造られるワインは“ミディアムボディ”が多いです。
【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶにはでもご紹介したグルナッシュや、イタリアの代表品種であるサンジョベーゼ、スペインの代表品種のテンプラニーリョなどは、程よい飲みごたえのある重さを感じながらも、飲み疲れるほど重すぎないワインになります。
これらの品種から造られるワインの多くは、比較的日常的に飲まれるワイン。重くもなく軽くもない、ちょうどいい塩梅が、カジュアルに飲むにはちょうどいいのかもしれませんね。もちろん、これらの品種から高級ワインが造られることもあります。そういったワインだと、フルボディに近い「タンニン」「甘味」「アルコール度数」を備えるワインもあります。
白ワインのフルボディってどんなもの?
「ボディ」は主に、赤ワインに使われる言葉ですが、白ワインに対して使うこともあります。白ワインに「タンニン」はほとんどないので、「甘味」「アルコール度数」によって判断されます。
フルボディの白ワインには、温暖な地域で作られたシャルドネのワインで、樽熟成をしたものが該当します。口に含むと味わいの厚みを感じますが、気候の影響でブドウの糖度が上がりやすいのは、白ブドウでも一緒。甘味が果実味となって味わいの厚みを作り、木樽から抽出されるタンニンもそれに加わります。
また、【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】まろやかな酸の白ワインを選ぶにはでご紹介したゲヴュルツトラミネールやヴィオニエなど「酸の目立たないワインを造る品種」も、フルボディのワインになります。アルコール度数もそこそこ高くなりがちで、何より甘味を感じる果実の凝縮感を楽しめるワインです。
ライトボディの白ワインには、ソーヴィニヨン・ブランやミュスカデなど、軽やかで爽やかなものが該当します。【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶにはでご紹介した品種の中でも、ドライな味わいのワインがライトボディになります。やや果実味はありますが、辛口のリースリングもライトボディになるものが多い印象です。
ミディアムボディの白ワインは、冷涼地域、例えばブルゴーニュの北部のシャルドネが最も当てはまります。比較的温暖な地域のソーヴィニヨン・ブランも、果実味とアルコール度数が高くなりがちなので、ライトと言うよりミディアムかもしれません。
見た目と味わいは、だいたい比例する
実際にグラスに注がれたワインを見て味わいを想像する場合は、赤でも白でも、色が濃いワインはフルボディだと思っていいでしょう。色の濃さと味わいの濃さはほぼ比例します。たまにネッビオーロのように、淡い色合いなのにフルボディということもありますが例外的。
ただ多くは、ボトルを見て選ぶかメニューに載っている文字から選ぶ場合がほとんどです。ボトルの多くは黒や緑の色のついた瓶なので、中のワインの色まではわかりません。そんなときは、今回ご紹介した“品種”を参考に、好みの味わいや今日の気分や食べる料理に合わせて選んでみてくださいね。