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【ボージョレ】とは?魅力はヌーヴォーだけじゃない!今さら聞けない基本の話

2021.11.1

11月になるとニュースなどでも話題になる、ボージョレ・ヌーヴォー。毎年のように「今年の出来は過去最高」などの言葉が躍りますが、そもそもボージョレとは何か?ヌーヴォーとは何か?実はよく分かっていないというワイン初心者もいるはず。

そこで、今回は「なんとなく知っているけれど、詳しくは知らない」という方のために、ボージョレ・ヌーヴォーの基本をレクチャー。最後にボージョレのワインと一緒に楽しんでもらいたいペアリングチーズもご紹介します。

【ボージョレ】って、そもそも何?

「ボージョレ(Beaujolais)」は、ブルゴーニュ地方最南端にある地区。北緯約46度、マコンの南からリヨンの北まで約55kmにわたる産地で、夏は比較的暑く、冬は寒い半大陸性気候のエリアになります。

古代ローマの時代からの歴史がある産地で、主にガメイ種という黒ブドウから赤ワインが造られています。このボージョレ地区で造られる赤ワインが、ボージョレ・ワインであり、単に「ボージョレ」と呼ばれることもあります。

【ヌーヴォー】って、そもそも何?

「ヌーヴォー(nouveau)」はフランス語で「新しい」という意味。つまり、ワインでは穫れたばかりのブドウで造った新酒のことを指します。

新酒を通じてその年のブドウの出来はどうだったかを確認し、自然への感謝とともに、収穫を祝い、互いを労う…。新酒(ヌーヴォー)には、ブドウ栽培やワイン造りに携わるすべての人の想いがこめられてきました。

この収穫のお祝いは、世界的な風物詩へと発展。現在では、11月の第3木曜日がボージョレ・ヌーヴォーの解禁日と決められているため、日付変更線に近い日本では、欧米諸国よりも早くボージョレ・ヌーヴォーが飲める(本国フランスよりも8時間早く楽しむことができる!)ということもあり、一大ブームになりました。

このボージョレ・ヌーヴォー(ボージョレの新酒)が世界的に最も有名な新酒ですが、他の国にも同様に新酒の風習があり、以下の3つは特に有名なものなのでぜひ覚えておきましょう。

イタリア:ノヴェッロ(Novello)

ヴィーノ・ノヴェッロ(新酒)は10月30日が解禁日。ボージョレのような地区指定ではなく、イタリア全土で多種多様な新酒が造られています。

日本:山梨ヌーヴォー

山梨で造られる日本ワイン、甲州とマスカット・ベーリーAの新酒。販促とブランディングのためのキャンペーン施策として、11月3日を解禁日として展開されています。

オーストリア:ホイリゲ(Heuriger)

小さめのビールジョッキのようなグラスでワイワイと新酒を楽しむホイリゲ。旅行番組などでもおなじみの行事で、11月11日が解禁日とされています。ホイリゲは「今年の」という意味があります。

また、日本とは季節が逆転する南半球のチリやオーストラリアでも、解禁日や決まりはありませんが新酒は造られていて、最近では夏になると日本のワインショップでも“ヌーヴォー”を謳うチリやオーストラリアのワインを見かけるようになってきました。

【ガメイ】品種の特徴は?どんな香りと味わい? 

ボージョレ・ヌーヴォーの話に戻りましょう。ボージョレでは主にガメイ種という黒ブドウから赤ワインが造られています。

ガメイは、フランスのその他の地方やスイスなどでも栽培されていますが、世界的にもボージョレが有名産地。大きめの実が多く成る黒ブドウで、早熟な品種であるため、ヌーヴォー(新酒)を造るのにも適しているというわけです。

ほどよい酸味があり、あまり渋みがないのでワイン初心者でも飲みやすく、イチゴキャンディーやバナナのような香り、そして赤いベリーを思わせる果実味が特徴的。ボージョレ・ヌーヴォーのこのフルーティーで甘やかな風味は、独特の醸造方法が大きく寄与しています。

それはマセラシオン・カルボニック(MC、二酸化炭素浸漬法)というもので、収穫したブドウを破砕せずにそのままタンクの中で放置し、タンク内に二酸化炭素を充満させて発酵させるという手法です。

酸素との接触を極力なくすことで酸化が抑制され、発酵の過程であのイチゴキャンディーやバナナのような風味が生成。また果皮から溶け出した色素も酸化で褪色せず、あの鮮やかな色合いになるというわけです。

ボージョレはヌーヴォーだけ?熟成は楽しめないの?

ボージョレはフレッシュ&フルーティーな新酒(ヌーヴォー)が有名ですが、地区の生産量で言えば約1/3。実は熟成で奥深い味わいになる上質なワインも造られていて、「熟成させたガメイの良さを知ってこそ、ボージョレの真髄が分かるんだよ」なんていうワイン愛好家も少なくありません。

ボージョレ地区には原産地呼称のA.O.C.があり、赤以外にも白やロゼを造ることができますが、格上の「クリュ・デュ・ポージョレ」と呼ばれる10の指定畑(または区画)では、ガメイの赤ワインのみが造られています。

10のクリュ・デュ・ボージョレ(※北から順に)

サン・タムール(Saint-Amour)
ジュリエナス(Juliénas)
シェナス(Chénas)
ムラン・ア・ヴァン(Moulin-à-Vent)
フルーリー(Fleurie)
シルーブル(Chiroubles)
モルゴン(Morgon)
レニエ(Régnié)
ブルイイ(Brouilly)
コート・ド・ブルイイ(Côte de Brouilly)

ムーラン・ア・ヴァンモルゴン、コート・ド・ブルイイでは、特にポテンシャルのあるガメイのワインが造られていて、熟成とともに複雑な味わいが現れるものが多くあります。

2019 コート・ド・ブルイィ・レ・セット・ヴィーニュ/シャトー・ティヴァン
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
ガメイ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤
2014 ムーラン・ア・ヴァン・レ・ヴィエイユ・ヴィーニュ/ティボー・リジェ・べレール
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
ガメイ
タイプ
ミディアムライト辛口 赤

ワインの熟成について詳しく知りたい方は、そもそも「熟成」って何?熟成に向くワインとは?をチェック!

季節限定チーズ【モン・ドール】で、ボージョレと至福のペアリング

熟成したボージョレでもヌーヴォーでも、赤いベリーの果実味があって渋みが抑えられた赤ワインには、マイルドでクリーミーなチーズがおすすめ。なかでも、解禁シーズンが重なる「モン・ドール」なら秋冬の季節感も伴って、至福のペアリングが楽しめます。

モン・ドールの製造は8月15日から翌年3月15日に限定され、販売期間は9月10日から翌年の5月10日までとされています。チーズ専門店だけでなく、10月くらいになると、チーズの品揃えの良いスーパーやワインショップでも販売されます。

産地はフランス東部のアルプスエリア、フランシュ・コンテ地方のジュラ山脈一帯で、エピセア(モミの木の一種)の樹皮で巻き、エピセアの棚の上で熟成させます。無殺菌乳製で、熟成とともに表皮は淡いロゼ色になり、中身はカスタードクリームのようにとろりとやわらかく、スプーンですくって食べられるようになります。

スライスしたバゲットの上にのせて食べるのが定番ですが、半分くらい食べたらフォン・ドール(焼きモン・ドール)で楽しむのがおすすめ。

作り方はいたって簡単!

STEP1 食べかけのモン・ドールの中に、ニンニクのみじん切り少々(チューブのニンニクでもOK)と白ワインをちょっとだけ入れて軽く混ぜる。

STEP2 パン粉を振りかけ、木箱が焦げないように周りをアルミホイルでくるんで、オーブントースターで約10〜15分加熱して完成!

食べるときにお好みで黒胡椒を少しふってもOK。バゲットやクラッカーですくって食べながら、ボージョレ・ヌーヴォーを一口!といきましょう。

11月の第3木曜のヌーヴォー解禁日はもちろん、クリスマスシーズンにもおすすめのペアリング。モン・ドールとともに、ボージョレのワインをさらにおいしく楽しみましょう!

 

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佐野 嘉彦
ニューヨーク発祥のレストラン評価ガイド『ZAGAT』日本版の編集マネージャー、ワインスクールでの講師、料理通信社での勤務、チーズに特化したWebマガジンの編集長を経て、現在「sembrar(センブラール)」を屋号とし、食を中心とした情報発信を行っている。JSA認定ワインエキスパート、NPO法人チーズプロフェッショナル協会幹事、Guilde Club Japon認定コンパニョン・ド・サントュギュゾン、フランスチーズ鑑評騎士(シュヴァリエ)。
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