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カリフォルニアワインの魅力、大発見 Vol.2
2022年は産地ローダイを堪能しよう!
街を走るパトカーのドアにはブドウのマークがあしらわれ、いくつかの高校では「生徒のためのブドウ畑」を用意―――ワイン造りとともに発展したカリフォルニアのローダイは、地元民のワイン愛があふれているエリアです。 そんなローダイで産まれたワインを近年、日本の飲食店やワインショップでもチラホラ見かけるようになりました。 なぜ、今、ローダイなのか? ヒミツを紐解いていきましょう。
近年大注目の産地ローダイ
なら、ローダイはどうでしょうか。
ナパとソノマにほど近く、サンフランシスコ湾からそのまま内陸方向へスライドしたところに位置するローダイ。
内陸へ入れば入るほど砂漠化するアメリカですが、カリフォルニア湾から川を遡って涼しい海風が吹き込むローダイは、ブドウの生育にはもってこいの環境です。
ローダイ人気が高まる理由2つ
イタリア系移民はイタリア系品種を、ドイツ系移民はドイツ系品種を……とアイデンティティを大切にしつつブドウを植えていった経緯があり、いまでは100種以上のブドウ品種が栽培されています。
さらにもうひとつの理由が、ご長寿なブドウ樹の存在
20世紀初頭に全世界で猛威をふるったフィロキセラの被害を受けにくかった土壌。
そういった条件に恵まれたローダイの畑に立ち、古樹ならではのゴツゴツとした太い幹を間近で眺めれば、長年の風雨に耐え根を張り続けてきた歴史が伝わってきます。
いちどは飲んでおくべき価値アリ、です!
たとえば、アメリカの代表品種あるジンファンデルも、ローダイの古樹から収穫されたブドウを使えば、パワフルさと同時に落ち着いた表情も見せてくれるワインとなるんです。
心地よいジンファンデルの果実味が、花椒でしびれた舌をやさしく包んでくれますよ。
誰よりも早い環境問題への取り組み
「限りある水資源を大切にする」「周辺に住む動物たちやブドウ畑で働く人たちの健康を考える」「近隣住民と連携」「胸を張って子や孫の代へ残せるブドウ畑を」……といったサステイナビリティの考え方は、近年ようやく世界各地で共有されてきましたが、ローダイの生産者たちが最初に取り組んだのは、なんと1990年代初め。
ローダイの生産者たちが一丸となって勉強会を開き、環境問題研究家も巻き込みつつ皆で共有していた思想が、2005年には公的に「ローダイ・ルール」として確立し、サステイナビリティを目指すほかの産地にとってのお手本となりました。
そして現在、カリフォルニア全体を通して見ると、全ワイナリーの8割が何らかのサステイナブル認証を受け、環境にやさしいワイン造りを実践しています。
古樹をいたわり守り続けながら、サステイナビリティの実現へ向かって果敢にアクションを起こしたローダイこそ、まさに「カリフォルニアのなかのカリフォルニア」なのですね。
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【カベルネ・ソーヴィニヨン】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴
同じブドウ品種から造られたワインであっても、産地、造り手、ヴィンテージ(収穫年)、熟成、保存管理などによって、ワインの風味は大きく異なります。
でも、品種とそのブドウが造られた産地の特徴を知っておくと、どんな香りや味わいのワインなのかを判断する大まかな目安となり、自分好みのワインを選ぶ時にとても役に立ちます。
シリーズで展開している【テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴】。今回のテーマ品種は、カベルネ・ソーヴィニヨンです。世界中のワイン愛好家の心を捉えて離さないこの品種自体が持つ主な特徴からまずは確認していきましょう。
カベルネ・ソーヴィニヨンの主な特徴
世界一の栽培面積を誇り、認知度でも1位2位を争うブドウが、このカベルネ・ソーヴィニヨンです。
呼び名も「カベルネ・ソーヴィニヨン」一択!シノニム(別名)がない国際品種のブドウもめずらしいと言えるでしょう。
カベルネ・ソーヴィニヨンのルーツと歴史
シノニム(別名)がないのは、比較的新しく登場した品種であるということもポイントのようです。
ワイン造りには8,000年もの歴史があると言われますが、カベルネ・ソーヴィニヨンの登場は17世紀。フランス・ボルドー地方でカベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配から生まれたとされています。
晩熟な品種で、小粒の実の果皮は厚く色も濃いのが特徴。力強いタンニン(渋みの成分)とともに、長期熟成に向く赤ワインが原産地のボルドー地方では多く造られています。
比較的温暖な気候が向いていて、さらに土壌への適応力が高く病害に対する耐性も強いとあって、世界各地に広がっていきました。
カベルネ・ソーヴィニヨン 品種由来の風味
世界中で栽培される品種なので、産地によって若干香りや味わいも異なります。それぞれの特徴については、後ほど詳しくご紹介しますが、品種由来の主な特徴としては以下のようなものが挙げられます。
香り カシス、ブラックチェリー、ブルーベリー、青ピーマン、ミント、杉、鉛筆の芯
味わい 果実味と酸味のバランスが良く濃厚で、熟成が若いものは渋みがしっかり
それではカベルネ・ソーヴィニヨンの主要産地別に主な特徴を見ていきましょう。
フランス:ボルドー地方
フランスでのカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培の6割以上が、原産地でもあるこのボルドー地方。世界に名を轟かせる伝統的なシャトーがいくつもあります。
ジロンド川の左岸地区で多く造られますが、ほとんどが100%の単一ではなく、メルロやカベルネ・フランなどをブレンドした「ボルドー・ブレンド」と呼ばれるスタイルのワインになります。
イギリスが世界の覇権を握っていた時代。ボルドーはまさに彼らのためのワイン産地でもありました。イギリス人の好みに合わせた色や風味を安定的に提供し、長期熟成にも向くワインを求められる中で、ブレンド(アッサンブラージュ)のノウハウが積まれていったとも言われています。
カシスなどの黒い果実に加え、ピーマンのような青い野菜や杉の香りがあり、アルコール度数は中庸で、引き締まった味わいが特徴。渋みは強めですが、熟成とともにまろやかになり、なめし革やクローヴなどの複雑な香りも現れます。
ボルドー以外のフランスでは、ロワール川流域やラングドック・ルーション地方でも栽培されています。ロワールでは比較的軽やかなワイン、ラングドック・ルーションではより温暖な気候から、凝縮した果実味を持つワインが造られています。
お手頃なボルドーワインについて知りたい方は、若い世代のワインビギナー注目!多様なボルドーワインの楽しみ方にめぐり逢おう もチェック!
アメリカ:カリフォルニア州
ナパ・ヴァレー、ソノマ、パソ・ロブレスといったカリフォルニア州の産地では、ブレンドしたワインも造られますが、カベルネ・ソーヴィニヨン100%のワインも多く造られます。
完熟したアメリカンチェリーやカシスのアロマに、チョコレート、干しブドウなどの香りが重なり、酸味はおだやかで凝縮感あるフレーバーとなっているものが多く、14%以上のアルコール度数もめずらしくありません。また、渋みがしっかりとした長期熟成に向くプレミアムワインも多く造られています。
カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンが世界に知れ渡ったきっかけは、1976年の「パリ対決(パリテイスティング)」。著名なワインのプロフェッショナルによるブラインドテイスティングで、ボルドーの格付け1級シャトーに勝利したことで、一気にスターの座へと駆け上がりました。
また、最近では比較的冷涼なオレゴン州やワシントン州、ニューヨーク州などでも上質で長期熟成にも向いたカベルネ・ソーヴィニヨンのワインが造られています。
カリフォルニアワインについて詳しく知りたい方は、【カリフォルニアワイン】基本からトレンドまで。編集部おすすめの10本も紹介! もチェック!
チリ
カベルネ・ソーヴィニヨンは、南米のほとんどの国で栽培されていますが、最も有名なのはチリ。コンビニでもおなじみの安価なものからプレミアムワインまで多岐に渡っています。その品質の高さと手軽さで「チリカベ」と呼ばれるほど、日本の市場でも重要なワインとなっています。
カリフォルニアに勝るとも劣らない、濃厚な果実味と高いアルコール度数が特徴の一つで、総体的に力強い印象。ミントを思わせる清涼感溢れるハーブのニュアンスを伴いながら、果実味が豊かで渋みが少ないものが多く造られています。
南北に細長い国土で、北部は赤道に近く、南部は寒くてブドウ栽培には向かないため、中部のマイポ・ヴァレー、コルチャグア・ヴァレー、アコンカグアといった産地が特に有名です。
オーストラリア
オーストラリアの黒ブドウと言えばシラーズが有名ですが、カベルネ・ソーヴィニヨンもそれに次ぐ重要な黒ブドウ品種。シラーズとブレンドされた赤ワインも多く造られています。
シラーズよりもタンニン(渋み)がしっかりしていて適度な酸があり、熟したカシスやブラックチェリーに加えて、ユーカリの香りが特徴的。チョコレートや干しブドウの風味もあり、パワフルな味わいのワインが多く造られています。
特に有名な産地は、南オーストラリア州のクナワラと西オーストラリア州のマーガレット・リバー。しっかりとしたフルボディのワインが造られています。
また、酸味とタンニン、果実味のバランスが心地よいタイプのワインが、クレア・ヴァレーやヴィクトリア州のヤラ・ヴァレーなどの冷涼なエリアで造られています。
イタリア、スペイン、そして中国や日本でも!
世界のワイン産地でカベルネ・ソーヴィニヨンを栽培していない国の方がめずらしいと言うくらいメジャーな品種ですが、フランス、アメリカ、チリ、オーストラリア以外の代表的な産地もいくつかご紹介しておきましょう。
まずは、イタリア。トスカーナ州の「スーパートスカーナ(スーパータスカン)」と呼ばれる赤ワインには欠かせない品種です。
1970年代、世界で人気となる高品質なワインをつくろうとする生産者が、土着品種よりもカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどの国際品種を植え、サンジョヴェーゼとブレンドしながら重厚なワイン造りをするようになりました。こうしてトスカーナのボルゲリを中心に誕生したのが「スーパートスカーナ」。土着品種への回帰が起きている昨今においても、確固たる地位を築いています。
スペインでは、最近は単一の造りのものも増えてきましたが、カスティーリャ・イ・レオン州にある銘醸地、リベラ・デル・ドゥエロなどでは、テンプラニーリョとブレンドした重厚で長期熟成に向くワインが造られています。スーパートスカーナの流れと似た印象もあります。
スペイン語圏、南米のアルゼンチンでは、メンドーサが有名。マルベックとブレンドされたワインもあり、熟した黒系果実のニュアンスと樽熟成からくるスパイシーな風味のものが多くあります。
日本では、メルロほどの広まりはありませんが、長野、山形、山梨といった主要産地で造られています。
お隣の中国では、ボルドーの赤ワインがもともと大人気。一時期、中国人がボルドーワインやシャトーを買い占めるというニュースも騒がれました。
最近では、国や地方行政が積極的にワイン生産に力を入れている上、広大な国土には栽培にとても適した気候と土壌もあります。
中国の近代ワインの出発地、山東省煙台(エンタイ)には、ボルドー5大シャトーの筆頭、シャトー・ラフィット・ロートシルトが造る「ロン・ダイ」もワイナリーを構えます。
また“中国のボルドー”とも“中国のナパ・ヴァレー”とも称されている寧夏回族(ネイカカイゾク)自治区、賀蘭山(ガランサン)東麓のカベルネ・ソーヴィニヨンは、今後ますます注目を集める存在となっていくと思われます。
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ブドウは農作物。工業製品ではないので、育まれる土壌やその土地の気候などの影響をダイレクトに受け、毎回同じものが作られるわけではないので、当然ワインもその特徴を引き継ぎます。
様々な要素をすべて把握するのは一朝一夕にできることではありませんが、世界各国のカベルネ・ソーヴィニヨンを色々と飲み比べて、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。
「渋みがなくちゃ、赤ワインじゃない!」と言うくらいしっかりした赤ワインが好きな方は、【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋みが効いた赤ワインを選ぶには もチェック!
【リースリング】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴
同じブドウ品種から造られたワインであっても、産地、造り手、ヴィンテージ(収穫年)、熟成、保存管理などによって、ワインの風味は大きく異なります。
でも、品種とそのブドウが造られた産地の特徴を知っておくと、どんな香りや味わいのワインなのかを判断する大まかな目安となり、自分好みのワインを選ぶ時にとても役に立ちます。
シリーズで展開している【テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴】。今回のテーマ品種は、リースリングです。世界中のワイン愛好家の心を捉えて離さないこの品種自体が持つ主な特徴からまずは確認していきましょう。
リースリングの主な特徴
キリッとしたスパークリング(ゼクト)、ミネラル感溢れるものからコク豊かなものまである辛口、爽やかな甘口、そして、アイスワイン、貴腐ワイン…と多彩なワインを生み出してくれるリースリングのワイン。
その味わいのバラエティを支えているのが、リースリングというブドウの豊かな酸。世界中で広く栽培されているシャルドネに対し、限られた冷涼な土地でしかその本領を発揮しないという気難しい一面も併せもちます。
リースリングのルーツと歴史
リースリングは古くは15世紀頃の文献にも登場し、歴史のある白ブドウ。ドイツ・ライン川の上流が原産地とされていて、地場品種の自然交雑から誕生したと考えられています。
果実は丸型で小さく、晩熟。リースリングに不可欠な酸は、冷涼な気候や標高の高さ、昼夜の寒暖差といった生産地の特徴(テロワール)が大きく関係して生まれます。
ドイツからフランス・アルザス地方にリースリングが入ってきたのが15世紀。その後19世紀になると、世界各地の冷涼なテロワールのもと、広く栽培が行われるようになりましたが、現在でも世界の総栽培面積で見るとブドウ全体の約0.8%と割と希少なブドウです。
リースリング 品種由来の風味
産地によって異なる風味の特徴については、後ほど詳しくご紹介しますが、品種由来の主な特徴としては以下のようなものが挙げられます。
香り ライム、レモン、リンゴ、洋梨、桃、ハチミツ、ジャスミン
味わい 凛とした上品な酸味、凝縮感があり味わいの余韻も長め
「リースリング=ペトロール香」とは限らない!
「リースリング=石油のようなオイル香(ペトロール香)やセルロイドのようなにおいがある」とよく言われますが、そうとは限りません。
確かにリースリングのワインに出やすいアロマではあるのですが、絶対ではありません。むしろ、近年では強いペトロール香はオフフレーバー(異臭)だと捉える生産者も多くいます。
水不足の暑い環境下で生育したブドウを原料としたり、特定の酵母を使って発酵させたり、長い熟成を経たり、比較的高い温度環境下で保管されたりするとペトロール香は増える傾向にあり、どんなワインにも含まれる可能性があるのです。
それではリースリングの主要産地別に主な特徴を見ていきましょう。
ドイツ:モーゼル、ラインガウ
リースリングの最大の栽培地は、原産地でもあるドイツです。世界のリースリングの約半分はドイツで栽培されているというほどで、特にドイツの二大産地と言われるモーゼルとラインガウでは高品質なワインが造られています。
様々な味わいの白ワインが造られていますが、伝統的なもので、近年主流になっているタイプは辛口。キリッとした酸味とともに、リンゴや洋梨、桃などの果実のアロマがあり、熟成とともにオイリーなニュアンスが出てくるものもあります。長期熟成をさせた上質なものは、じんわりとした旨みがあり、余韻が長いのが特長です。
そして、ブドウの熟度によってバラエティに富んだ甘口ワインが造られます。カビネットなどのフレッシュな甘口はリンゴなどのアロマがあり、熟成とともにハチミツなどのふくよかなフレーバーが増してきます。
また、凍結したブドウや貴腐ブドウから造られる極甘口のものもあり、いずれも品種特有の酸味のおかげで、ベタつかず透明感のある甘味となっています。
フランス:アルザス地方
アルザスのリースリングワインの多くは、キリッとした辛口タイプ。青リンゴやレモン、ハチミツのようなアロマがあり、シャープな酸味と舌をキュッと締めつけるようなミネラル感が大きな特長です。
ドイツでも同様なのですが、ワインをまろやかにするマロラクティック発酵もあまり行われず、大樽(古樽)を使った発酵・熟成が多用されてきました。ただし、近年では生産者によってステンレスタンクを使ったり、マロラクティック発酵を行ったりすることもあり、スタイルが多様化しています。
またアルザスでも、遅摘みしたブドウ(ヴァンダンジュ・タルディヴ)や貴腐ブドウ(セレクション・ド・グラン・ノーブル)から造られる甘口ワインが造られています。
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オーストラリア:クレア・ヴァレー
近年メキメキと評価を上げている産地が、オーストラリア南部のクレア・ヴァレー。地中海性気候に区分され、リースリングの二大産地であるドイツとフランスのアルザス地方ほど冷涼な気候ではない生産地ですが、標高の高さと昼夜の寒暖差のおかげで、上質なリースリングワインを生み出しています。
品種の特性でもあるシャープな酸味は十分にありますが、ドイツやアルザスなどの伝統産地のリースリングに比べると酸味はおだやかなものが多い印象です。熟成が若いものはフレッシュ&フルーティーで、ライムの香りが特徴的。なかにはバラやジャスミンなどのアロマも加わり、熟成とともに複雑な風味を持つものもあります。
クレア・ヴァレーのほかにも、イーデン・ヴァレーがリースリングの産地として知られています。
中欧から東欧、そしてアメリカ北部、カナダ・・・世界の冷涼地が舞台!
ドイツのお隣、オーストリアでは、近年リースリングの生産量が増加しており、ヴァッハウとカンプタールが有名産地。ヴァッハウのドナウ川やカンプタールのカンプ川の影響、水はけの良い土壌から、凝縮感のある辛口ワインが造られています。
スロバキア、クロアチア、チェコなどの東ヨーロッパ諸国では「リズリング」と呼ばれ、DNA上は関係のない「リースリング・イタリコ」と区別をつけるために、「ライン・リースリング」や「ホワイト・リースリング」と呼ばれることもあります。
ワイン大国アメリカでも各地でリースリングワインが造られていますが、中でも有名なのがニューヨーク州。西の内陸、カナダとの国境にフィンガーレイクスという産地があります。夏は湖からの涼しい風が吹き込み、冬には気温が下がりすぎることや霜を防いでくれるという場所です。
アルザスよりは温暖で、オーストラリアより冷涼な気候から生まれるワインは、果実味がほどよく、しなやかな酸が心地よいのが特長。和食のような比較的さっぱりとした食事との相性もよく、昨今の食のライト化のトレンドにも合致しています。
「No Riesling, No Life.」というキャッチーな言葉とともに、リースリングが世界に広まったイベント「リースリングリング」もニューヨークが発祥。詳しくは【リースリング】は複雑だから面白い!NYのソムリエも語るその魅力とは?をチェックしてみてください。
また、西海岸北部のワシントン州やカナダでは、アイスワインなどの甘口のワインが多く造られています。寒冷地ならではの心地よい甘さと酸のバランスが秀逸です。
ブドウは農作物。工業製品ではないので、育まれる土壌やその土地の気候などの影響をダイレクトに受け、毎回同じものが作られるわけではないので、当然ワインもその特徴を引き継ぎます。
様々な要素をすべて把握するのは一朝一夕にできることではありませんが、世界各国のリースリングを色々と飲み比べて、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。
キリッとした酸味の白ワインが好きな方は、【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】シャープな酸の白ワインを選ぶには もチェック!
【ピノ・グリ/ピノ・グリージョ】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴
同じブドウ品種から造られたワインであっても、産地、造り手、ヴィンテージ(収穫年)、熟成、保存管理などによって、ワインの風味は大きく異なります。
でも、品種とそのブドウが造られた産地の特徴を知っておくと、どんな香りや味わいのワインなのかを判断する大まかな目安となり、自分好みのワインを選ぶ時にとても役に立ちます。
シリーズで展開している【テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴】。今回のテーマ品種は、ピノ・グリ(ピノ・グリージョ)です。世界中のワイン愛好家の心を捉えて離さないこの品種自体が持つ主な特徴からまずは確認していきましょう。
ピノ・グリ/ピノ・グリージョの主な特徴
ピノ・グリ(ピノ・グリージョ)は白ブドウ品種に分類されますが、その名にあるグリ(グリージョ)は灰色という意味。果皮が薄紫や赤茶っぽい色を帯びていて、この色をフランス語やイタリア語では「灰色」という言葉を使って表しています。
世界の総栽培面積は約15,000ha。近年、各地で栽培が増えているブドウ品種の一つですが、まずはそのルーツや歴史から見ていきましょう。
ピノ・グリのルーツと歴史
フランス・ブルゴーニュ地方が原産地というのが通説で、ブルゴーニュでは「ピノ・ブーロ」という別名も。黒ブドウのピノ・ノワールのクローン突然変異体で生まれたブドウだとされています。変異して果皮が色づかない品種に「ピノ・ブラン」というものもあり、いずれも葉や樹がよく似ていて、房も小さめです。
ピノ・グリは温暖な気候よりは冷涼な気候が適合する品種で、一般的には水はけの良い、石灰質などのミネラル分が豊かな土壌で栽培すると品質が高くなると言われています。
世界各地では辛口の白ワインが多く造られますが、中には甘口のワインもあります。
ピノ・グリ 品種由来の風味
産地によって異なる風味の特徴については、後ほど詳しくご紹介しますが、品種由来の主な特徴としては以下のようなものが挙げられます。
香り 洋梨、メロン、黄桃、ジンジャー、レモンピール、グリーンアーモンド
味わい 酸味はまろやかで、しっかりした果実味とコクがあり、後味にほのかな苦味
テロワールの特徴のみならず、収穫のタイミングや醸造方法によっても風味にバリエーションが生まれる品種でもあります。
それではピノ・グリ(ピノ・グリージョ)の主要産地別に主な特徴を見ていきましょう。
フランス:アルザス地方
原産地と言われるブルゴーニュ地方では、現在はほとんど栽培されておらず、フランスではさらに北に位置するアルザス地方が名産地。リースリング、ミュスカ、ゲヴェルツトラミネールを含めたアルザス四大高貴品種の一つとされています。
洋梨やハチミツのような芳醇な香りを持ち、果実味と酸味のバランスが取れたコク豊かな辛口の白ワインが多く造られています。
濃醇な味わいで、アニスやシナモンのようなスパイスの風味を伴うものもあり、リースリングやゲヴェルツトラミネールと同様に、遅摘みや貴腐のブドウから甘口のワインも造られています。
ちなみにピノ・グリは以前、シャンパーニュ地方でも「フロマントー」という呼び名で栽培されていましたが、現在はほとんど見かけないようです。
また「フロマントー」はラングドック地方でもそう呼ばれることがあるようで、他に、ロワール渓谷やアルプスエリアでは「マルヴォワジー」という呼び名もあります。
イタリア北東部
イタリア語では「ピノ・グリ―ジョ」と呼ばれ、主にフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア、トレンティーノ=アルト・アディジェ、ヴェネトといった冷涼な北東部のエリアで造られています。
フランス・アルザスのものと異なり、あえてブドウを早摘みし、ステンレスタンクで熟成させることで、比較的軽めに仕上げた辛口タイプが多いのが特徴。さわやかな酸味が持ち味で、北東部とアルプスで繋がるドイツやスイス、オーストリアなどでも同様のワインが多く造られています。
また、中には洋梨やアプリコット、パイナップルなどの香りに、ややスモーキーなニュアンスが加わり、味わいに厚みや複雑性を持たせたものもあります。
オーストラリア
南オーストラリア州やニューサウスウェールズ州の南部、ヴィクトリア州のヤラ・ヴァレーやタスマニア島といった冷涼なエリアで、多く造られています。
スタイルとしては、フランス・アルザスに倣ったコク豊かなものが多く、“オイリー”とも言えるような口当たりがあり、酸味は中程度。アルコール度数は高めとなる傾向があります。
ただ、イタリア系移民も多い国ということもあり、イタリア北東部のピノ・グリージョのような軽やかなワインもあり、多様性に富んでいます。
ドイツ、ニュージーランド、アメリカ、日本・・・世界各国で注目!
西はフランス・アルザス地方、南はイタリア北東部と接したドイツも、伝統的な産地。ここでは「グラウブルグンダー」や「ルーレンダー」と呼ばれ、古くから白ワイン用のブドウの一つとして親しまれてきました。
一方、チャレンジングなワインを造るニューワールド。オーストラリアのお隣、ニュージーランドでも果皮からくる色や風味を生かしたピノ・グリのワインは注目されていて、オレンジワインも造られています。
アメリカは、オレゴン州やワシントン州、カリフォルニア州といった西海岸のワイン銘醸地がやはり主戦場。特にオレゴン州は、主要品種の一つとなっていて、キリッとしたミネラル感たっぷりのタイプもあれば、洋梨やトロピカルフルーツの風味が豊かなコクうま系のものまで多彩です。
日本でもまだ数は少ないのですが、ピノ・グリに挑戦する生産者がいます。フランス・アルザスともイタリア北東部とも異なる、日本らしい繊細さと複雑性が楽しめるワインが生まれていて、今後さらに期待されています。
ブドウは農作物。工業製品ではないので、育まれる土壌やその土地の気候などの影響をダイレクトに受け、毎回同じものが作られるわけではないので、当然ワインもその特徴を引き継ぎます。
様々な要素をすべて把握するのは一朝一夕にできることではありませんが、世界各国のピノ・グリを色々と飲み比べて、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。
【ピノ・ノワール】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴
同じブドウ品種から造られたワインであっても、産地、造り手、ヴィンテージ(収穫年)、熟成、保存管理などによって、ワインの風味は大きく異なります。
でも、品種とそのブドウが造られた産地の特徴を知っておくと、どんな香りや味わいのワインなのかを判断する大まかな目安となり、自分好みのワインを選ぶ時にとても役に立ちます。
シリーズで展開している【テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴】。今回のテーマ品種は、ピノ・ノワールです。世界中のワイン愛好家の心を捉えて離さないこの品種自体が持つ主な特徴からまずは確認していきましょう。
ピノ・ノワールの主な特徴
ピノ・ノワールは、カベルネ・ソーヴィニヨンと人気を二分する黒ブドウ品種。かの有名な「ロマネ・コンティ」を筆頭に、色は淡く、渋みは穏やかで、繊細な芳香を漂わせる赤ワインが造られます。また、シャンパンを造るブドウ品種の一つとしても有名です。
ピノ・ノワールのルーツと歴史
原産地は、フランス・ブルゴーニュ地方。ピノ・ノワールは4世紀頃には栽培が行われていたとされる歴史のあるブドウで、突然変異しやすいのが特徴の一つ。ピノ・ブランやピノ・グリだけでなく、シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、さらにシラーといった名だたる国際品種のブドウのルーツだということもDNA解析などの研究から明らかになってきています。
小粒で皮が薄い実がびっしり付いた小さめの房で、その姿が松ぼっくりのように見えることから「ピノ(松)・ノワール(黒)」と呼ばれるようになったのだとか。
他の品種よりも比較的早熟なピノ・ノワールは、寒さには強いのですが、病害にかかりやすいため生育が難しい品種。そのため、原産地以外では難しいと言われていましたが、品種特有の上品な風味に魅せられた人々が世界中に現れ、今では各地で栽培されている国際品種の一つとなっています(栽培面積は世界10位 ※2010年O.I.V.データ)。
ピノ・ノワール 品種由来の風味
ピノ・ノワールの赤ワインが世界の人々を魅了する最大の要因は、芳しいアロマと繊細な酸でしょう。また、渋みがマイルドな点も重要です。
産地によって異なる風味の特徴については、後ほど詳しくご紹介しますが、品種由来の主な特徴としては以下のようなものが挙げられます。
香り イチゴ、ラズベリー、レッドチェリー、紅茶、キノコ、クローブ
味わい チャーミングな酸味と果実味、穏やかな渋み
繊細な芳香はもちろん、その風味をバランスよく堪能するために作られたのが「ブルゴーニュ・グラス」。ポッテリとしたふくらみがある大ぶりな形で、口元に向かってすぼまっているのがブルゴーニュ・グラスの特長です。
他の黒ブドウと比べると、果皮が薄く、含まれる成分も薄いこともあり、淡い色合いをしたタンニンの少ない赤ワインになりますが、近年の地球温暖化の影響や醸造技術の発展により、色合いがしっかりした、そこそこ渋みもあるピノ・ノワールのワインも造られています。
それではピノ・ノワールの主要産地別に主な特徴を見ていきましょう。
フランス:ブルゴーニュ地方
原産地でもあるブルゴーニュ地方では、凛とした酸味とまろやかな渋みのバランスがよく、赤いベリーの芳香を漂わせるエレガントなワインが多く造られています。
繊細な品種ゆえ、他のブドウ以上にその年の気候や畑などによって多様になりますが、果実味やアルコール度数は控えめで、樽由来のバニラの香りや熟成による紅茶などの香りも繊細で、複雑性が感じられるワインが多いというのも特徴です。
3,000円台で比較的購入しやすいAOC(原産地呼称統制)のものもあれば、ブルゴーニュファン垂涎の超高級ワインも。ブルゴーニュのピノ・ノワールは熟成の変化による飲み頃の見極めが難しいものも多いので、まさにソムリエの腕が鳴るワインと言えるでしょう。
シャンパーニュ地方
ピノ・ノワールはシャンパンの主要3品種の一つ。その中では栽培面積が最も大きく、味わいにボディと骨格をもたらすとあって、まさにシャンパンのブドウの代表選手となっている品種です。
白ブドウのシャルドネのみで造られるブラン・ド・ブランはキレのある味わいが魅力ですが、黒ブドウのピノ・ノワールの果汁から造られるブラン・ド・ノワールは、深みやコクがあるシャンパンに。鴨肉のローストや煮込み料理にも負けない味わいがあります。
シャンパンが好きな方は【シャンパーニュデイ特集】シャンパンのツウになろう!もチェック!基本からツウな話までご紹介しています。
アルザス地方・ロワール地方ほか
ブルゴーニュより北にあるアルザス地方は、さらに冷涼なテロワール。自然派の栽培や醸造が基本で、よりキリッとした酸味が感じられるものが多く造られます。
ブルゴーニュの西側に隣接しているロワールの中流域、サントル・ニヴェルネなどでは、透明感のある軽やかなものが多く造られていますし、そのほか、東側のアルプスエリアにあるジュラ地方では「グロ・ノワリアン」という品種名で呼ばれ、多くはありませんが生き生きとした酸味のあるワインが造られています。
アメリカ:カリフォルニア州
フランスに次いでピノ・ノワールの栽培面積が広いのが、アメリカ。ワイン生産が盛んなカリフォルニアは、ピノ・ノワールのワインにおいても一大産地です。
フランス各地のものと比べると、酸味はやや穏やかで渋みも感じられ、赤いベリーの果実味が豊かなものが多いのが特徴。ただし、太平洋を流れる寒流や霧とともに複雑で入り組んだ地形が為せる微気候(マイクロクライメイト)の影響を受け、近年はエレガントなピノ・ノワールも数多く造られています。
オレゴン州・ワシントン州
カリフォルニアの北に位置する、オレゴン州とワシントン州もピノ・ノワール人気が高い名産地。特にオレゴン州は「オレピノ(オレゴンのピノ・ノワール)」なんていう言葉が聞かれるくらい、代表的な品種となっています。
広いカリフォルニアでは畑や造り手によって様々なピノ・ノワールがありますが、オレゴンやワシントンのものは、伸びやかな酸味があるのが特徴。熟成とともに、土っぽさやスパイス感も現れ、複雑さを増すものが多く造られています。
ニュージーランド
南半球のニュージーランドは、ヨーロッパ以外で最初にピノ・ノワールで成功したと言われている代表的な産地。
気候も土壌もブルゴーニュに近いという調査結果が出た北島のマーティンボロや、世界最南端のワイン産地である南島のセントラル・オタゴでは、どこかフレッシュハーブを思わせるアロマを伴ったピノ・ノワールが造られています。
オーストラリア
ニュージーランドの隣国、オーストラリアは灼熱の太陽と乾燥した気候のイメージがあるかもしれませんが、南部ヴィクトリア州のヤラ・ヴァレーやタスマニア島は、冷涼な気候。その影響から、酸味を伴った果実味と繊細な渋みが絶妙なバランスで、凝縮感も感じられるワインが多く造られています。
ピノ・ノワールの産地として、近年ワインの品質と知名度をメキメキと上げている注目の産地です。
ドイツ、イタリア、チリ、南アフリカ、日本・・・世界各国で注目!
ピノ・ノワールを「シュペート・ブルグンダー」と呼ぶドイツも、伝統的な産地。同じドイツ語圏のオーストリアでは「ブラウブルグンダー」「ブラウアー・ブルグンダー」と呼ばれています。
ドイツ南部のバーデンやファルツでは、隣接しているフランス・アルザス地方で造られるピノ・ノワールの味わいに近い、酸が効いた軽やかなものもあれば、成分抽出や樽熟をしっかりと行った飲みごたえのあるものも造られています。
イタリアでは「ピノ・ネロ」と呼ばれ、フランチャコルタ(シャンパンと同じ瓶内二次発酵のスパークリングワイン)の主要品種となっています。
南米のチリでは、中部のカサブランカ・ヴァレーなどでピノ・ノワールの栽培が盛ん。他国の産地よりもグッと色合いが濃く、果実味がしっかりしているのが特徴的です。海からの風と霧の影響で比較的冷涼な気候と言えるエリアですが、海風がブドウの果皮を厚くするために、色や味わいの濃いピノ・ノワールができると言われています。
フランスからも多くの造り手が参画し、新たな可能性が追求されている南アフリカでも、ピノ・ノワールは注目品種。スティルワインはもちろん、シャンパンのようなエレガントなスパークリングワインも造られています。
日本でも多くはありませんが、魅惑的なピノ・ノワールに挑戦する生産者が増えています。冷涼な北海道が最も多く、青森や長野などでも造られています。
ブドウは農作物。工業製品ではないので、育まれる土壌やその土地の気候などの影響をダイレクトに受け、毎回同じものが作られるわけではないので、当然ワインもその特徴を引き継ぎます。
様々な要素をすべて把握するのは一朝一夕にできることではありませんが、世界各国のピノ・ノワールを色々と飲み比べて、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。
渋みが穏やかな赤ワインが好きな方はピノ・ノワール以外の品種のワインもおすすめ。【自分好みのワインを知るための品種のハナシ】渋み少なめの赤ワインを選ぶには もぜひチェック!
【シラー/シラーズ】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴
同じブドウ品種から造られたワインであっても、産地、造り手、ヴィンテージ(収穫年)、熟成、保存管理などによって、ワインの風味は大きく異なります。
でも、品種とそのブドウが造られた産地の特徴を知っておくと、どんな香りや味わいのワインなのかを判断する大まかな目安となり、自分好みのワインを選ぶ時にとても役に立ちます。
シリーズで展開している【テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴】。今回のテーマ品種は、シラーです。オーストラリアなどではシラーズと呼ばれるこの品種自体が持つ主な特徴からまずは確認していきましょう。
シラー/シラーズの主な特徴
シラー(シラーズ)は、カベルネ・ソーヴィニヨンと双璧をなす“渋みしっかり系”黒ブドウ品種。単一でもブレンドでもワインが造られるといったところも、カベルネ・ソーヴィニヨンと似ています。
シラーのルーツと歴史
原産はフランスのコート・デュ・ローヌ地方。近年のDNA解析の研究では、なんとピノ・ノワールと繋がりがあるらしいのですが、ブドウの特徴としては、小粒であること以外はほぼ真逆。
果皮がぶ厚く、若干青みがかった濃い色。タンニンは中庸の強さで、酸は強め。しっかりとした品種の個性がありながらも、テロワールの影響を色濃く反映したワインが出来あがります。
栽培が比較的容易であるため世界中で栽培され、栽培面積は世界6位(※2010年O.I.V.データ)。1990年から2010年の20年間で栽培面積が5倍以上に増えた、人気上昇傾向の黒ブドウです。
シラー 品種由来の風味
産地によって異なる風味については、後ほど詳しくご紹介しますが、品種由来の主な特徴としては以下のようなものが挙げられます。
香り 黒いベリー、プラム、黒胡椒、ドライハーブ、ビターチョコレート
味わい しっかりした渋み、力強い果実味
おおむね、濃い紫を帯びたガーネット色で、力強い味わいの赤ワインになりますが、それではシラー(シラーズ)の主要産地別に主な特徴を見ていきましょう。
フランス:ローヌ北部、ラングドックほか
フランスとオーストラリアが二大産地と呼ばれているシラーですが、原産地でもあるこのコート・デュ・ローヌ地方の北部は、まさに世界を代表するシラーの産地。ここでは「セリーヌ(Serine)」と呼ばれることもあります。
北部は急峻な斜面からなる渓谷で、AOCで認可されている唯一の黒ブドウ品種がシラー。挽きたての黒胡椒のようなスパイシーな香りが特徴的で、ブラックベリーやプラムの香りもあり、酸味や渋みが豊かなワインが造られています。
そのほか、ブラックオリーブやなめし革などの動物性のアロマなど複雑さを感じるワインがある一方で、少量のヴィオニエを混醸し、シラーのスパイシーさをやわらげ、花の香りなどのワインのアロマを強めたエレガントなワインもあります。
代表格のエルミタージュ、“焼け焦げた丘”という意味を持つコート・ロティ、シラー100%の赤ワインのみ認められているコルナスといったAOCのワインは、長熟で高品質なシラーとして世界的に有名です。
ローヌ地方の南部はなだらかな平地や丘陵地で、グルナッシュを主として、シラーやムールヴェードルなど多くの品種をブレンドした赤が多く造られています。こうしたブレンドにおいて、シラーは骨格と気品をワインに与える重要な役割を担っています。
コート・デュ・ローヌ地方のワインについてさらに知りたい方は、【ヴィオニエ】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴 もぜひチェック!
プロヴァンス地方やラングドック地方でも、シラーは重要な黒ブドウ品種です。こうした地中海沿岸の南フランス一帯でも、ローヌ地方の南部と同様、グルナッシュやムールヴェードル、カリニャンなどとブレンドし、長期熟成が可能な骨格のある赤ワインが多く造られています。
オーストラリア:バロッサ・ヴァレーほか
オーストラリアにシラー種が持ち込まれたのは、19世紀前半。バロッサ・ヴァレーのワイナリーが所有する1843年植栽のシラーが、オーストラリア最古のワイン用ブドウと言われています。
200年近くの時を経て、「シラーズ(Shiraz)」という呼び名に変わりながら、今やオーストラリアの黒ブドウでは、栽培面積、生産量ともにNo.1。フランスと双璧をなす世界的な産地となったわけです。
オーストラリアのシラーズは、黒胡椒などのスパイスのニュアンスもありますが、ブラックベリーやビターチョコレートなどの香りが前面に出ているのが特徴。濃厚な果実味があり、渋みもしっかりありますが、ローヌのシラーと比べるとなめらかな印象です。
力強い果実の豊かなバロッサ・ヴァレーのシラーズが代表格ではありますが、広大なオーストラリアの多様なテロワールにも順応。さらに、ローヌ北部のようなヴィオニエとの混醸のスタイルや若い造り手が手がける全房発酵のワインもあり、デイリーワインから最高級ワインまで多種多様なシラーズが、現在は造られています。
イタリア:トスカーナ州、シチリア州
フランスとオーストラリアが二大産地となりますが、土着品種によるワイン造りに長けたイタリアでも、シラーは重要品種。特にトスカーナ州やシチリア州では高品質なシラーが多く生み出されています。
キアンティで有名なトスカーナ州ですが、モンテプルチアーノやコルトーナなどのやや冷涼な地域で、香りも味わいも上品なシラーの赤ワインが造られています。サンジョヴェーゼやカベルネ・ソーヴィニヨンなどとブレンドされたものも多くあります。
また、ネロ・ダーヴォラやネレッロ・マスカレーゼといった魅力あふれる地場の黒ブドウがあるシチリア州でも、シラーのワインはよく造られています。地中海性気候のど真ん中にあるテロワールのおかげか、酸味、果実味、渋み(タンニン)のバランスがよく取れ、飲みやすいシラーが楽しめます。
アメリカ:カリフォルニア州、ワシントン州
地中海性気候でも魅力を存分に発揮するシラー。イタリアのみならず、アメリカのカリフォルニア州でもそれは同じで、2018年の栽培面積で言えば、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、ジンファンデル、メルローという王道の黒ブドウ4品種に次ぐ、第5位につけています。
カリフォルニア州には色々な味わいのシラーがありますが、果実味と渋みがしっかりしつつ、黒胡椒のスパイシーさもカギとなる赤ワインが多く造られています。
ワシントン州でも、実はカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローに次ぐ、第3位。シラーを含めた3種が黒ブドウの三大品種となっていて、ヤキマ・ヴァレーやワラワラ・ヴァレーといった主要エリアで多く栽培されています。
冷涼なワシントン州のシラーは、ブラックベリーやカシスなどのアロマがあり、心地よい酸味とともに複雑な味わいがあるものが多く造られています。
スペイン、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、そして日本や中国でも注目!
シラーは温暖なテロワールを主としつつも、やや冷涼なエリアでも栽培でき、それぞれに応じて、若いうちから飲んでも熟成させても異なる魅力を見せてくれる品種。その万能さのおかげで、2000年以降、主要産地以外でも栽培面積を増やしています。
南フランスやイタリアと地中海で繋がっているスペインでは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローよりも多く栽培されていて、黒ブドウでは第6位。(※MAPA スペイン農業漁業食糧省 2019年7月発表)
大西洋を渡ったチリでは、国際品種の中ではなんとシャルドネに次ぐ栽培面積で、温暖な主要産地のみならず、サン・アントニオ・ヴァレーやエルキ・ヴァレーなどの冷涼地では、黒胡椒の香りがしっかりした、北部ローヌのようなエレガントなシラーも造られています。
同じ南米のアルゼンチンでも、カベルネ・ソーヴィニヨンに近い栽培面積があり、主要産地のクージョ地方のメンドーサなどで、マルベックやカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドした味わい豊かな赤ワインやロゼワインが多く造られています。
ヨーロッパのオーストリアでは最近になってシラーに注目が集まるようになり、成功を収めている国際品種の一つとなっており、国際品種への取り組みが目覚ましい南アフリカでは、北部ローヌのようにヴィオニエを使って複雑さを出したブレンドのシラーも造られています。
そしてアジアでも今、シラーは注目品種。
日本では、長野県の桔梗ヶ原ワインバレーや千曲川ワインバレーなどで、近年シラーが増えていて、“ネクスト・メルロー”としての期待も高まっています。
そして、お隣の中国。世界第7位のワイン生産量を誇るこの広大な国でも、シラーの栽培は行われていて、“中国のボルドー”とも“中国のナパ・ヴァレー”とも称されている賀蘭山(ガランサン)東麓を擁する寧夏回族(ネイカカイゾク)自治区では、フルボディの味わい深いシラーが造られています。
中国ワインの基本についてさらに知りたい方は、世界が注目!【中国ワイン】の知っておくべき歴史と産地 もぜひチェック!
ブドウは農作物。工業製品ではないので、育まれる土壌やその土地の気候などの影響をダイレクトに受け、毎回同じものが作られるわけではないので、当然ワインもその特徴を引き継ぎます。
様々な要素をすべて把握するのは一朝一夕にできることではありませんが、世界各国のシラーを色々と飲み比べて、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。
【オレンジワイン】って何?クヴェヴリとアンフォラはどう違う?
自然派ワインの人気とともに、オレンジワインと呼ばれるワインが日本でも広まってきました。ワイン好きの間では、クヴェヴリやアンフォラといった耳慣れない言葉もキーワードとなっています。
「オレンジワインって聞いたことあるけれど、詳しくは知らない」という方のために、今回はその基本をレクチャー。紐解いていくとワインそのもののルーツと繋がっていきます。
また「どれを、どこで買ったらいいか分からない」という方のために、wine@のワインのプロフェッショナルがおすすめするオレンジワインもご紹介します。
オレンジワインって、そもそも何?
“オレンジワイン”と聞くと、果物のオレンジで造る果実酒かと勘違いする人もいると思いますが、さにあらず。白、赤、ロゼと同様に、ワインの“色”による区分になります。
英語では「amber wine(アンバーワイン、琥珀のワイン)」と呼ばれるように、実際にはオレンジ色というよりは琥珀色に近い、くすんだオレンジ色をしているものが多くあります。
ワインの色は、ブドウの果皮などによって生じます。簡単に言ってしまえば、オレンジワインは、白ブドウで赤ワインのような造り方をしたワインのこと。
通常白ワインを造る時は、白ブドウを搾った果汁をもとに醸造していくのですが、オレンジワインでは、赤ワインと同様に、果皮や種などを一緒に漬け込む「醸し」が行われます。それによって色がつき、ちょっとくすんだオレンジ色のワインができるのです。
オレンジワインの造り方や味わいの特徴について詳しく知りたい方は、ワインの造り方から見る、色合いと味わい~ロゼワイン・オレンジワイン編 をチェック!
オレンジワインは、実は長い歴史を持つワインで、野生酵母による発酵を基軸とし、添加物は加えないという自然な造りもその大きな特徴。伝統的な製法のことを、次に少し掘り下げてみましょう。
伝統的な造り方が魅力。クヴェヴリとは?アンフォラとどう違う?
オレンジ色の秘密はその造り方にあるわけですが、伝統的なオレンジワインの製法に欠かせないものに「クヴェヴリ(qvevri)」というものがあります。
クヴェヴリとは、素焼きした粘土で作られた、ワインの醸造や熟成に使われる甕(かめ)のこと。底先が尖った卵のような形状で、地中に埋めて使われます。100~3,500Lと大小様々なものがあり、特に大型のものは保存用としても使用されます。
つまり、現代的なワイン醸造における発酵や醸しでは、ステンレスタンクや樽が使われますが、その役目を担っているのが、このクヴェヴリというわけです。地中に埋めることで低い温度が保たれ、卵型の形状のおかげで、果汁と果皮や果梗等の循環が促されると言われています。
ちなみに、このクヴェヴリを使ったワイン造りは、2013年にユネスコ世界文化遺産に登録されています。
また、オレンジワイン以外でも使われる「アンフォラ(amphora)」が陶器製で似ているのでクヴェヴリと混同されることがありますが、アンフォラは主に保管や輸送のために使われる容器になります。
ワイン発祥の地「ジョージア=グルジア」
ユネスコ世界文化遺産にも登録されたクヴェヴリのワイン造りは、ジョージア発祥のもの。ジョージアと言っても、アメリカのジョージア州ではなく、以前「グルジア」と呼ばれていた東欧の国で、北はロシアと接し、南にはトルコとアルメニア、東にはアゼルバイジャンがあるという位置関係。いにしえより、東西の文明が交錯する場所にあります。
ヨーロッパとアジアを繋ぎ、多くの文化が育まれたエリアにあるわけですが、ワインも然り。クヴェヴリを使った伝統的かつ自然なワイン造りが生まれた国で、ワインのルーツがこのジョージアにあるというわけです。
大きな国ではありませんが、東部は乾燥した大陸性気候で、西部は湿潤な亜熱帯気候。西部は黒海の東岸に位置し、山脈に囲まれていることから、湿度も高く、雨量も多めです。
現在のジョージアでは、クヴェヴリを使った伝統的な手法のほか、現代的なヨーロッパ式の醸造や、タンクを使って果皮や種ごと発酵させるというモダン式でのワイン造りが多く行われています。
また、クヴェヴリで果汁と共に果皮、茎、種などを漬け込んだワイン(dedaze デダゼ)だけでなく、果汁のみをクヴェヴリに入れて造るワイン(udedo ウデド)もあり、黒ブドウから赤ワインも造られています。
ジョージアのオレンジワインは、土着品種もポイント
ジョージアにはなんと500を超える土着品種があると言われ、世界各国で栽培されているワイン醸造用のブドウ(ヴィティス・ヴィニフェラ種)の起源もジョージアにあるというのですから、まさにジョージアはワインのルーツがたくさん詰まった国であると言えるでしょう。
土着品種の中でもジョージアのオレンジワインに欠かせない特に有名なものが、白ブドウ品種のルカツィテリ(Rkatsteli)とムツヴァネ(Mtsvane)です。
ルカツィテリは、ジョージアの最大産地である東部のカヘティ地方を中心に最も広く栽培されているブドウ品種で、しっかりとした骨格のあるオレンジワインができます。
対して、ムツヴァネは酸もあるアロマティックなブドウ。ルカツィテリとのブレンドにもよく使われる品種です。
ルカツィテリ種のおすすめワイン
綺麗なアンバー色を呈し、アプリコットやビワ、ダージリンの茶葉やジンジャーなど多重層な香り。洗練された上品な味わいで、なめらかな質感とほのかな渋みがアクセントになっているワインです。
要素が多彩なので、和食、中華、エスニック…と幅広い料理に合わせることができ、一度飲んだらリピート必至!家ごはんにも最適なオレンジワインです。
ムツヴァネ種のおすすめワイン
クリアで綺麗な味わい。ムツヴァネにはハーブのニュアンスもあるので、良い意味で料理を選ぶワインでもあります。
タンニンもあるので、脂質やタンパク質と相性が良い。肉料理、穴子寿司、うなぎ、ジビエ(イノシシ・鴨)に、ツルムラサキやほうれん草など、ちょっとクセのある土っぽい野菜を添えたものなどがおすすめです。
自然派人気とともに広まったオレンジワインとその他の名産地
野生酵母の力を借り、亜硫酸などの添加をしない伝統的な製法ゆえ、ジョージアのオレンジワインは、ナチュラルワインの生産者の心を捉え、世界各国にその自然な造りが広まっていきました。
そのきっかけは色々あり、ワイン消費の一大市場であるアメリカで最新のワイントレンドとして取り上げられたこともありますが、イタリア北部のフリウリで造られるようになり、そのワインが評価を受けて世界中で有名になったことも大きな要因です。
最後に、wine@のプロフェッショナル厳選の世界のオレンジワインを3本ご紹介します。
出汁のうま味が効いた和食との相性が良いこともあり、日本でも今後ますますオレンジワインには注目が集まることでしょう。
イタリア最高峰の透き通ったオレンジワイン
フリウリのオレンジワインに欠かせない、リボッラ・ジャッラ種。世界的に人気を博すリボッラ・ジャッラワインの造り手が他にもいますが、プリモシッチはその代表格の一人です。
野菜や魚介の繊細な味に寄り添うオーストラリアの1本
オレンジワイン特有のほのかな渋みを伴いながらも、すだちや柚子などの和柑橘を思わせるアロマと酸味が魅力。野菜や白身魚の料理とぜひペアリングを。
万人受けするポルトガルのオレンジワイン
ワイン通でも知らない人が多い「アンタンヴァズ」という品種から造られる1本。風味もボディも程よく、嫌いな人はいないかも!? 具材豊富なおでんなど出汁の味によく合います。
参考:2021日本ソムリエ協会教本
【シュナン・ブラン】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴
シリーズで展開している【テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴】。今回のテーマ品種は、シュナン・ブランという白ブドウです。
同じブドウ品種から造られたワインであっても、産地、造り手、ヴィンテージ(収穫年)、熟成、保存管理などによって、ワインの風味は大きく異なります。でも、品種とそのブドウが造られた産地の特徴を知っておくと、どんな香りや味わいのワインなのかを判断する大まかな目安となり、自分好みのワインを選ぶ時にとても役に立ちます。
まずは、シュナン・ブランという品種自体が持つ主な特徴から確認していきましょう。
シュナン・ブランの主な特徴
シャルドネやソーヴィニヨン・ブランといった品種ほど有名ではないかもしれませんが、シュナン・ブランはスッキリとした辛口だけでなく、やさしい味わいの甘口、濃醇な貴腐ワイン、爽やかなスパークリングまでできてしまうという、まさに変幻自在の白ブドウ。ワイン愛好家の心をくすぐる要素がいっぱいある品種なのです。
シュナン・ブランのルーツと歴史
フランス・ロワール地方が原産で、9世紀頃にはアンジュー地区で栽培されていたと言われています。その後、15世紀にトゥーレーヌ地区に広まり、大航海時代になるとオランダの東インド会社を通じて南アフリカにもたらされ、他の国へも伝わっていきました。
成熟が遅い品種で、本来は冷涼な土地よりも温暖な土地での栽培に適しています。
シュナン・ブラン 品種由来の風味
豊富な酸が品種の特性と言えますが、それ以外はあまり強い個性はなく、その年の気候によっても大きく風味が左右されます。そのため品種由来の特徴を挙げるのは難しいのですが、現れやすい風味としては以下のようなものがあります。
香り カリンやリンゴなどの木成りのフルーツ、白い花、ハチミツ
味わい さわやかな酸味
温暖な気候のもとでは、バナナやパイナップルなどの南国フルーツの香りも現れますし、ハチミツのような甘やかさはより強くなります。
それでは、シュナン・ブランの2大産地別に主な特徴を紹介しましょう。
フランス:ロワール地方
原産地とされるアンジュー&ソミュール地区、そしてトゥーレーヌ地区がメインフィールド。フランスの大河、ロワール川の中流域になります。
ロワールのシュナン・ブランには「ピノー・ド・ラ・ロワール」という別名があります。ピノー(pineau)は“松ぼっくり”という意味ですが、ブドウが松ぼっくりのような形状をしていることから、ブドウそのものを意味することもあるようで、シュナン・ブランがロワールを代表するブドウであることが、この別名からも伺えます。
アンジュー&ソミュール地区
中流域とはいえ、ここは大西洋の影響が残る海洋性気候、または半海洋性気候のエリア。冬も比較的温暖で陽当たりの良い斜面も多いことからブドウが良く熟し、カリンやリンゴの風味を感じるしっかりとしたボディの辛口ワイン、そしてシャンパンと同じ製法のスパークリングワイン「クレマン・ド・ロワール」が多く造られています。
またビオディナミ発祥の地でもあり、創始者と言われるニコラ・ジョリーをはじめ、じんわりとしたうま味を魅力とする自然な造りのワインが多く造られています。
一方、アンジュー地区の中でも重要なAOCコトー・デュ・レイヨンの産地は、ロワール川支流のレイヨン川流域にあり、温暖な気候と川の影響で朝霧が発生することが多く、貴腐化したブドウを収穫することができます。カール・ド・ショーム、ボンヌゾーといった甘口ワインの銘醸地もAOCコトー・デュ・レイヨンに属しています。
トゥーレーヌ地区
アンジューよりも内陸にあるトゥーレーヌ地区は、海洋性気候に大陸性気候の特徴が重なるエリアで、ロワール川右岸に広がるヴーヴレイでは、辛口のみならず、バリエーションのある甘口、さわやかなクレマンなど、多種多様なシュナン・ブランのワインが存在。ハチミツや白い花のニュアンスがより強く感じられるものが多くあります。
ちなみに、ロワール以外のフランスの地方でいえば、ラングドック地方や南西地方でもシュナン・ブランは重要品種。ドライな白ワインはもちろん、スパークリングワインの「クレマン・ド・リムー」で使用されています。
南アフリカ
大航海時代に持ち込まれたシュナン・ブランですが、その後しっかりと定着し、今ではなんとフランスを上回り、栽培面積で世界No.1となっています。
以前は「スティーン」と呼ばれていた南アフリカのシュナン・ブラン。ここでも辛口から甘口、「キャップ・クラシック」と呼ばれる瓶内二次発酵のスパークリングワインなど、様々なタイプのワインが造られていますが、フランス・ロワール地方と比べると、トロピカルフルーツの香りやしっかりとした果実味があるものが多いのが特徴です。
主要な産地は国の西部にある沿岸地域、西ケープ州。ここには、ステレンボッシュやスワートランドといった有名地区があります。新たな造り手や研究機関と連携した生産者も増え、品質やバリエーションの豊かさにこれからも注目すべき産地と言えるでしょう。
オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、アルゼンチンでも注目!
南アフリカに留まらず、シュナン・ブランは他の国にも広まっています。
インド洋を抜け、オーストラリアでは西オーストラリア州が歴史ある産地。そして、お隣のニュージーランドでは北島のギズボーンが、シュナン・ブランのワイン産地として知られています。
アルゼンチンではメンドーサ地区が有名産地で、最近ではチリやウルグアイなどでも栽培されています。さらに北アメリカではカリフォルニア州やワシントン州で、シュナン・ブランのワインが多く造られています。
ブドウは農作物。工業製品ではないので、育まれる土壌やその土地の気候などの影響をダイレクトに受け、毎回同じものが作られるわけではないので、当然ワインもその特徴を引き継ぎます。
様々な要素をすべて把握するのは一朝一夕にできることではありませんが、世界各国のシュナン・ブランを色々と飲み比べて、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。
【ヴィオニエ】テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴
シリーズで展開している【テロワールでどう違う?主要産地別の品種ワインの特徴】。今回のテーマ品種は、ヴィオニエという白ブドウです。
同じブドウ品種から造られたワインであっても、産地、造り手、ヴィンテージ(収穫年)、熟成、保存管理などによって、ワインの風味は大きく異なります。でも、品種とそのブドウが造られた産地の特徴を知っておくと、どんな香りや味わいのワインなのかを判断する大まかな目安となり、自分好みのワインを選ぶ時にとても役に立ちます。
まずは、ヴィオニエという品種自体が持つ主な特徴から確認していきましょう。
ヴィオニエの主な特徴
ワイン用の白ブドウとして国際的な認知度も高いヴィオニエは、房や粒は比較的小さめのブドウ。糖度が上がりやすい一方で、酸度は下がりやすいという特徴があります。
ヴィオニエのルーツと歴史
フランス・ローヌ地方北部が原産地と言われますが、広大な領地を治めていたローマ帝国時代に、現在のクロアチア辺りから持ち込まれたという説もあり、そのルーツは明確ではありません。ただし、ローヌのワインに欠かせないブドウの一つとして長い歴史を持つのは確かです。
1960年代に栽培が落ち込み、絶滅の危機に瀕しましたが、1980年代に香りも果実味も豊かな白ワインが人気となって、再興。ローヌ以外の産地でも栽培されるようになりました。完熟させるために充分な日照量を必要とするため、世界各地の温暖なエリアで栽培されています。
ヴィオニエ 品種由来の風味
糖度が上がりやすい一方で、酸度は下がりやすいというブドウの特徴があり、酸味は控えめ。さまざまな香りが華やかに広がるのが大きな特徴と言えるでしょう。また、トロリとした粘性の高い質感(テクスチャー)も個性の一つです。
香り アプリコット、桃、オレンジ、ジャスミン、生姜、白胡椒
味わい たっぷりとした果実味とアルコール感、控えめの酸味
それでは、ヴィオニエの2大産地別に主な特徴を紹介しましょう。
フランス:コート・デュ・ローヌ地方
今も昔も“ヴィオニエのワインの主戦場”といえば、このコート・デュ・ローヌ地方。アルプスから地中海へと流れるローヌ川の流域には、南北250kmにも及ぶ銘醸地が広がっています。その北部は急峻な斜面がある渓谷で、夏は暑く冬は寒い半大陸性気候。ヴィオニエの代表産地、コンドリューとシャトー・グリエはこの北部にあります。
アプリコットなどの黄色いフルーツの香りに加え、ジャスミンや白いユリのような花の香りが感じられる王道のヴィオニエワインで、酸味は控えめ。豊かな果実味が主体となった厚みのある味わいのものが多く造られています。
また、樽熟成によって生じるスパイスやバニラの香り、さらにハチミツのニュアンスが重なったものもあります。
北部のコート・ロティという産地では、黒ブドウのシラーに少量のヴィオニエを混ぜて、一緒に醸す赤ワイン造りも伝統的。シラーの渋みを和らげ、華やかな香りを加える効果があり、ヴィオニエは名バイプレイヤーとして活躍しています。
ローヌの南部は地中海に近づくにつれ、なだらかな平地や丘陵地が多くなります。日照量も増え、南部は地中海性気候の特徴が強くなりますが、アルプスや中央山塊から地中海に吹き抜ける北風「ミストラル」の影響があり、ワインにも冷涼感が残るのが特徴。ここでは、単一よりも他の白ブドウとブレンドしたワインが多く造られます。
また、フランス南西部に広がるラングドック=ルーション地方でも、単一で造られることはほとんどなく、ブレンド用の品種として使用。日照量の豊かさに恵まれた地域で、完熟した桃のような果実味たっぷりのワインが造られています。
アメリカ:カリフォルニア州ほか
アロマティックで果実味たっぷりの白ワインが人気となった1980年代。ワイン大国のアメリカでもヴィオニエ栽培が盛んになっていきました。
サンフランシスコから南に延びるカリフォルニア州のセントラルコーストでは、早い時期からシラーやグルナッシュなどのローヌ系品種を栽培。日照量豊かな地中海性気候のもと、白ブドウのヴィオニエもしっかり完熟し、アルコール度が15%にも及ぶ力強いワインが造られるようになりました。
香りも南国フルーツの香りがしっかり。ややクリーミーな口当たりで、華やかなフレーバーが口の中でしっかり膨らむものが多いのが特徴です。
同じアメリカの西海岸でも、北側に位置するオレゴン州では、ややエレガントなスタイルのワインに。白い花の香りや白胡椒などのスパイスのニュアンスが生かされ、ピノ・グリ、シャルドネ、リースリングとともに、白ブドウの主要品種の一つとなっています。
また、東海岸のヴァージニア州ではシャルドネに次ぐ主要品種。生産量は多くありませんが、こちらもエレガントな味わいのヴィオニエのワインが造られています。
オーストラリアやアルゼンチンでも注目!日本では甲州とのブレンドも
アメリカと同様、1980年代に入るとオーストラリアでもヴィオニエの栽培が増えていきましたが、そのスタイルとバリエーションは興味深いものがあります。
オーストラリアの代表品種と言えば黒ブドウのシラーズですが、フランス・ローヌ北部のコート・ロティのようにヴィオニエを混醸させたワインも造られていますし、自由な発想でブレンドしたものや自然な造りにこだわったものも。多様性豊かな文化背景とともに、ヴィオニエの新たな可能性が育まれている印象です。
南米アルゼンチンでは、メンドーサ地区が有名産地で、最近ではウルグアイなどでも栽培されていますし、そのほかにニュージーランドや南アフリカでも注目されているようです。
日本では山梨などで栽培が始まっていて、甲州とアッサンブラージュして、香りや果実味を高めた新たなワインを造る生産者も登場しています。
ブドウは農作物。工業製品ではないので、育まれる土壌やその土地の気候などの影響をダイレクトに受け、毎回同じものが作られるわけではないので、当然ワインもその特徴を引き継ぎます。
様々な要素をすべて把握するのは一朝一夕にできることではありませんが、世界各国のヴィオニエを色々と飲み比べて、ぜひお気に入りの1本を見つけてみてください。