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【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】土着品種って知ってる?限られたエリアで作られるレア品種

2021.6.28

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】ブドウ品種の栽培面積ランキングTOP5をご紹介!で、栽培面積の広いTOP5の品種をご紹介しましたが、では逆に、栽培面積が小さい(狭い)ブドウの品種が気になるのが人の常(ですよね?)。

栽培面積が小さい(狭い)と言っても、その品種から造られるワインが市場に出回らないほどの超マイナー品種ではなく、お目にかかる頻度は少ないかもしれないけど日本にいても味わうことができるレベルの、栽培面積が小さい品種のランキングをご紹介します。

これまでの記事での人気品種を制覇してみるも良し、今回のレア品種の魅力を探求するも良し、様々なワインを味わうきっかけになればと思います。

栽培面積1,000ha未満!その①【フラッパート】

【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶには でもご紹介した、渋みも少なくやさしい果実味を楽しめるフラッパートは、シチリア島のごく一部のエリアで栽培される黒ブドウ。わずか750haしかありません。舞浜の“ねずみの国”一帯の3.5倍ぐらいの大きさで、東京23区で一番小さい台東区よりも狭い面積です。

フラッパートからは、ラズベリーやクランベリーを思わせる、赤いキュートな果実の香りで、“ボディ”で言えばライトボディの軽やかなワインが造られます。

ピノ・ノワールのように酸味をやや感じるワインになりますが、ピノ・ノワールよりも明るい、陽気な印象。まさに、シチリアの風土を思わせる味わいで、トマトソースのパスタやカポナータなど、トマトを使った料理が食べたくなるワインです。

ただし、フラッパート100%のワインはレア。こだわりのイタリアンレストランやワイン専門店では時々見かけますが、実は、補助品種としての立ち位置の方が多い品種です。

例えば、シチリア州(島)で唯一となるDOCG(イタリア最上位の原産地呼称)ワインであるチェラスオーロ・ディ・ヴィットリアで使われています。同じくシチリアならではの品種であるネロ・ダヴォラが主体で、フラッパートは30~50%ブレンドされています。

栽培面積1,000ha未満!その②【モスホフィレロ】

超が付くほどのワイン好きや、長年ソムリエをやっている人でもなかなか存じ上げない(笑)品種がモスホフィレロ。しかし、改めてソムリエ教本をめくってみると、ちゃんと載っています。

初めに「日本にいても味わうことができるレベルの…」とお伝えしてしまいましたが、このモスホフィレロは例外。滅多にお目にかかれない品種のワインです。

ギリシャのペロポネソス半島や地中海の島々の、比較的標高のある地域で栽培される白ブドウで、その面積は930ha。できるワインは、甘やかなフローラル系の香りと爽やかでしっかりした酸が特徴です。「ミュスカとソーヴィニヨン・ブランを足して2で割ったような雰囲気」と表現する人もいるような味わいです。

栽培面積1,000ha未満!その③【サグランティーノ】

長靴の形をしたイタリア半島で、唯一の海なし州であるウンブリア州。半島部分のちょうど中心に位置しています。このウンブリア州がメイン産地であるサグランティーノも、栽培面積990haという限られたエリアで栽培されるレア品種ですが、モンテファルコ・サグランティーノというイタリア最上位の原産地呼称(DOCG)ワインが造られる黒ブドウ品種です。

サグランティーノは、とても個性的な品種。ポリフェノール含有量がとても豊富で、ワインの色みも味わいもとにかく濃厚。桑の実やプルーンにスパイスのニュアンスも感じる香りで、しっかりしたタンニンを有するワインになります。

モンテファルコ・サグランティーノは長い間、陰干ししたブドウを使って造る甘口ワインが主流でしたが、1993年に辛口ワインもDOCGに認定されました。ちょうどこの頃、日本でもこのワインが注目を集めたのですが、それは、元日本代表のサッカー選手が“ペルージャ”に在籍していたからかもしれません。「モンテファルコ」は、ウンブリア州のペルージャ県にある1つの村の名前です。

栽培面積2,000ha未満!その①【フィアーノ】

風光明媚な地中海沿岸の街、ナポリが州都のカンパーニア州や、そこから南方にある島、シチリア島で古くから栽培されてきた白ブドウ。どれくらい古いかと言うと、古代ローマ時代にも栽培されていたとか、もしかしたら古代ギリシャ人も栽培していたかもしれないと言われる品種です。

古代ローマ時代に「ミツバチに愛された」と言う意味の“アピアーヌム”と呼ばれていたワインは、このフィアーノから造られたワインだと言われており、糖度の高い果実にはミツバチが群がってきます。

オレンジピールやアカシアなどの花の香り、さらにヘーゼルナッツのニュアンスも感じられ、香り豊かな華やかな印象のワイン。温暖な地域のブドウは酸度が下がりやすくなりますが、フィアーノは、イタリア南部で造られるにもかかわらず酸もしっかりあるワインになります。ミネラルとコクを併せ持つ厚みのある味わいで、フィアーノ・ディ・アヴェッリーノというDOCGワインが造られています。

栽培面積1,370ha。生産性の低さから一時絶滅が危惧された品種ですが、カンパーニアの老舗ワイナリーの活躍もあり見事に復活。わずかですが、オーストラリアでも栽培されています。

栽培面積2,000ha未満!その②【ブラケット】

ブラケットは、イタリア北部のピエモンテ州がメイン産地の黒ブドウブラケット・ダックイという微発泡の甘口赤ワインが造られる品種です。赤のスパークリングワインと言えば、同じイタリアのランブルスコが有名ですが、実はブラケット・ダックイの方が格が上のDOCGワインです。

栽培面積1,460haと小さく、生産量も限られているので、地元消費が多いゆえに知名度ではランブルスコに引けを取っている感じですね。ただ、ブラケット・ダックイの歴史は古く、ジュリアス・シーザーがクレオパトラへの献上品にしたという逸話もあるくらいです。

バラやスミレと言ったアロマティックな香りが特徴で、ポリフェノールが豊富なワイン。軽やかな甘さと酸味のバランスが絶妙で、アルコール度数も低めなので、アペリティフにもってこいのワインです。

栽培面積2,000ha未満!その③【ピクプール】

ちょっとかわいらしい名前の品種、ピクプールは、フランス・ラングドック地方の海の近くで栽培される白ブドウ。「舌を刺す」という意味を持つ品種名の通り、しっかりとした酸とミネラルが特徴のワインが造られます。

オレンジやグレープフルーツと言った柑橘系やハーブの爽やかな香りがしっかりあり、味わいも、温暖な地域らしい果実味に加えて、温暖な地域らしからぬしっかりした酸とミネラルを感じます。

ピネ村周辺の地域で、ピクプールから造られるワイン、ピクプール・ド・ピネは牡蠣をはじめ魚介との相性が抜群。それもそのはず、このピネ村近くにあるトー湖は、牡蠣の名産地なんです。牡蠣のみならず、お寿司との相性もいい。イカのフリットとも好相性。

栽培面積1,490ha。日本でもよく見かけるワインなので、この面積の小ささは意外でしたが、日本人の口に合う味わいだから、積極的に輸入されているのかもしれませんね。

栽培面積2,000ha未満!その④【アシルティコ】

ワイン大国・フランスよりも、ワイン造りでは長い歴史を持つギリシャ。ギリシャから、イタリア、さらにフランスにブドウが広がったとされていますが、そのギリシャを代表する白ブドウのひとつにアシルティコがあります。

サントリーニ島などエーゲ海の島々が主な産地。海風がとても、とても強く吹く産地で、その強い風からブドウの育成を守るために樹を低く仕立て、枝をらせん状に巻きバスケットのような形の樹に白ブドウがなります。ブドウの樹も、栽培する環境によっていろんな形に仕立てられるんですね。

柑橘系のフレッシュな香りと豊かな果実味、しっかりした酸に加え、岩塩のような塩味も感じるワインが造られます。アルコール度数も高めで、白ワインにしてはしっかりパワフルな味わい。ブドウ樹の仕立てだけでなく、ブドウそのものもなかなか個性的です。

栽培面積1,700ha。ほぼギリシャで造られますが、近年様々な品種栽培にチャレンジしているオーストラリアでも一部栽培されています。

栽培面積2,000ha未満!その⑤【クシノマヴロ】

同じくギリシャを代表する、黒ブドウで有名なのがクシノマヴロ。Xino(クシノ)が酸、Mavro(マヴロ)が黒い、つまり「酸のある黒ブドウ」と言う意味の品種名の通り、しっかりした酸とタンニンが特徴。その含有量は、イタリアのバローロを造るネッビオーロに匹敵します。ですので、クシノマヴロから造られるワインの中でも、長期熟成させた上質なものは、バローロに肩を並べる品質と言われます。

クシノマヴロから造られるワインは、大きく分けて2つのタイプがあり、ほのかに酸化熟成香が漂う、エレガントタイプのワインと、豊かな果実味を活かした肉厚タイプのワイン。どちらのタイプも、クシノマヴロの個性がはっきりと映し出されたワインとして評価が高いです。

栽培面積1,970ha。これはもう、ギリシャでしか栽培されていないと言っても過言ではない品種でしょう。

レアな土着品種の良さを知る

敢えて産地を限定してピックアップしたわけではないのですが、今回ご紹介した品種8種類のうち7種類がイタリア、ギリシャの土着品種。ピクプールもフランスではありますが、地中海に面したラングドック地方の土着品種です。

これは原産地の品種を、また原産ではないけれども昔から地元で作られてきた品種を、大事に大事に守り育ててきている、ということにほかなりません。そして、そこの地域“だから”できる個性を、ブドウのマイノリティとして価値を認めている、とも言えるでしょう。

ワインを生産する国は、何ヶ国あるのかわからないくらい、たくさんあります。古代や中世からブドウ栽培やワイン醸造が行われてきたヨーロッパの国々では、その土地ならではの品種、まだまだ知られていない多くの品種から、ワインが生まれています。

特にイタリアやギリシャは、こういった土着品種の種類が多いことで有名な生産国です。日本でもこれらの品種のワインを目にする機会があったら、是非味わってみてください。きっと、ワインの奥深さに触れることができるでしょう。

 

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wine@MAGAZINE編集部
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