誰だって“おいしいワイン”を飲みたい。でも、“おいしいワイン”って何?
「スペインワインは多様で、ストライクゾーンも広い」と語るのは、WINE@の人気コンテンツ【WINE SELECTORS(ワインセレクターズ)】のトップソムリエの一人、櫻井一都さん。
「ウンチクはあまり好きじゃない」という櫻井さん。感覚を大切にするスペインワインの第一人者の仕事やワインへの想い、その人柄に迫るべく、じっくりお話を伺いました。
好みのソムリエを見つけてワインを選ぶ「WINE SELECTORS」
ワインの知識に長けている有名ソムリエやシェフ(WINE SELECTORS)が、季節や様々なシチュエーションに合うおすすめのワインを紹介。ソムリエやシェフの普段は見えないプロフィール(出身、休日の過ごし方、好みの料理など)も分かるので、自分好みのワインを選ぶ強い味方になってくれます。
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「人と同じことはしない」から始まったスペインワインへの道
編集部
今でこそ日本ではスペインワインが広く親しまれていますが、昔はそんなことありませんでした。なぜスペインワインの世界を志したのですか?
櫻井一都さん(以下、敬称略)
よく訊かれます。実は、元々はバーテンダーでハードリカーが専門でした。その頃ずっと、「ワインと日本酒はやりたくないなぁ」と思っていました。ウンチクを語ったりすることが、あまり好きではないので(笑)
編集部
それがどうして、ワインの世界に?
櫻井
バーテンダーとして働く中で壁にぶつかりました。「ずっと自分はバーテンダーとしてやっていくべきなのか…」どうしても、その自問から抜け出せなかった。その壁を乗り越えるために、それまで敬遠していたワインを勉強してみようと思ったわけです。
編集部
スペインワインとの出合いは?
櫻井
多くの方と同じように、初めはフランスワインから入り、ブルゴーニュやボルドーを追いかけるわけです。でもふと周りを見渡すと、みんな同じことをやっている。「つまらないな」と思いました。そもそも、他人と同じことをするのが好きじゃないんです。そんな時に、スペインワインとめぐり合いました。
編集部
みんながフランスを志向するから、あえてスペインをということですか?(笑)
櫻井
今でもモットーは、「仕事にも遊びを取り入れる」「人と同じことはしない」ということなんですが、学生時代からそうだった気がします。
私は茨城の出身で、中学、高校とサッカーをやっていました。茨城選抜まで行ったんですが、全然練習しない選手だった(笑)。もちろん、全くしないわけではありませんが、ありきたりの練習を押しつけられるのが大嫌いで、遊びを加えたような独自の練習を、勝手にやっていました。
「当たって砕けろ」で開拓したスペインワインの魅力
編集部
仕事としてスペインワインの世界に入ったきっかけは?
櫻井
スペインレストランから、声がかかったのです。そこで色々と知るようになり、「スペインワインの多様性が面白いなぁ」と思いました。
品種も、産地も、造りも、なんだか皆、好きなことをやっている。それでいて、品種を知り、深く探求していくと、それが結局テロワールに繋がっていたりする。とても興味を惹かれました。
編集部
まだインターネットやSNSも普及していない頃、ましてや当時の日本ではメジャーな存在ではなかったスペインワインのことをどのように学ばれたのですか?
櫻井
フランスワインと違って、教本や参考書などもありませんでしたからね。仕方がないので、現地のソムリエや生産者に直談判して、直に教えを受けに行ったりしました。「当たって砕けろ」というやつです(笑)
感性が瞬時に導きだすバランス感覚
編集部
ワインを選ぶ時に、櫻井さんが大切にしていることは何ですか?
櫻井
「感覚」です。瞬間の、パッとした閃きも大切にしています。
あと、野球の“ストライクゾーン”みたいな感覚もありますね。ストライクの枠内には、ど真ん中もあれば、外角高め、低めなど、様々なものがある。ワインも似ていて、ストライクの枠内で、その時々の、自分の感性を大切にして選べばいいじゃないかと思うんです。
編集部
その日の気分に合わせて、というような感覚でしょうか?
櫻井
それもありますし、ワインと料理を合わせる時にも“ストライクゾーン”みたいな感覚は大事かなと思います。その中で、最も意識するのは「トータルでのバランス」ですね。
例えば「料理の甘味に、ワインの酸で補うように合わせる」とか「ワインと料理の色を合わせる」などと言いますが、自分は、料理1品にワイン1本を合わせるのではなく、メニューのトータルに、雰囲気の合うワインを合わせるスタイルです。そういう合わせ方をする際に、スペインワインは最適だと思うんです。
スペインワインにも色々なものがありますが、全般的には、酸が穏やかで、果実味があり、味わいはまろやか。料理に縛られないワインであるということも、スペインワインの醍醐味かな、と。
編集部
なるほど。感性の芯には、多様性の中から紡がれたバランス感覚がある。だから、櫻井さんの選ぶワインを飲むと、心がホッと落ち着くのかもしれませんね。
櫻井
そういう気持ちでワインを楽しんでいただけたら、最高ですね。
「感覚の天才」の休日は、パフェ、ヘヴィメタル、アイドル!?
編集部
家では普段どんなワインを飲まれますか?
櫻井
スパークリングワインが好きなので、よく飲みますね。あと、家飲みワインは、妻が近所のワインショップで選んで買ってくるものを飲むのが、櫻井家のルール(笑)。それが絶妙なチョイスで、なかなか面白いんですよ。
編集部
いいですね。ちなみに、お休みの日はどのように過ごされているのですか?
櫻井
休みの日はチョコレートパフェ…
編集部
えっ?パフェですか?
櫻井
休日には必ず食べる「週に一度のお楽しみ」ですよ。フルーツパフェよりチョコレートパフェ派で、モダンなものよりはクラシックなタイプが好きです。
編集部
なるほど。クラシックタイプ、わかります。パフェの他に、何か趣味はあるのでしょうか?
櫻井
緊急事態宣言下で家を出られなかった時期は、筋トレとトランペットの練習ばかりしていました。そもそも音楽はヘヴィメタルが好きで、学生時代にコピーバンドをやっていて、ベースとギターを担当していました。
今でも80年代のヘヴィメタルが特に好きで、2019年に解散してしまったアメリカの「SLAYER(スレイヤー)」の大ファン。コロナ禍以前は、“メタル好き”を集めて、プロジェクターを使い、カウンターで上映会を開催したり…。あと、紅白にも出場した「BABY METAL」も好きで、2019年は4回もライブに行きました。
編集部
コロナ禍の影響で、ライブやコンサートはまだまだ以前と同じようには行かれないですよね。
櫻井
そんな中でも楽しみはあるものです。去年は朝の情報番組で特集していた「NiziU」にすっかりハマり、家族全員でファンになりました。ファンクラブも立ち上げ時から入会。ちなみに、私はリマちゃん推しです(笑)
櫻井一都(さくらい・かずと)
東京都品川区大井町にあるワインバー「ロスビノス」のオーナーソムリエ。2007年、スペインワインコンテスト2007にての優勝経験を持ち、スペインワインを中心とした、ワインセミナー、ワイン選定、ワインリストの作成などのコンサルティングでも活躍。■Myワイン評価基準
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