TOP 家飲みをもっとおいしく 【イタリアワイン&チーズの王様】3種の楽しみ方とプロ直伝のパスタレシピ
家飲みをもっとおいしく

【イタリアワイン&チーズの王様】3種の楽しみ方とプロ直伝のパスタレシピ

2021.9.20

ワインの最良の友と言えば、チーズ。そのままでつまみにもなれば、料理にも使われ、ワインをよりおいしく楽しむことができます。ワインもチーズもたくさんの種類がありますが、その多様性と日常性を考えるとイタリアは欠かせません。

イタリアは南北に細長く伸びた半島と島の国で、面積は日本の北海道以外の部分とほぼ同じくらい。山海の幸を楽しむ食文化がどことなく日本に通じていることも、私たち日本人を惹きつけるポイントになっているのでしょう。

イタリアチーズの歴史は、約5,000年。種類は実に500とも600とも言われています。そんな中、“イタリアチーズの王様”と呼ばれるのが「パルミジャーノ・レッジャーノ」です。

そこで今回は「イタリアワインとパルミジャーノ・レッジャーノ」がテーマ。「手軽に家飲みのレベルが一段アップする!」という楽しみ方を、チーズプロフェッショナルで、イタリア現地取材の経験も豊富な編集長の佐野がお届けします。

【かち割りでツマむ】ちょい足しでさらにアレンジ

パルミジャーノ・レッジャーノは、長期熟成のハードチーズ。最低12ヶ月の熟成が必要ですが、日本でよく見かけるのは24ヶ月、つまり2年ほど熟成したものになります。

ワインのつまみでシンプルに楽しむなら、なんと言っても「かち割り」がおすすめです。夏の甲子園で有名になった「かち割り氷」に似た形状のカットなので、そう呼んだりしますが、氷ほど硬くないので切り方は簡単!

小さめの包丁の刃先を縦に入れて、少しひねるようにするだけで、ゴロッとしたカットができます。

写真は、パルミジャーノナイフまたはアーモンドナイフと呼ばれる専用ナイフでカットしているものになりますが、家にある小さめの包丁で大丈夫です。

これにバルサミコを垂らすだけで、高級感あるおつまみに変身!

さらに、クルミなどのナッツを添えてもいいですし、生ハムがあれば最高!中でもパルマハム(プロシュット・ディ・パルマ)やクラテッロは、パルミジャーノ・レッジャーノと同郷、エミリア=ロマーニャ州の食材ですから、合わないはずがありません。

生ハムについて詳しく知りたい方は「生ハム」の「生」って何?ワイン好きが知っておくべき【世界のハム】をチェック!

ペアリングワインも、ここは定番を押さえておきましょう。パルミジャーノやパルマハムと同様、エミリア=ロマーニャ州で造られる微発泡の赤、ランブルスコです。

甘口もありますが、パルミジャーノ・レッジャーノをつまみに飲むなら断然ドライなタイプがおすすめ。ブルーベリーや熟したチェリーのような果実味がしっかりとあり、軽い渋みも感じるワインで、舌をくすぐるような軽やかな泡がチーズのうま味を引き立ててくれます。

NV クエルチオーリ・レッジアーノ・ランブルスコ・セッコ/メディチ・エルメーテ
産地
イタリア・エミリア・ロマーニャ州
品種
ランブルスコ・サラミーノ、ランブルスコ・マラーニ
タイプ
ミディアムライト辛口 スパークリング(赤)

ランブルスコについて詳しく知りたい方は、イタリアの3種のスプマンテ【プロセッコ、アスティ、ランブルスコ】がコスパで世界を席巻中!をチェック!

【スライスでツマむ】熟成によるうま味をシンプルに味わう

日本では24ヶ月(2年)熟成のものをよく見かけるとお伝えしましたが、チーズ専門店などでは、36ヶ月(3年)以上の熟成表示があるものが販売されていることもあります。

パルミジャーノ・レッジャーノなどのハードタイプのチーズは、熟成が進むと生地の中に「白い粒」が斑点状に現れてきます。

「白い粒」の正体は、アミノ酸の結晶。熟成中にタンパク質が分解されて、チロシンというものが結晶化します。24ヶ月熟成でも現れていると思いますが、36ヶ月以上になるとかなり大きな結晶が見られるようになります。

「これ、カビじゃないの!?」と思った方は、試しに、キッチンペーパーなどで表面を拭ってみてください。もし拭い取れるようでしたらカビの可能性がありますが、おそらく拭い取れないと思います。

チーズのおいしさはいろいろな風味のバランスが大事なので、このチロシンの結晶が多ければ多いほどおいしいというわけではないのですが、“うま味たっぷり”というサインにはなります。

また、噛むとジャリっとした独特の食感もあって、とてもおいしく感じるポイントの一つと言えるでしょう。

先ほどご紹介した「かち割り」にして、じっくり噛み締めながら味わうのが定番の食べ方ですが、スライサーかピーラーでちょっと厚めに削ると口溶けがよくなり、少し軽やかな印象になります。

ちょい足しせずに、熟成によるうま味をシンプルに味わうには、スライスにして楽しむのもおすすめ。鼻からフッと抜ける香りも感じやすくなります。

そんな時は、しっかりした果実味があるランブルスコよりも、透明感とキレがあるスパークリングワインを。ただし、パルミジャーノ・レッジャーノと共鳴する熟成感も必須です。

ブラン・ド・ブランのシャンパンもいいですが、イタリアワインならフランチャコルタをぜひ。この「サテン」はフランチャコルタの中でも、やわらかい泡が特徴的なので、まさにぴったりです。

コンタディ・カスタルディ / フランチャコルタ サテン ヴィンテージ 2015
産地
イタリア / ロンバルディア州 / フランチャコルタ
品種
シャルドネ100%
タイプ
スパークリングワイン - 辛口 - ミディアムライト

【削ってたっぷりかける】ミートソースのパスタがプロの味に

「パルミジャーノ・レッジャーノ=削ってかけるチーズ」というイメージは、皆さんも持っているかと思います。「市販の粉チーズしか使ったことがない」という方は、一度騙されたと思って体験してほしい!パイナップルやナッツのような香りも広がり、本当に“別物”なのです。

パルミジャーノ・レッジャーノは、ほどよい塩味と豊かなうま味が持ち味なので、日本人になじみ深いかつお節にとてもよく似ています。「何か一味足りないな」という時に、この天然のうま味調味料をひと削り。ちょっとした魔法のように、ワインに合う料理に変身してくれます。

その代表的な料理がミートソースの名でも親しまれている、ボロネーゼ。イタリア語の発音に近い表記をすると「ボロニェーゼ(bolognese)」となりますが、これも同郷エミリア=ロマーニャ州発祥の料理で、ボローニャの街の名がその語源です。

野菜や挽肉のしっかりした味わいがあるパスタに、うま味豊かなパルミジャーノ・レッジャーノ。ペアリングは、ベリーやチェリーの華やかな香りとみずみずしさが見事に引き出されたサンジョヴェーゼ種のワインをチョイス。バランスが取れ、エレガントさもあるこのキャンティ・クラシコ(キアンティ・クラッシコ)なら申し分なしでしょう。

2017 キャンティ・クラシコ/クエルチャベッラ
産地
イタリア・トスカーナ州
品種
サンジョヴェーゼ100%
タイプ
ミディアムフル辛口 赤

レシピ【ゴロゴロ肉のボロニェーゼ】

レトルトのミートソースでも、パルミジャーノ・レッジャーノを削りかけ、キアンティ・クラッシコを合わせるだけで、家ごはんがかなりグレードアップしますが、「せっかくならボロニェーゼ(ragù alla bolognese)も作ってみたい!」という方のために、レシピをご紹介します。

(レシピ協力:「Antica Braceria Bell’italia」オーナーシェフ 井上裕一)

■材料(1人分)

タマネギ(みじん切り) 1/2個分
ニンジン(みじん切り) 1/3本分
セロリ(みじん切り) 1/4本分
牛挽肉 100g
豚挽肉 100g
鶏レバー  50g
生ハム(粗みじん) 30g
乾燥ポルチーニ 大さじ2杯(*水で戻し、みじん切りにしておく)

オリーブオイル 適量
トマトピューレ 250g
赤ワイン 50cc

お好みのパスタ(乾麺) 80g 

塩胡椒 適量
パルミジャーノ・レッジャーノ 適量

■作り方

[1]オイルを引いたフライパンで、みじん切りの生ハムと野菜を軽く炒め、少し色が変わる程度になったら、牛と豚の挽肉と鶏レバーを加え、さらに炒める。

[2]水分がなくなってきたら、水で戻したポルチーニを加え、全体がなじんだところに赤ワインとトマトピューレを加えて少し煮詰める。

[3] パスタを茹でて[2]に加え、全体を和えるようになじませたら皿に盛り、塩胡椒を軽く振り、仕上げにパルミジャーノ・レッジャーノをたっぷりと削りおろしたら完成。

【保存方法】常備しやすく、初心者にこそおすすめ

チーズはワイン以上に保存方法に気を配らなければいけない食材ですが、パルミジャーノ・レッジャーノはかなり簡単に保存できるため、初心者にもおすすめのチーズです。

基本は、ワックスペーパー(クッキングシート)で包んで、密閉容器(密閉袋)に入れて冷蔵庫保存。これだけです。短い期間ならラップで包んでもいいのですが、ラップ独特のにおいが移りやすいので、ワックスペーパーがおすすめです。

また、冷蔵庫で長く保存していると、チーズの表面が蒸れたり、濡れたりすることがあります。水滴はカビの原因となりますので、そういう場合はキッチンペーパーなどで拭き取り、新しいワックスペーパーで包み直しましょう。

もし表面にポツポツとカビが生えてしまった場合は、カビとその周囲をまずはナイフや包丁で削り落とせばOK。少しチーズをカットしてみて、もし内部の生地全体にもカビが生えてしまっている場合は、残念ですが食べるのは諦めましょう。

当然ながら、酸化はしていくので、早めに食べきるのが原則ですが、長期熟成のハードチーズであるパルミジャーノ・レッジャーノは、保存のコツやおいしい食べ方を知っておけば、賞味期限に頼らず、常備しやすいチーズなのです。

イタリアワイン好きなら、筒入りのパルメザンは卒業⁉︎

「かち割り」「スライス」「削り」の3つの手法を知っておけば、家でも3倍楽しめるはず!イタリアワインを家でもおいしく味わってもらえるよう、今回は“イタリアチーズの王様”パルミジャーノ・レッジャーノの楽しみ方をたっぷり紹介しました。

スーパーやコンビニなどで市販されている筒に入った「パルメザン」の多くは、パルミジャーノ・レッジャーノを模して作られたチーズを粉状にしたものになりますので、“似て非なるもの”。香りも味わいも異なります。

パルミジャーノ・レッジャーノはイタリアの原産地名称保護(D.O.P.)のチーズ。「パルメザン(Parmesan)」という言葉は、パルミジャーノの英語表記名でもあり、少なくともEU圏内では模倣・類似チーズにこの名称を使うことは禁止されています。

パルミジャーノ・レッジャーノは保存方法も簡単なので、おいしいワインの友として、ぜひブロックで買って、冷蔵庫に常備していただければと思います。

手軽な食べ方を実践して、お気に入りのイタリアワインを開けて…。古代ローマ時代から脈々と受け継がれてきたワイン&チーズで、家でもグルメ旅行気分に浸ってみましょう!

 

Share this post...
Share on Facebook
Facebook
Tweet about this on Twitter
Twitter
佐野 嘉彦
ニューヨーク発祥のレストラン評価ガイド『ZAGAT』日本版の編集マネージャー、ワインスクールでの講師、料理通信社での勤務、チーズに特化したWebマガジンの編集長を経て、現在「sembrar(センブラール)」を屋号とし、食を中心とした情報発信を行っている。JSA認定ワインエキスパート、NPO法人チーズプロフェッショナル協会幹事、Guilde Club Japon認定コンパニョン・ド・サントュギュゾン、フランスチーズ鑑評騎士(シュヴァリエ)。
2021年9月20日
【チーズケーキ&ワイン】6種のタイプ別で学ぶペアリングのコツ
2021年9月20日
【その日の気分・シーン】に合うワインを真剣トーク!編集部メンバーが選んだ12本
弊社WEBサイトをご覧いただきまして、ありがとうございます。
ご意見・ご相談など、お気軽にお問合わせください。
お問合せ内容の確認後、担当者よりご連絡させていただきます。
WEBサービス内で展開する複数のコンテンツにご執筆いただけるライターの方も募集しています。
お問い合わせフォーム