寒い冬。ポカポカと体を芯から温めてくれる鍋料理は、家ごはんの定番です。ただ“鍋料理”と一口に言っても、そのバリエーションは多彩。寄せ鍋やしゃぶしゃぶにすき焼き、またたらちり鍋や石狩鍋など、ご当地グルメ的なものもあります。
世界各国に目を向ければ、韓国のチゲ、中国の火鍋やピェンロー鍋、ベトナムのトムヤムクンなどは、今や日本でも人気の鍋料理。反対に、近場に目を向ければ、コンビニなどでも手軽に入手でき、“冬のファストフード”とも言えるおでんも鍋料理の一つですし、海鮮トマト鍋にカマンベールミルフィーユ鍋なんていう進化系の鍋料理もあります。
具材も調味もさまざまな鍋料理に合わせるワインは、赤ワインと白ワインの”いいとこどり”をしたロゼワインがおすすめ!そこで今回は、様々な鍋料理とそれにぴったり合うロゼワインをご紹介します。
この記事の目次
【寄せ鍋】さわやかな酸があるサンセールのロゼ
その土地、家庭ごとに多種多様な具材で作られる寄せ鍋。昆布や鰹節など出汁の素材も様々ですが、出汁のうま味をたっぷりと染み込ませていただく、日本ならではの繊細な料理とも言えます。その日の具材で作る寄せ鍋のみならず、たらちり、鶏すき、カニすき、しゃぶしゃぶなど、あっさりとした味つけで、ポン酢でいただくことが多い鍋には、さわやかな酸があるロゼを合わせましょう。
白ワインが有名なフランス中部のサンセール地方ですが、ベリー系の香りと新鮮でフレッシュな酸、そして適度な熟度を備えた果実味が楽しめるロゼワインも造られています。
【すき焼き】オーストラリアの滋味深いロゼ
すき焼きは、大きく分けると2タイプあります。「割り下」と呼ばれるみりんや出汁、醤油、砂糖などで作るだし汁で具材を煮ていく関東風と、まさに肉を“焼き”ながら砂糖や醤油などで味つけし、野菜で水分は調節していく関西風。いずれにしても甘辛く濃いめの味わいなので、ワインも濃醇な赤ワインを合わせることが多いですが、“食べ疲れしないペアリング”としておすすめしたいのは、比較的濃いめのオージー・ロゼ。
赤いベリーの風味が豊かで、後味にほんのりスパイシーさがあるものがベストチョイス。古樹のブドウを使用した滋味深い味わいが素晴らしい1本をここではご紹介します。造り手は、オーストラリアの名醸地バロッサ・ヴァレーの有名な生産者です。
【ピェンロー鍋】夕陽のように美しい辛口ロゼ
世界のちょっとめずらしい鍋料理も作ってみると、意外と簡単。家ごはんもなんだか楽しいものになります。中国のピェンロー鍋は、白菜、鶏肉、豚肉、春雨を干し椎茸のだし汁でひたすら煮るという鍋料理で、フレッシュな胡麻油で調味するのが、風味の決め手。食欲をそそる一品です。
そんな風味を邪魔せず、むしろ活かしてくれるのは、フレッシュな味わいの辛口ロゼ。1本ご紹介したいのは、大統領の就任式でも振舞われたこともあるくらいの名門ワイナリーのもの。“ゴージャス”という名前にふさわしい、まるで夕陽のような美しく華やかな色合いもステキな南アフリカのロゼです。
【ポカポカ&ヘルシーな羊肉の鍋】力強いローヌのロゼ
世界中で食はライト化の傾向にあり、ヘルシーさでも話題に上る羊肉を使った鍋料理もチェックしておきましょう。羊肉は、タンパク質(アミノ酸)のバランスに優れ、脂肪の燃焼によるエネルギー生成に欠かせないL-カルニチンというものが、食肉のなかで最も豊富。また、そのL-カルニチンの生成に必要なビタミンB群、鉄分も含まれているというのですから、家ごはんでも取り入れてみたい食材です。
火鍋やジンギスカン、しゃぶしゃぶ…おいしく体を温め、ヘルシーという羊肉の鍋には、ロゼの中では濃い、フランス・ローヌのタヴェル・ロゼがぴったり。ザクロやチェリーの芳醇な香りに、豊かな果実味。まさに、コクと力強さが感じられます。
【おでん】やわらかな果実味があるピュアなロゼ
コンビニやレトルトでも定番となっているおでんは、やはり寒い時期には欠かせない、日本の身近な鍋料理と言えるでしょう。関西では「関東炊き(かんとだき)」とも呼ばれることもあり、全国各地にも“ご当地おでん”があるので、それぞれに合うロゼを探求するのも楽しそうですが、ここでは一般的なおでんに合ってくれるロゼを。
深みがありやわらかい果実味にピュアなミネラル感が調和した、フランス・ラングドック地方の1本で、余韻にやさしい果実の甘みを感じます。8世代にわたる家族経営のワイナリーが造るこのロゼは、いろいろなおでん種と試してほしいけれど、出汁がしみ込んだ大根や白はんぺんとの相性が最高です。
【海鮮トマト鍋】酸味&コク旨と調和する変化球ロゼ
栄養価たっぷりの海鮮トマト鍋。魚介類やトマトのグルタミン酸によるうま味がたっぷり感じられる味わいで、出汁や醤油を隠し味に少し加えてもおいしいですし、最後にチーズを加えれば洋風鍋の感じがさらに増します。
いずれにせよ、トマトの酸味と海鮮のうま味に合わせて、フレッシュですっきりだけど、コクがあるワインがおすすめ。ドライだけれど後味にほんのり果実由来の甘味を感じ、酸味やうま味が調和するオーストラリアのサンジョヴェーゼから造られたロゼは、海鮮トマト鍋のおいしさを一段引き上げてくれるに違いありません。
【カマンベールミルフィーユ鍋】キュートな風味のロゼ
昨今のチーズ人気とともに生まれたのが、カマンベールミルフィーユ鍋。白菜と豚肉をミルフィーユ状に重ねて鍋いっぱいに敷き詰めた真ん中に、カマンベールチーズを丸ごとボンッ。見た目にも楽しい、言わば“ニューウェーブ系”の鍋料理です。
カマンベールチーズのコク、白菜&豚肉のうま味が調和したこの鍋には、イチゴやラズベリー、チェリーなどを感じる、さわやかな酸&キュートな果実味のロゼワインが好相性。まるで鍋の薬味のような役割となって、鍋のうま味を引き立ててくれます。
“鍋ロゼ”を、冬の家飲みのテーマにしてみよう!
野菜も肉も魚などをぐつぐつ煮る鍋料理は、手軽に楽しめる家ごはん。でも、スッキリ白ワインだと何か物足りなさを感じるし、濃厚赤ワインだとお鍋の味わいがわからなくなってしまう…だから、”いいとこどり”のロゼワインが活躍してくれるわけです。
ただ「ロゼワイン」と一口に言っても、赤ワインに近い、香りも果実味もしっかりあるタイプから、白ワインに近い、酸も効いたスッキリしたタイプまで、様々なキャラクターがあることも、今回少しお分かりいただけたかと思います。
料理とワインの組み合わせ(ペアリング)には、基本法則のようなものがあります。中には、ものすごい相乗効果を発揮して「マリアージュ」とも言うべき現象が口内で起こります。
■詳しく知りたい方は みんなが言う「マリアージュ」って何? ペアリングとどう違う? 3原則&定番も一挙紹介!をチェック!
“鍋ロゼ”の場合は、味わいの強弱を合わせることと、酸味と果実味の度合いがペアリングのポイント。さらに、アクセントとなるチャーミングな香りを鼻で楽しみ、キレイな色を目でも味わうことができれば、あなたはかなりのワインの通と言えるでしょう。
ペアリングの答えは一つではありません。今回ご紹介した7種の組み合わせを参考に、あなたが食べたい鍋料理に「これかな?」と思うロゼワインを組み合わせて、ほっこりした家ごはんをお楽しみください。