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【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】まろやかな酸の白ワインを選ぶには

2021.3.22

オース

「ワインは酸っぱいから苦手」という声を時々聞きます。ワインは、酒石酸・リンゴ酸・クエン酸という3つの酸を含むブドウが原料なので、酸のないワインはありません。が、穏やかな酸味で心地よい飲み口のワインはたくさんあります。

酸味を敏感に感じる方は、前回【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶにはでご紹介した品種は避けるとして(笑)、今回ご紹介する、酸味の少ないブドウ品種・ワインを選んでみてはいかがでしょうか。

程よい酸のあるワインを造る品種の代表①【シャルドネ】

クラスの中で、派手めなグループの中でも楽しそうに振る舞うし、地味で真面目そうなグループに入ってもなじんでいる。自然に誰とでも仲良くなれる協調性の高い女の子で、当然クラスの人気者。…そんなイメージを抱かせる品種がシャルドネです。

言わずと知れた白ブドウの代表品種。ワインを知らない人でも大概知っている超有名品種。

ブドウ栽培可能地域であれば、ほぼどこでも作れるという環境適応能力抜群な品種。なので、世界中で栽培されているブドウです。ただ、生産地域の土壌や気候によって、キャラクターを変える変幻自在ぶり。

例えば、ブドウ栽培可能地域の北限に近いフランス・ブルゴーニュ地方のシャブリ地区では、その土壌の影響もあって、比較的キリリとしたワインになります。逆に日照時間が長く、雨も少ないアメリカ・カリフォルニア州では、洋梨やパイナップルを思わせるフルーツ感たっぷりのふくよかなワインになります。

原産地は、ブルゴーニュのマコネ地区と言われていたり、はたまたレバノンと言われていたり、未だに定まっておらず研究中ですが、世界のトップ生産量にして全生産量の25%を占めるのがフランス、主にブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方になります。

実はこのシャルドネ、本当は酸度の高いブドウなんです。ブドウの酸は、熟す直前が最も高く、そこをピークに熟度が増すにしたがって酸度が下がっていくもの。シャルドネももちろん、その例に洩れませんが、その酸度が下がりにくい品種なんです。

ですが、ワインを醸造する過程で、シャープな酸をまろやかにする工程が入ることが多々あります。この工程は、主に赤ワインの醸造の際に行われる“マロラクティック発酵(MLF)”というもの。白ワインで意図的にMLFを行うのはシャルドネだけ、と言っても過言ではありません。

MLFは、乳酸菌の働きにより、ブドウに多く含まれるリンゴ酸を、よりまろやかな酸である乳酸に化学変化させる醸造工程。もちろんシャルドネでもMLFをしないワインもありますが、ごくわずか。そんなワインはシャープな酸が楽しめ、すっきりとした味わいです。

ですが、多くのシャルドネのワインは、MLFしています。“シャルドネ王国”のブルゴーニュ地方では、していないワインを見つけるのが難しいくらい。ですので、ブドウとしては酸度が高めな品種ですが、ワインになるとまろやかな酸になるので「程よい酸のあるワインを造る品種の代表」としてご紹介しています。

ちなみに、マロラクティック発酵については、ワインの造り方から見る、色合いと味わい~番外編・醸造工程を“もうちょっと詳しく”学ぼう!でも書いていますのでご覧ください。

2018 ブルゴーニュ・シャルドネ/トマ・モレ
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
シャルドネ
タイプ
ミディアムライト辛口 白
2017 ムルソー・レ・グラン・シャロン/フィリップ・ブズロー
産地
フランス・ブルゴーニュ地方
品種
シャルドネ
タイプ
ミディアムライト辛口 白

程よい酸のあるワインを造る品種の代表②【セミヨン】

はちみつがたっぷりかかった、大好きなパンケーキを目の前にして嬉しそうににんまり。好きな色はピンクやクリーム色など明るいパステルカラー。ゆるフワな印象のかわいらしい女の子。…そんなイメージを抱かせる品種がセミヨンです。

マイナー品種かもしれませんが、この品種をメインに造られるワインには、世界三大貴腐ワインの筆頭になるワインがあります。

貴腐ワインとは、極甘口のデザートワインです。貴腐菌がブドウに付いて果皮に穴が開き、そこから水分だけが抜けて凝縮した糖分が残った果肉を搾ってワインにします。フランス・ボルドーのソーテルヌが最も有名な貴腐ワインの産地。貴腐ブドウとなったセミヨンを主体に、ソーヴィニヨン・ブランやミュスカデルというブドウをブレンドして造られます。

ソーテルヌ以外のボルドーでは、セミヨンとソーヴィニヨン・ブランをブレンドした辛口ワインが造られます。辛口のワインでも、はちみつ、もしくは花の蜜のような香りに、洋梨や蜜の入った赤いリンゴ、熟成したワインだとドライフルーツのような香りが漂います。香りは甘やかですが、味わいは甘くなく、まろやかな酸が最後引き締めます。

ボルドー以外で有名な産地は、オーストラリアのシドニーにほど近い、ニューサウスウェールズ州のハンター地区。「ハンター・セミヨン」と呼ばれるほど、ボルドーとはまた違った造り方で、現地で親しまれているワインです。

ボルドーでは、酸度の低いセミヨンの味わいのバランスをとるために、酸度の高いソーヴィニヨン・ブランなどとブレンドします。一方ハンター地区では、セミヨン100%で造るのが伝統的。そのためブドウは、酸度が下がる前に収穫し、適度な酸があるので長期熟成も可能になり、10年前後熟成させたワインもあります。

産地によって異なる表情を見せるセミヨンですが、品種の特徴はどちらもしっかり現れています。蜜っぽい香りに穏やかな酸。親しみやすい味わいです。

2015 エール・ド・リューセック
産地
フランス・ボルドー地方
品種
セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 白

2017 ソーヴィニヨン・ブラン・セミヨン/ヴァス・フェリックス
産地
オーストラリア
品種
セミヨン、ソーヴィニョン・ブラン
タイプ
ミディアムライト辛口 白

程よい酸のあるワインを造る品種の代表③【トロンテス】

本当はどこぞの令嬢なのに、人を楽しませることが得意で大好き。外見からはお嬢様風情は全く感じず、いつも陽気で、大きな声で笑っている。…そんなイメージを抱かせる品種がトロンテスです。

2010年前後、アルゼンチンからの輸入量が増えて、日本でも話題になったブドウ品種。アルゼンチンといえば、黒ブドウの“マルベック”が有名ですが、「白ワインも“アルゼンチンならでは”のワインがあるんだよー、おいしいよー」と世界に向けてPRしたのが、このトロンテスです。

アルゼンチンが原産で、アルゼンチン以外ではほとんど生産されていない品種。とにかく華やかで豊かな香りが特徴的で、白桃や白バラ、ジャスミン、パイナップルにオレンジの皮といった、複雑な香りが楽しめます。

味わいも、ジューシーでフルーティ。産地は比較的標高がある所なので、酸はそこそこありますが、果実の凝縮感が前面に出ているので、シャープさは感じないでしょう。食用のマスカットを思わせる風味もあるので、親しみやすいワインです。

酸が目立たないワインを造る品種の代表①【ゲヴェルツトラミネール】

朗らかに微笑み、人当たりも柔らかく、特に同性から慕われる人柄。一度出会ったら忘れがたい印象を与え、そのたたずまいからも高貴さがしっかり漂う。…そんなイメージを抱かせる品種がゲヴェルツトラミネールです。

カタカナで書かれても、なかなか発音が難しいこの品種名は、「スパーシーなトラミナー」という意味の品種名。Gewürz(ゲヴェルツ)がドイツ語で「スパイシー」とか「香辛料」という意味で、Traminer(トラミネール)がイタリア北部原産のトラミナーという品種名からきています。

「スパイシー」というその名の通り、白コショウのような香りがほんのりありますが、ゲヴュルツトラミネールといえば、その特徴は何といっても“ライチの香り”。ワインの香りの表現は、慣れていない人には若干わかりにくいものですが、ゲヴュルツトラミネールの“ライチ”はおそらく誰もがわかる香りでしょう。はっきりと“ライチ”なんです。

ライチの他に、白バラやユリ、マスカットやパッションフルーツの香りが混ざり、その香りの量は圧倒的。…そう、前段でご紹介した「トロンテス」に近しい特徴を持つ、アロマティックな品種です。

トロンテスよりも豊かな香りのワインが多く、香りに輪郭を感じます。ジューシーな味わいはトロンテスと同程度ですが、酸はよりまろやか。口当たりはやさしく、そして香りに癒されるので、女性からの人気が高い品種です。

ルーツはイタリア北部の「トラミナー」と言われていますが、ゲヴュルツトラミネールの生産地域としてはフランスのアルザス地方が圧倒的に有名で生産量も多い。栽培が難しく、気候を厳密に選ぶため、限られた地域でしか栽培されていません。

そんな品種ですが、実は日本の北海道でも栽培されているんです。冷涼で雨が少ない地域が向いていると言われるゲヴュルツトラミネール。個性的で強い香りは、料理とのペアリングは「どうなんだろう?」と思われがちですが、中華やエスニックなどの香辛料の香りが立つ料理との相性は抜群です。

2014 ゲヴェルツトラミネール・エステート/ファミーユ・ヒューゲル
産地
フランス・アルザス地方
品種
ゲヴェルツトラミネール
タイプ
ミディアムフル辛口 白

酸の目立たないワインを造る品種の代表②【ヴィオニエ】

華やかなドレスを着て舞台に立ち、劇場の隅々まで澄んだ歌声を響き渡らせるオペラ歌手。しなやかな肉体は、その歌声を響かせるための装置。ちょっとでもどこかの調子が悪いと、思った通りの歌にならなくなってしまうので、常に厳密に厳格に管理されている。…そんなイメージを抱かせる品種がヴィオニエです。

出身は、フランスのローヌ地方の北部。程よく温暖な地域で作られる品種らしく、厚みのある味わいと穏やかな酸が特徴。しかしそれよりも何よりも、このヴィオニエも、白桃やアプリコット、ブラッドオレンジやキンモクセイなどの豊かで華やかな香りが特徴です。

比較的酸が穏やかな品種は「アロマティック品種」と呼ばれるものが多い印象。ただ、前段のゲヴュルツトラミネールに比べると、豊かな香りではあるけれど繊細。醸造途中で酸素に触れる量が多いと香りが飛んでしまい想定していたワインにならなかったりと、ブドウ栽培だけではなく醸造工程も非常に難しい品種なんです。

メイン産地は原産地のローヌ地方の北部。ヴィオニエ100%のワインを造りますが、実は、この地で造られる、シラー主体の赤ワインにブレンドされることもあるんです。ヴィオニエを20%程度ブレンドすることによって、どっしりとしたシラーの赤ワインを、エレガントで上品なワインに仕上げます。シラーに関しては【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶにはをご覧ください。

他にも、フランスでは、さらに南部のラングドック地方でも栽培され、オーストラリアやアメリカなど、割と温暖な地域に広がっている品種です。

2016 レ・コントゥール・ド・ドポンサン・ヴィオニエ・ヴァン・ド・ペイ・デ・コリンヌ・ローダニエンヌ/フランソワ・ヴィラール
産地
フランス・コート デュ ローヌ地方
品種
ヴィオニエ
タイプ
ミディアムフル辛口 白

産地や気候、造り方や飲む人の体調によっても変わる“酸”や“酸味”

2回にわたって、白ワインの酸の強弱のハナシをしてきました。品種ごとに比較的“高めの酸”“低めの酸”というのは、あることはありますが、赤ワインの“タンニン”と違って“酸”は、産地や気候、造り方に依存することが大きい成分です。

広く栽培されている品種では、同じ品種でも、冷涼な地域の方が温暖な地域よりも酸が高くなります。その最たる例が「シャルドネ」です。シャルドネは、北緯48度にあるシャブリ地区から、北緯32度にある日本の熊本県でも作られています。緯度だけで冷涼か温暖かは図れませんが、これだけ異なる地域で作られるわけですから、ワインの味わいが異なるのも不思議ではありません。

気候が酸度に影響する理由は、ブドウに豊富に含まれるリンゴ酸は、高温により分解されるため。温度と酸度が関係するということは、年によっても変わるということ。ブドウが育成する夏の時期が、猛暑の年と冷夏の年でも酸度が変わるのです。

造り方というのは、シャルドネの項でもお話しした「マロラクティック発酵(MLF)」が代表的な例です。意図的にMLFを行うのはシャルドネぐらい、とお話ししましたが、乳酸菌は自然界に存在しますので、意図していなくてもわずかなMLFが行われることは度々あります。

そして酸味は、飲む側の体調によっても感じ方が変わります。肉体的に疲れている時、人は酸味を感じにくいようです。ですので、疲れている時に「おいしい!」と思って飲んだシャープな酸を持つ白ワインが、疲れていないときには「酸っぱすぎる!」と感じることもあるかもしれません。

そんなことも参考にしながら、おいしいワイン選びをしてみてくださいね。

 

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WINE@MAGAZINE編集部
すべてのワイン好きのために、東奔西走!ワイン初心者のお悩みを解決したり、ワイン通のためのお役立ち情報を取材したり…と、ワインの世界を日々探究中。plus wine, precious life!
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