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3Wの国、チリのワインはコスパだけじゃない!【パイス種】の“エシカル”なワインとは?

2021.5.10

チリワインというと、あなたはどんなワインをイメージしますか?コンビニやスーパーでも定番となった、果実味も飲み応えもしっかりとしたリーズナブルなワインといったところでしょうか?

2007年に日本とチリとの間で締結された経済連携協定のおかげで、関税率が段階的に下がり、2019年4月には関税ゼロに!この12年の間に、チリワインが国別輸入量で第1位となり、すっかりおなじみとなった背景には、そんな経済的背景もありました。

でも「すべてのチリワイン=安ウマワイン」というのは大きな誤解。ワイン好きなら、世界的に注目を集めているチリワインのことを、もっと知っておきましょう!

3Wの国とは?チリってどんな産地? 

photo: © Catad’Or Wine Awards

Weather(天候)に恵まれ、コロンビアやコスタリカと並び“南米3C”と称されるきれいなWomen(女性)がいて、おいしいWineが造られる国。3つのキーワードの頭文字から、チリは「3Wの国」と称されています。

チリは南米大陸の西海岸にあり、南北に4,274kmもある細長い国。日本の本州の長さ(約1,300km)のなんと3倍以上!東側にアンデス山脈が走り、起伏に富んだ地形ですが、ブドウ栽培地域は、国土のちょうど中間部分、南緯27度から40度までのおよそ1,400kmに広がっています。その主な特徴としては、以下のようなものが挙げられます。

・寒暖差のある地中海性気候

・雨が少ないため灌概用水が重要(アンデスの雪解け水も活用)

・乾燥状態が続くためポトリティスやベト病などの病害に罹らない

・フィロキセラ被害がこれまでのところないため、北米品種の台木に接木する必要なし

ブドウ栽培にぴったりのテロワールを備えたチリでは、フランスやスペインからの資本や技術とともに、多種多様な品種のワインが造られるようになりました。そこで、お隣のアルゼンチンやブラジルなどを巻き込み「世界に通じるワインを発信していこう!」ということから、南米最大級のワインコンクール、カタドール(Catad’Or)が開催されています。

カタドール(Catad’Or)とは?

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

直訳すると“金のテイスティング”という意味がある「カタドール(Catad’Or)」。正式名称は「カタドール・インターナショナル・ワイン・アワード」で、1995年にスタートした南米最古で最大級のワインコンクールです。

OIV(国際ブドウ・ブドウ酒機構)と国際エノロジスト協会の後援を受け、ラテンアメリカで、唯一VINOFEDのメンバーとしても認められている存在で、50名の国内外のテイスターを束ねる審査員長は、英国のマスター・オブ・ワイン(MW)、アリスター・クーパー。2019年のコンクールでは、13か国から出品された計670アイテムが審査されました。

カタドールでは、赤、白、ロゼ、スパークリングといったカテゴリーのほか、蒸留酒のピスコなどを審査するスピリッツ部門などもあり、カテゴリーは多岐にわたっていますが、特に近年注目を集めているのは、アンセストラル・ワイン(Ancestral wines)という部門です。

アンセストラル・ワイン部門とは?

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

アンセストラル(Ancestral)は、“先祖代々の、伝統的な”という意味ですが、カタドールでいうところのアンセストラル・ワインにはあまり細かな規定はなく、伝統的な品種(パイス、カリニャン、サンソー、トロンテル)を用い、昔ながらの方法で栽培と醸造を行うワインを対象としています。

アンセストラル部門のコンクールは、2018年にスタート。チリの農業省とチリ政府機関である農牧開発局(INDAP)が主催しており、審査本部は、チリ・ニュブレ州の州都チランにあります。国内外の審査員が招集され、伝統的な品種と先祖代々の製法をもとに小規模な生産者が丹精込めて造った、チリとアメリカ大陸の先祖伝来のワイン、少量生産のワインが審査対象となっています。

そのなかでも、注目してほしいのは、パイス種のブドウから造られる赤ワイン。チリ特有のこの品種のことを、ここで少し説明しておきましょう。

パイス(País)種の特徴と歴史

チリワインの代表的な黒ブドウ品種というと、カベルネ・ソーヴィニヨンが今や圧倒的。その他となると、メルロと混同されていたというカルメネールくらいまでは知っている方がいるかもしれませんが、1997年までチリで最も多く栽培されているブドウ品種は、パイス(País)。この品種は、チリワインの“はじめて物語”と直結しているのです。

チリでワインが造られるようになったのは16世紀のこと。当時チリはスペインの植民地で、カトリック伝道者がミサ用のワインを造るためパイス種を植えたことに始まります。

パイスは、カナリア諸島でリスタン・ネグロ(Listán Negro)リスタン・プリエト(Listán Prieto)と呼ばれているブドウと同じ。大航海時代を経て、キリスト教の普及活動とともに南北アメリカ大陸に広まったため、シノニム(同義語)がたくさんあります。

ミッション(伝道師団)が伝えたということから、カリフォルニアではミッション(Mission)、メキシコではミシオン(Misión)と呼ばれており、アルゼンチンではクリオージャ・チカ(Criolla Chica)という全く別の呼び名になっています。

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

ちなみに、チリで呼ばれているパイス(País)は「国」という意味。19世紀末のフィロキセラの大打撃を受けたヨーロッパへの輸出需要もあり、次々と国際品種へと植え替えられていくまでは、まさに“国”を代表するブドウ品種でした。

そうした大きなうねりにあまり巻き込まれなかったのが、チリ南部のビオビオ・ヴァレーやイタタ・ヴァレーといった地域でした。パイスは、乾燥に強く灌漑がなくても育ち、ブドウ特有の病気に耐性がある品種だったため、樹齢100年以上の古木が未だにたくさん。古いものでは樹齢400年にもなるものもあり、現在も伝統的な株仕立て(ゴブレ)で残っているのです。

高い収穫量のあるパイスは、淡い色調で、チェリーなどのアロマがあり、渋みが穏やかで素朴な赤ワインになります。

国際品種による濃醇なワイン造りのトレンドのなかでは、紙パックや大瓶に入ったデイリーワインになっていましたが、伝統を重んじ、テロワールを表すワインに注目が集まる今、カタドールでもアンセストラル・ワインとして、別の価値を持つようになってきたというわけです。

そこで、日本未入荷(2020年10月現在)のワインではありますが、カタドールのアンセストラル部門で高く評価された3本のパイス種のワインに、今回は注目。今後、日本のワイン通の間で人気が出るかもしれませんので、ここでご紹介しておきましょう。

わずか1,000本のみ!プルーン香る「BAGUAL」のパイスワイン

ほんのりした酸味と渋みが、ネクタリンやプルーンの果皮をイメージさせるナチュラルなワイン。熟成時に古樽を使用していますが、いわゆる樽香はなく、アルコール度数は12.5%。

家族経営で「イタタ・ヴァレーで伝統的なパイスのワインを後世に伝えていきたい」と、すべて手作業で造り続けているため、生産量はわずか1,000本。裏ラベルには、ナンバリングもされています。

うま味じんわり。サンソーもブレンドした「FURTIVO」のワイン

パイス80%、サンソー20%というブレンド比率で、アルコール度数は12.5%。イタタ・ヴァレーよりもさらに南のビオビオ・ヴァレーで育てられるパイスとサンソーは、樹齢200年を超えるとのことです。

アメリカンチェリーの酸味と果実味に始まり、焼き栗やナッツのような香ばしさも口中に広がる味わい。ボージョレ・ヌーヴォーでもおなじみのマセラシオン・カルボニック(ブドウを破砕せずにタンクの中で放置し、二酸化炭素を充満させて酸素との接触を抑制することでフルーティーに仕上げる製法)を行いますが、樽は不使用。じんわりじっくり、うま味が広がるワインです。

金賞受賞!樹齢90年以上のパイスだけで造られる「TRANCOYÁN」

まさに、フレッシュ&フルーティー。まるでクランベリージュースを飲んでいるかのような、クリーンな味わいのワインで、アルコール度数は12.3%。

イタタ・ヴァレーで樹齢90年を超えるパイス100%で醸されるこのワインは、カタドールのアンセストラル部門で金賞を受賞。スクリューキャップ使用で、年間生産5,000本。ご紹介した3本の中では、日本で飲めるようになる可能性が一番高いワインかもしれません。

フェアトレードで持続可能に。エシカルなワインの時代へ!

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

カタドールのアンセストラル部門に出品されるワインは、原料ブドウのフェアトレード認証を取得しているものもあります。チョコレートやコーヒーの世界では浸透している「フェアトレード認証」ですが、ワインでは現在、チリ、アルゼンチン、南アフリカの3か国のみで行われているとのこと。認証の取得にはコストもかかるため、それがワインの販売価格に反映されると、現在の販売流通ではまだまだ難しいこともあるのだそうです。

チリには「“おらが村”の素朴なワインを後世に残していきたい」という想いとともに、設備投資もままならないため、結果的に割高になってしまう小規模生産のワインもあるというトピックスを、今回お伝えしました。

自然な方法で、耕作に馬などの動物を活用し、除草剤や殺虫剤などの化学薬品は使わず、醸造も天然酵母を用いて造られるワイン。そんな“自然派ワイン”は、他の国でも注目を集めるものとなっていますが、ここでは決してブームだから行われているのではありません。

photo: © Catad’Or Ancestral Wine Awards

一方、チリワインのシェア90%をも占めるというチリワイン大手メーカー4社も、アメリカ、日本、イギリスなどのワイン市場で受け入れられるリーズナブルなワインだけでなく、徹底的な品質にこだわったプレミアムワインや、自然環境に配慮したワインを生産しています。

おいしさとともに、文化や産業として守り、未来につなげていくこと。フェアトレード、サスティナブル、SDGsといった、エシカル(倫理的)なワインのムーブメントは、これからの時代に求められるものだと思います。おいしく、健やかに、私たちもワインを深く長く、楽しんでいきましょう! 

■情報協力

Catad’Or Wine Awards

ProChile Japan(チリ貿易振興局 日本オフィス)

 

2016 レセルバ・パイス・モスカテル
産地
チリ
品種
パイス、モスカテル
タイプ
ライトボディ辛口 赤
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佐野 嘉彦
WINE@MAGAZINE編集長。 ニューヨーク発祥のレストラン評価ガイド『ZAGAT』日本版の編集マネージャー、ワインスクールでの講師、料理通信社での勤務、チーズに特化したWebマガジンの編集長を経て、現在「sembrar(センブラール)」を屋号とし、食を中心とした情報発信を行っている。JSA認定ワインエキスパート、NPO法人チーズプロフェッショナル協会幹事、Guilde Club Japon認定コンパニョン・ド・サントュギュゾン、フランスチーズ鑑評騎士(シュヴァリエ)。
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