「あれ?同じワインなのにこの前飲んだ時と印象が違うなぁ」という経験はありませんか。
同じ銘柄やヴィンテージでも、ワインは熟成や管理の状態によって変化してしまうものですが、それだけでなく、飲み手の気分や体調、どんなシーンで飲むかということによってもその味わいや感じ方は大きく左右されます。
そこで今回は、その日の気分やシーンに合わせてどんなワインを選んだらいいかがテーマ。4タイプの状況を想定して、WINE@マガジンの編集部メンバー3人が、おすすめのワインについてそれぞれの持論でディスカッション。計12本の個性あふれるワインが登場します。
今回のWINE@メンバーはこんな3人
3人ともワインをこよなく愛する編集部メンバーですが、それぞれに嗜好が異なります。あなたの嗜好に近い人がいれば、参考になるかも!?
プランナーH 〜スマート正統派〜
仕事の付き合いでもワインは必須。どちらかと言うと、ワインは単体でじっくり向き合って飲むのが好き。フランスワイン、特にブルゴーニュに目がない。持論は「なんだかんだで、定評=信頼」。
ライターS 〜マイペース自然派〜
感覚と理論の両立を目指す、こだわり女子。キレイな味の自然派ワインや哲学のある造り手が好きで、ハマると生産者のもとへ直行しがち。持論は「人は人、自分は自分」。
エディターY 〜グルメ重視派〜
世界各国の料理を食べ歩いて20年。スペインでワインに目覚め、初めに覚えた品種はアルバリーニョという曲者。ワインは食事に合わせて考えるのが基本。持論は「食べることは、生きること」。
ちょっといいことがあった時に飲みたい【ご褒美ワイン】
エディターY 〜グルメ重視派〜
何か達成した時の“自分へのご褒美”に飲むワイン。色々浮かぶと思うんですが、やはり個人的にちょっと思い入れがあるワインになるのかなぁ。
プランナーH 〜スマート正統派〜
そうですね…僕はやっぱり一番好きなブルゴーニュのピノ・ノワールを選ぶかな。大変なことを乗り越えて何か達成できた特別な時なら、奮発してドメーヌ・ド・ラルロのニュイ・サン・ジョルジュを開けたい。
「知識、技術、情熱、哲学、誰もが認めるブルゴーニュの女王」とWINE SELECTERSの松田龍太さんも言っていて、繊細さとエレガントさを凝縮した素晴らしいピノなんですよ。
エディターY 〜グルメ重視派〜
上質なブルゴーニュは確かに特別感があっていいですよね。
普段飲みにはちょっと高くて手を出しづらいけど、特別な時の自分へのご褒美と言う口実で(笑)買って飲むワインということなら、僕にもこれ!と言う1本があります。
一般的には認知度が低めの品種ですが、スペインの古樹のベルデホから造られる白ワイン、オシアン。ワイン通でも「ベルデホ=軽やかでフルーティ」というイメージがあると思いますが、さにあらず!これは別格のベルデホです。
スペインワインのトップソムリエ、櫻井一都さんも「熟成させても面白い。8,000円近くするけれど、それ以上の満足度を保証します」と言っていました。
ライターS 〜マイペース自然派〜
普段飲みにはちょっと高価だけどという視点で選ぶご褒美ワインなら、私にも大好きな1本があります。
オーストラリアのタスマニア島で、ビオディナミ製法で造られるグリューナー・ヴェルトリーナー。しっかりとした骨格があるワインで、初めは「本当にこれがグリューナー!?」と思うほどでした。
オーストラリアワインにも詳しいソムリエの林やよいさんに「5,000円以上するけど、飲むほどに人を虜にする不思議な魅力のある1本ですよ」とおすすめされたのがきっかけ。和食はもちろん、塩焼きの牛タンとかにも合うんです。
大切な人と二人でゆっくり飲みたい【ロマンティックなワイン】
エディターY 〜グルメ重視派〜
大切な人との甘いひととき!もう、こういう時は濃密なおいしさを推してしまいます(笑)
ロックフォールチーズをつまみに、ボルドーのカルム・ド・リューセックを。しっかりした塩味とピリッとした刺激が魅力のブルーチーズに、トロリとした甘口の貴腐ワインという組み合わせは、もう問答無用のマリアージュ。人間の本能に訴えかける官能的なおいしさですから!
プランナーH 〜スマート正統派〜
Yさん、ロマンティックを超えて、ちょっとエロティック!(笑)でも、はい、わかります。
大切な人と二人でゆっくりというのは、何かの記念日やお祝いかもしれませんよね。ロマンティックな雰囲気を演出してくれるワインということで、僕は定番ですが、やっぱりシャンパンを推したい。
落ち着いた大人の二人におすすめしたいのは、ドゥーツ。フレンチソムリエの太田賢一さん曰く「時代に流されない、名門の誇りを丁寧に味わうシャンパン」です。
ライターS 〜マイペース自然派〜
私もロマンティックなシーンでは、シャンパンを飲みたい!でも、ロゼがいいなぁ。ピンクゴールドの液体、立ち上る繊細な泡…。やはりキュンとしますよ。
私のイチオシは、アンリ・ジローのロゼ・ダム・ジャンヌ。テラコッタ(陶器)製の樽を使って熟成させているという造り手のこだわりもあって、個性的。ロゼのシャンパンだけど、派手さではなく、凛とした女性のイメージがある1本なんです。
ラベルのデザインは、先史時代メソポタミアで作られていたテラコッタ製の女神像をイメージしたものなんですって。
仲間と楽しみながら飲みたい【わいわいワイン】
プランナーH 〜スマート正統派〜
仲のいい友達と気軽に飲むなら、もちろん手頃な価格のワインがいいですよね。
今、品種のことなんかにもちょっと興味を持ち始めている友達がちょうど何人かいて…。そういうワイン初心者ともぜひ一緒に飲みたいのが、エゴン・ミュラーのリースリング。
ドイツワイン最高峰の造り手がスロバキアで造っているという、ちょっとめずらしさもあって、話題も広がるかなと。リースリングの個性を感じられる味わいで、3,000円でお釣りがくる1本だから、家飲みにもぴったりですよ。
ライターS 〜マイペース自然派〜
価格はリーズナブルで、家ごはんにも合うワインがいいですよね。あと「わいわい楽しむ=イタリア」というイメージもありませんか?
私は色々な家ごはんメニューに合う、クリーンな味わいの自然派ワインを日頃から探究しているんですけど、イタリア北部のトレンティーノ・アルト・アディジェ州で造られるアロイス・ラゲデールのピノ・グリージョは、本当におすすめ!
ビオディナミを実践した造り手で、3,000円しないワイン。カジュアルにみんなで楽しめるこのイタリアの白は、私の家飲みの定番でもあるんですけど(笑)
エディターY 〜グルメ重視派〜
お、意外にもお二人とも白ワインできたので、僕は赤でいきたいと思います。
「仲間とわいわい=BBQや焼肉」というイメージが浮かんだので、シンプルな肉料理に合いつつ、コスパ最高の赤ワインということで…サルトンのフラワーズ・ティントはどうかな?ブラジルの赤。ちょっと珍しいし、話も盛り上がりそうでしょ?
サルトンは、より良い土壌とチャンスを求めて1878年にブラジルに渡ってきたイタリア人が始めたワイナリー。このフラワーズ・ティントは、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロのブレンドなんだけど、ちょっとラズベリーやイチゴの香りもあって、渋みもマイルドだから、ワイン初心者も一緒に楽しめると思うんだよね。
落ち込んでいる時や疲れている時に飲みたい【癒しのワイン】
ライターS 〜マイペース自然派〜
癒しのワインと言ったら、やっぱりじんわりとしたうま味を感じるオレンジワインじゃないですか?
プリモシッチのリボッラなら、オレンジワイン未体験の人にもおすすめ。「Gambero Rosso 2018」で最高のトレ・ビッキエーリも受賞している醸しワインで、本当に透き通ったきれいな味わいですから。
初めはちょっと冷やし気味から始めて、温度が上がりながらゆっくり変化する香りや味わいを楽しむ…。はぁ〜、癒されるわぁ(笑)
プランナーH 〜スマート正統派〜
僕は大好きなブルゴーニュがやっぱり癒しのワインかな。出汁のようなうま味じんわりのピノもいいけど、ここはあえての白、アンドレ・ボノームのヴィレ・クレッセをプッシュします!
前にWINE SELECTERSの松田さんから「口に含むと、トロリとするほどの密度があり、ジューシーで甘やかな、ボリュームのある豊かな果実味。直後、塩気を伴うミネラル感と、きれいな酸が現れ、味わいを引き締めます」っていうコメントを聞いたんだけど、まさにその通り。おいしいシャルドネは、僕の癒しです。
エディターY 〜グルメ重視派〜
上質なオレンジワインとブルゴーニュ白。どちらもいいですね。僕はちょっと視点を変えて提案してみようかな。
最近は「チル(chill)する」って言うらしいんだけど、僕にとって癒しの時間に欠かせないのは、音楽。最近はジャズが好きでよく聴くんだけど、そんな僕の“チルタイム”にぴったりのワインが、ジャズ・ナトゥーレ・レセルバというカバ。
バルセロナ出身のジャズバンドとのコラボで2017年に誕生したカバで、レセルバとグラン・レセルバに特化した造り手が手がけた1本。ピアノの鍵盤がデザインされたボトルで、ヴィジュアルも最高でしょ?
疲れている時は料理はしないで、ハモン・セラーノとチーズを切ってつまみながら、ジャズをかけてこのカバを飲む。癒し、コンプリート!
家飲みでも、BYOでも参考に!
3人ともワイン愛が深く、まだまだ話がつきませんでしたが、今回はこれでお開きに。
【ご褒美ワイン】【ロマンティックなワイン】【わいわいワイン】【癒しのワイン】という4つのテーマで、多種多様な12本のワインが登場しましたが、参考になるものはあるものはありましたでしょうか?
家飲みでのワイン選びの参考になればと思いますが、BYO(持ち込みワイン)を楽しむ時にも活用できるはず。ぜひ、自分の好みだけでなく、その日の気分やシーンに合わせたワイン選びをして、楽しい時間を過ごしてください。
「家飲みをもっとおいしく」のシリーズの特集記事、【家飲み】を楽しむヒント10選!ワインの保存と活用、飲み残しアレンジ、カレーやつまみに合うワイン もぜひご活用ください。